星の導くその先へ
〜夢の終わり、時のはじまり〜




 この城が見えたときから判った。ここにあいつが…バルザックがいると。
(あいつの気配がする。その気配を感じると、あたしは気が狂いそうになるわ)
 あいつを殺したくて…殺したくて…気が狂いそうになる。
 アリーナの案内がなくても、自分はあいつがどこにいるか判っただろう。あいつのいる場所が。
 心臓が、うるさい。…耳がつぶれそうだわ…黙って。
 ここに、あいつがいるから。あたしが、あいつを…殺すから…

 帰ってきた。
(取り戻す、必ず)
 ここは自分の国だ。父と自分の国だ。汚す事は、許さない!
 アリーナは、見据えた。モンスターに汚されたこの国を、浄化するような聖なる炎の目で。
 そしてひた走った。玉座を取り戻す為に。この国を元に戻すために。
 ここが、自分の城なのだろうか?幼い頃から慣れ親しんだ、自分の城なのだろうか?
(あの時は、もっと暖かかった。もっと優しかった。…まるでお母様のように…)
 自分にはない優しさ。暖かさ、上品さ。皆母が、大好きだった。もちろん自分もだ。
 母が亡くなった時、父は母の痕跡を出来るだけ残そうと努力した。…中央の花畑も、母が丹精 こめて育てていた物だった。
 父は自分を怒った事はそれまでなかった。だが幼いあの日、花畑の花を抜いた時… 自分は父に初めて叩かれた。今考えれば、父も悲しみで目がくらんでいたのだろう、それでも。
(お母様の痕跡が残るこの城で…私はお母様の残り香でしかなかったような気がしていたわ… たくさん壁を壊した。たくさん、柱を壊した…だけれど。)
 魔物に母の残り香を消される事は我慢が出来ない。
 気がついたから。自分が母を愛していた事に。まだ自分が残り香であることが辛いけれど。魔物に荒らされて、気がついた。 自分が壊したところ…自分の部屋、兵士の部屋の壁…皆、母に縁のない所だった。
(だけど、魔物は全てを汚している…お父様の残り香も、お母様の残り香もない…ブライも悲しんでいるわね…きっと。)
 玉座はもう、すぐそこ。そこには禍々しき魔物が座っているんだろう。それを排除するのだ。 そうすれば、全てが終わる。きっと元通りになる。…大丈夫だ、きっと。かならず、成し遂げる。

 姉は、バルザックを殺すのだろう。きっと、思いとどまったりしない。ミネアはそれがよく判っていた。
(二人は、きっと愛し合っているのに…ずっと想いあっているのに…)
 自分も許せない、バルザックが、父を殺した事を。平穏な自分たちの生活を狂わした事を。
(だけど…それでも哀しい…姉さんが…バルザックを殺すこと…)
 だけど、それは変えられない運命。なぜならそれは、姉自身の意思で作った運命だから。
(せめて、最後まで見守るわ。オーリンの分も。…目をそらさずに、最後まで。)

「ああ、そんなに高いものを爪とぎに!せっかくの職人の努力、商人の魂、無駄にするなんて許せません!」
「我は他の王宮に勤める者。だがこの今ひと時、この国の為に力を貸す!力あるものはかかってくるが良い! 我、バドランドの王宮戦士、ライアンなり!」
「この国にあざなす者は、わしが許さん!それに意義あるものは、我が氷の刃に塵と消えなされ!」
「神よ!…神に見守られしこの国を汚した者に…滅びを!」
 一階で敵をひきつける声が遠くに響いた。だが、ラグも、アリーナも、マーニャもミネアも 聞こえてはいなかった。今は目の前にあるものが、全てだった。


「…人間どもが、この魔物の城になんのようだ?」
 そこには黄金に輝く、妖しき魔獣が玉座に座っていた。
「…こ、ここは魔物の城なんかじゃないわ!お父様の、私とお父様の城よ!この偽物王!」
 アリーナは叫んだ。魔物は、アリーナを一瞥し、そして笑った。
「はっはっは!笑わせてくれるわ!強きものに従えぬ、哀れな奴がいたとはな!」
「…笑うのは、こっちよ。」
 その声を聞いて、魔物は過剰に反応した。そして、一瞬。誰も気がつかないほどの一瞬。 この場に不似合いの眼を、その魔物はした。
「…あんたが王様?ばっかじゃないの?あんたごときが、王様になれるなんて 魔物もまだまだだわね!身の程ってもんを知りなさいよ!バルザック!」
「父の死から、貴方の事は、片時も忘れませんわ。…バルザック!父の恩をあだで返した仇、取らせて戴きますわ」
 待ち焦がれていた、姿。そう、バルザックは、ずっと待っていたのだ、この瞬間を。
「愚かな者だな。まだわからぬか、エドガンの娘よ。エドガンは愚かだった。オーリンもだ。この進化の秘法を封印しようとしたのだ! 私はこれをもって強くなった…これを持って、何よりも、強くなったのだ!それを封じようとした事、それは大罪ではないか!」
「違うわ!馬鹿なのは、罪人なのはあんたよ!そんなもん掘り起こして何だって言うのよ!」
「お父様とオーリンを侮辱しないで下さい!」
 二人の言葉を、笑い飛ばしてバルザックはさらに言葉を重ねる。
「進化の秘法の重要さが判らぬ愚か者め。エドガンもそうだった。だから私がかわりに使ってやったのだ。 私はエドガンの一番弟子だった。私がエドガンの研究を受け継ぐ事に何の問題があるのだ?」
「あら、父さんは何も言い残さずに死んだわ。なら一の娘のあたしが受け継ぐっていうのが筋ってもんじゃないの? 正統継承者を差し置いて、ふざけたこと言ってくれるじゃない?あんた狂ってるだけじゃなくて盗人だったのね。」
「真の愚か者だな、マーニャよ!私は誰よりも強くなった。やがて進化をくり返し、神よりも強くなるだろう。 そう、すでに私はデスピサロより強くなっている!… 私が完全になるには、マーニャよ、お前を倒さなければならない!すぐに父のもとへ送ってやろう!」
「醜いわね。その体で何が完全よ。望む所だわ。あたしはあんたを殺すことだけを考えて、今日まで生きてきたわ。… 殺してあげる。あたしの手で、あんたの息の根を止めるわ!」


 この日が来ることを、ずっと待ちわびていた…
 …いつまでも、話していたかった。これがさいごだから…
 だけど、これで終わり…全ての事に、幕がおりる…


 避けられない戦いが始まった。
 攻撃は叫び。呪文は涙。そして傷は…心の痛み、そのもの。
 ただひたすら、討つ事だけを考えた。他の事は考えない。自分が何を思っているか。 どうして討ちたかったか。考えては、いけない…考えてはいけないのだ。
 だって、あいつが苦しんでる。それがたまらなく、嬉しい。笑いがこぼれる。
 それは、まさに狂気だった。

「あんたは馬鹿よ!あんたが嫌ってた、力を追い求めて自分を排除した一族と けっきょく同じ末路じゃない!さすが同じ血よね!」


 ソウダ、チカラガ欲シカッタ…。私ハ、チカラガ欲シカッタ…誰ヨリモ、強イチカラガ…
 ダガ、ソレハ何故ダッタノダロウ…一体イツカラ自分ハチカラヲ求メ出シタノダロウ…
 ドウシテ誰ヨリモ、強クナケレバナラナカッタノダロウ…?強クナッテ、自分ハ 何ヲシタカッタノダロウ?…何ガ欲シカッタノダロウ…





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