炎を守りしその剣




 ラグ一行はとある村で「気球」と言う乗り物を手に入れた。これは布に空気より軽いガスを詰め、その布に かごをつけて飛ぶという珍しい乗り物である。
「すごいわすごいわ――――。下がおもちゃみたい!」
「ほほお、結構ゆっくりと飛ぶものですな。」
「鳥っていつもこんな視点で全てを見ているのかしら・・・」
「いやいや、もしかすると神こそがこの視点なのやもしれませんな。これでは細かい 人の憂いは見ては取れぬじゃろうのう。」
「しかしすごいですね…パトリシアの数倍の早さですね。これがあれば行商などが楽になるに違いません。」
「ふうん、なかなかいい眺めよね。ルーラの方が早い事は早いけど、一度行ったとこしかいけないもんねえ。」
 仲間たちは端により、わいわいと話して―――いや。
「神さま神さまどうぞ私たちをお守りください!!!」
 と真ん中によって熱心に祈っているクリフトがいた。
「すごいですね…山の頂上が上から見えるなんて、考えた事もなかった…あれ?」
「どうされました?ラグ?」
 ミネアがラグの視線の先を見る。そこは岩肌だった。
「何もありませんけれど・・・」
「いえ、何か…洞窟があるように見えたんですけれど…」
「洞窟!?」
 アリーナが眼を輝かせて近寄ってきた。
「ああ、姫様、もう少し静かに歩いてください!」
 クリフトはほとんど叫ぶように言ったがアリーナは聞いてなかった。
「うーん、よく見えないわー。本当にあったの?ラグ?もしあったんなら入りたいわね!新しい敵いるかしら!」
「多分、ですけれど…あそこに行った事はなかったですよね?」
「なかったでしょう、私には記憶がありませんね。」
 トルネコが言うと皆もうなずく。
「とりあえず降りてみよう。ここで話していてもしかたあるまい。」
 ライアンの言葉を合図に気球は下へ降り始めた。クリフトの安堵の声が聞こえた。


「暇ねー。私も連れてって欲しかったなあ!」
 散々洞窟に入るのを止められたアリーナが馬車の横で一人組み手を始める。
(姫様は、今回お留守番です!)
(そうじゃ、姫は働きすぎですじゃ!ちょっとは大人しくしてくだされ!)
 洞窟に入っていったブライとクリフトの止めっプリにむくれながらアリーナは武芸の稽古をする。
「はっはっは、皆さんアリーナさんが心配なんですよ。いつもいつも入っておられるのだから、たまには 休んで欲しいのでしょう。」
 トルネコは気球の仕組みをじっと覗きながらアリーナを諭す。
「そうですわ、思いやりですわよ。ほら、アリーナさん。ここ、とても綺麗ですわよ。とてもいい気持ちですわ。」
「あたしは洞窟なんか好きじゃないからどうでもいいけどねー。お宝があるなら別だけど。」
 ミネアが引いた敷物にマーニャが横たわって寝ている。ミネアが言うとおりここはとても居心地が良かった。 ちいさな草原になっていたし、その先には丘があり、薄く色づいた花が満開の木が立っていた。
「綺麗ですわー。皆さんが出てきたら、ここでお弁当にしましょうね。あら?」
「どうもすいません…」
「いいえ、洞窟はあったのですから気にすることはありませんよ。」
「クリフト殿の言うとおりだ。ラグ殿は何も間違ってはいなかった。それが全てだ。」
「たまにはそう言うこともあるんじゃよ。」
 ミネアの目線の先に洞窟に入った男性陣四人が洞窟から出て来るのが見えた。
「どうされたんですの?早かったですわね。」
 ミネアが出てきた四人に聞く。ラグが申し訳なさそうに答えた。
「実は…洞窟の階段が水の中に沈んでたんです。」
「沈んでいた?中は海でしたか?なにかスイッチがあったわけでもなく?」
「いや、トルネコ殿。中は凄い滝だったのだが、その水で階段が塞がれておった。近くにそのようなものは 見つからなかったな。」
「おそらく、地盤沈下か何かで洞窟自体が沈んでしまったんじゃろうて。」
「ふーん、よかった、あたし無駄足踏まなくて。」
 マーニャの言葉にラグが申し訳なさそうに言う。
「すいません、本当に。僕が余計なこと言ったから・・・」
「ラグ、気にすることありませんわ。ここ、とても気持ちがいいですし。少し早いですけれど お弁当にして、今後どこに行くか話しましょう。」
 マーニャをさりげなくつねりながら言う、ミネアの言葉にクリフトも首を縦に振る。
「そうですよ、闇雲に気球に乗るのは遠慮したいですし、ここでしばらくゆっくりしましょう!」
 そうして少し早い昼食が始まった。

