(第一容疑者、サントハイム神官戦士、クリフト) 違うんです、誤解です。これは、何かの間違いです! 神に誓いまして、私はこのような事態に一切かかわりを持っておりません、本当です、信じて下さい! え?喚いていないで、昨日の行動を一から説明しろ…はい、わかりました。このクリフト、自らの疑念を晴らす為、 そしてこの事態の真犯人を見つけるため、説明させていただきます! ええ、あのサントハイムの事件が終り、私たちは王の書き残された立て札を頼りに、スタンシアラという国を目指しておりました。 ですが、不案内な国ですし、地図の一枚では効率よく船旅を進められず、途中行き当たったこの小さな村で宿を求めました。 けれど、旅人が立ち寄る事のない小さな村ですので、唯一の宿には3人部屋が二つしかない、そう言われて途方に くれている時に、ありがたくも宿屋の方が、こう申し出てくださったのです。ベットがおいていない空き部屋があるが、 そこに直接布団を敷いて寝るのはどうだ、と。この申し出を受け入れ、当然ながら若輩者である私と、ありがたい事にラグさんが この部屋を選び、寝る事になりました。 そして部屋が無事決まり、まだ寝る時間に余裕があるとわかると、私たちは各々この村を歩く事になりました。 そこで私はここにおける神の文化を知るために、様々な方に声をかけました。え、いいえ、当然私は 知識がありそうなご老人を選んで声をかけましたとも、はい。 色々聞いておりますと、この村は今まで聞いた事がない、一種独特な文化があることがわかりました。いえ、 文化といいますか、歴史でしょうか?なんとこの村は盗賊の末裔だというではありませんか!そして 今も先祖の宝のありかへ繋がる鍵ともいえる「渇きの石」というアイテムをどこかに所持しているという事。 渇きの石…なかなか不思議な風情があります。渇きというからには…はい?昼間のことはわかっている? はい、失礼しました、ブライ様。では夜の事を。 食事を済ませ、部屋に入ると、ござの上に二つの敷物が並んで敷かれておりました。少々砂漠のバザーを思い起こさせて 懐かしく思いました。 その後、神学の勉強、神へ祈りなど、いつもの日課を済ませた頃、 ライアンさんと鍛錬を済ませられたラグさんが帰っていらっしゃいました。 そして私が窓側の布団、ラグさんがドア側の布団に横たわり、二人で様々な話をいたしました。ラグさんは 学問に大変興味をお持ちで、私などが思いもよらない論をお話になられ、大変実りある一時でした。 そしてその後、眠りにつき、朝、ブライ様の声で起きるとこのような事態であったわけです。…これが全てです。 え?そんなはずはないだろう?ほかに何かないですかって?いえ、ありませんよ。その夜ドアを開けた覚えも ありませんし、ちゃんと鍵をかけて寝た事は、ラグさんとも確認済みです。夜、目も覚ましませんでした。 …そうですね、強いてあげるとするならば、夢を見たことでしょうか?それ以外にはございません。 その夢を説明しろ?…いえ、特に変わった夢では…それでも良い…?…わかりました…けれどあくまで 夢ですが、かまわないでしょうか? あれは、そう、私が若い頃、まだサントハイムに仕え始めた頃の夢でした…。私が姫の教育係をしていた事は ご存知だと思います。私は姫へ勉強を教えに扉を開けるのです。ですがそこに姫はいらっしゃいませんでした。 必死で探すと、小さな姫は城の外の原っぱで、 一人うずくまって泣いてらっしゃるのです!…死なないで、そう言って泣いてらっしゃいました。 私は姫をそっと抱き寄せ…いえ、まだ小さな頃の姫でございます、当然他意はなく、ただ、おさない姫の 心を癒して差し上げたかっただけです!神に誓って! 申し訳ありません、話がそれました。そして私は、姫の髪を撫でました。そうすると姫はゆっくりと泣き止まれ、 そしてそのまま眠ってしまわれた、そう言う夢ででした。 ええ、確かに私はそう言う夢を見ました、それは事実です。…けれど、それはあくまで夢でこの事態とは関係ありません!私とて 驚いているのです、私は無実です! 目がさめたら私の腕の中で姫が寝ていらっしゃった事は、私がした事ではありません!え?いいかげん、 姫の肩から手を離せ?…あ、これは失礼しました。 はい…姫様?あ、姫が寝言で何か言ってらっしゃいます… 「…良かった…ラグ…」
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