終わらないお伽話を
 〜高みから〜




”姉はとても美しい娘でしたが、いじわるでした。
 妹は捨て子でしたが、とてもやさしい娘でした。”


「よっと。」
 トゥールは縦に剣を振るい、最後のモンスターを土に返す。
「はー。」
 ようやく洞窟と言う閉鎖空間の戦いにも慣れてきた。
 いままで戦闘と言えば、広い平野での物ばかりだった。いや、室内での戦いの経験がないわけではないが、 それは礼儀正しい人との戦いであり、縦横無尽に駆け回るモンスターとの戦いは初めてだったのだ。
 それはトゥールだけではなく、サーシャもリュシアもだった。棍棒を振りかぶり後ろ手を壁にぶつけたり、 壁の近くで火の玉を破裂させ、軽いやけどをおったりというミスもあった。
 その点、頼れるのはセイだった。「子守はしない」という宣言どおり戦闘指導はしてはくれなかったが、邪魔にならないよう 敵を確実に倒していた。
「っち、しけてんな、これっぽっちか。」
 いつの間にかセイは、部屋の奥の宝箱を開け、中の物を取り出していたようだった。
「何が入ってた?」
「32G。そらよ。」
 トゥールの手のひらにGを乗せるセイ。
「やっぱモンスターが弱ええとしけてんな。まぁ、上に期待か。」
 まだ少し息があがっているサーシャとリュシアを一瞥し、周りを見渡した。
「あっちに階段があるな。ちょっと今までと形が違う。塔につきそうか?」
「うん、城の階段にちょっと似てるし。サーシャもリュシアも動ける?」
 トゥールの言葉に、一度大きく深呼吸してサーシャは立ち上がる。
「大丈夫よ。」
 横でリュシアも頷いた。きゅっと杖を握りなおしている。そして階段を上り始めた。


 そこは、今までの薄暗い洞窟から一転、きちんと整備された塔だった。灯りがともされ、 掃除もされていた。
「…作りが綺麗ね」
「古い靴跡が残ってる。…隠居したじーさんだけじゃない、何人もここを尋ねてるってことか。しかし 確かこの塔が建ったのは100年以上前のはずだ。俺はてっきり、もぬけのからで荒れてると思ったんだが…」
 何か知っているか、とセイは目で問うが、トゥールは渋い顔をした。
「少なくとも僕が物心ついた時にはすでに建ってたよ。」
「今の王様が建てたわけじゃないと思うけれど…良く分からないわね。」
「ママが言ってた、大昔のすごくすごく偉い王様魔法使いのお話。」
 ぽそりとつぶやいたリュシアに、三人の視線が集中した。

「何か知っているの?リュシア?」
 サーシャの問いかけに、リュシアはあいまいな表情で答える。
「ここは閉鎖してるのは、その人のおかげ。ずっとずっと昔だけど、おかしい。」
「おかしいってなんだ?!」
 とろくさい口調を怒鳴りつけるセイに、リュシアは怯えながら不器用に話を続ける。
「王様の所にいたの、100年以上前のはず。でも、おじ様さんは外に出た。閉鎖したの、そのあと。」
「つまり、そのすごい魔法使いがいたのは100年以上前なのに、父さんが出て入った後に封印が施されたのは 矛盾してるって事か。」
 トゥールがリュシアの言葉をまとめる。リュシアは頷いた。
「そういや、封印ってなんなんだ?」
「この大陸の奥には、旅の扉と言うものがあり、それを使えば他の大陸に一瞬で移動できると言われているの。 ただし、そこにいたる道は封鎖されているわ。私たちはそれを解除する許可を王様にもらってるけど… その方法は教えてくださらなかったわ。私はトゥールは知っていると思ってたけれど。」
「僕も知らない。閉鎖されてる道があるっていうのは、なんとなく知ってたけど…ただ、父さんが それを解除して行ったって言うなら、僕にもできるはずだよ。」
「まぁ、そのじーさんの部屋がこの塔にあるなら、なんかヒントでもあるんじゃねーの?盗賊の 鍵もどこにあるか分からないしな。とっとと登ろうぜ。」
 そこで話を打ち切って、セイは塔の階段を探し始めた。


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