「よくやるわねー。」
 食事が終り、皆は作戦タイムをしていた。これからどこへ進むか。進むとしたらどういう道を 通るか。気流はどう動いているか。地図とにらめっこをしながら皆は顔を突き合わせていた。
 マーニャはそう言うことにまったく関心がなかったのでしばらく散歩することにした。
「食べて動かないと黄金のプロポーションが崩れちゃうしね。あら?」
 マーニャは珍しいものをみた。あのアリーナが青い宝石を真剣に眺めているのだ。
(そういえばさっきもずっと大人しかったわね。ご飯も早々にどっかいっちゃうし。)
 そう冷静に考えたのはその瞬間だけだった。次の瞬間アリーナへ向かってマーニャは走り出す。
(あんな宝石あったかしら?結構大きいじゃない?やっぱりアリーナの持ち物なのかしら?)
 わくわくしながらアリーナがいる馬車の近くへと着く。そしてアリーナに話し掛けた。
「あんたそんな宝石持ってたの?このマーニャお姉様に隠し事するなんていい度胸じゃない?ちょっと見せないさいよ… あら?なんだこれ、ただの石じゃない。」
 アリーナが持っていた石は透き通ってはいたがきらめきがなかった。マーニャはとたんに感心を失う。アリーナは マーニャに言った。
「違うわ、マーニャさん、これは『渇きの石』よ。」
「ああ、あんたがブライにこってり怒られた村で取れた奴ね。でもそれがどうしたの?」
 アリーナは少し苦笑していった。
「この石って、確か海の水も吸い取ってたなーって。」
「うん、そうよ。あたし見たもの。夜遅くにあんたを探す為にわざわざ起きたんだからね。 何か吸い取りたいものでもあるの?」
「この石を使えば洞窟の水も吸い取れるんじゃないかなって…」
 自信なさげに言うアリーナの言葉を聞くや否やマーニャはアリーナの頭をぐちゃぐちゃ撫でた。
「アリーナあんた賢いじゃない!ただの武道馬鹿じゃないのねー」
 アリーナはマーニャのその率直さが好きだった。こんな風に言ってくれる人間はいなかったし、その言葉は お世辞を言うだけの人間よりよっぽど愛があるように思えたから。
 だから認めてもらえてアリーナは顔を輝かした。
「そう?やっぱりそうよね!じゃあ、ラグに言いに行こうかしら!」
 そう言って立ち上がろうとしたアリーナをマーニャは止めた。
「馬鹿ね、何言ってるのよ。」
「マーニャさん?」
 マーニャは思い出した。あの村が盗賊の末裔だと言う事。そして世界のどこかに宝物庫があるという事実を。
 マーニャはアリーナの耳に手を添える。
「あんたは洞窟の中入りたいんでしょ?馬鹿正直にそんなこと言って御覧なさい。まーたあの四人で洞窟の 中に入っちゃうわよ。アリーナの功績だって忘れてね。」
「そ・・・」
 そうかしら、と言いかけてアリーナは止まった。洞窟を前にしたクリフトとブライを思い出したのだ。
「そうね…でも一人じゃ洞窟はちょっと自信ないわ。集団で来られたら ちょっときついし、どれだけ深いか判らないもの。」
「安心なさい、あたしが行ってあげる。魔法でフォローしてあげるし、危険になったらリレミトで帰ればいいわ。 それで無理だったら今度はラグたちに行って貰えばいいでしょ?」
 アリーナは目を輝かせた。
「本当!マーニャさん洞窟嫌いなんでしょ?それでも?」
「あったりまえじゃない!可愛いアリーナのためだもの!そ・れ・に!お宝にも興味あるしね。 いいのがあったら着服しちゃお。」
 アリーナは笑う。とても愉快な気分になった。
「そうね。私が使える武器あるかしら?」
 そうして二人は立ち上がる。そして仲間の方を見たが、幸い議論は白熱しているようだった。 様子をうかがいながらそろりそろりと洞窟へ向かう。

 幸いにしてその様子に気がついたのはパトリシアのみだった。

   
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