気持ちの良い朝だった。
 鍵をもらい、一行はとりあえず老人の言葉どおりレーベに向った。日がどっぷりと くれていたので宿を取り、ぐっすりと眠ったのだ。
 朝になっても食堂にはあまり人がいない。あまり宿屋の朝食を食べる人間がいないのだろう。

「このあたりで昔王様に仕えていた人の子孫って知りませんか?」
 朝食を運んできた宿の女将を呼びとめたのは、サーシャだった。
「さぁ、ねぇ…どうだったかね…まぁ、狭い村だ。聞いて回るのに半日もかかんないよ。 それより…もしかしてあんたら噂の勇者一行かい?」
「はい、そうですけど…」
 トゥールが正直に答えると、女将が目を輝かせた。
「そうかい、良かったらうちの子に会っていってくれないかい?二階の奥の部屋にいるんだよ。」
「はい、わかりました。」
 そういったトゥールに、セイは頭をかかえる。
「…まぁ、いいんだけどな。」
「どうしたの?セイ?」
「いや、まぁなんでもない。ちょっと馬鹿正直なお前に感動してただけだ。」
 持ち直して笑うセイに、トゥールは少し頬を膨らます。
「…それってほめてないよね。」
「そりゃ受け取り方しだいだな。」
 さらりと流して、セイは牛乳を飲み干した。


「お兄ちゃんが、勇者?」
 二階の部屋のベッドの上に、少年は座っていた。
 明るい朝、気持ちの良い朝なのに、少年は窓から差し込む光をあびるばかり。ぼんやりと暗い顔を しているのは寝起きだからなのか。
「そうだよ。」
 トゥールはそれをいぶかしげに思いながらも、にこやかに笑ってみせる。
「わぁい、本当なんだね。勇者が現れて、魔物を倒して世界を救ってくれるって!ボク、ずっと 信じてたんだ!!」
 一転して明るい顔となる。トゥールも嬉しくなって言う。
「うん、そうだよ。大丈夫。君が僕くらいになるころには世界は平和になってる。ボクが、 そうするからね。」
「ねぇ、おにいちゃん、約束してよ!いっぱいいっぱい魔物をやっつけてるって!!…あいつらが、ボクの パパとママを…」
 じわりと涙目になる少年。意外な言葉にうろたえたトゥール。後ろで見ていたリュシアが、トゥールの すそをつい、と引っ張った。
「…馬鹿トゥール。」
 サーシャは小声でそうつぶやく。トゥールはそれで我に帰る。
「うん、約束するよ。」
 そう言って少年の頭を撫でた。そして少年が差し出した小指に小指をからめて、強く揺さぶった。


「よぉ、お疲れさん、勇者さんよ。」
 一人だけ外れていたセイが、宿屋の外で手を振った。馬鹿らしいと付き合わなかったのだった。
「なんか東の奥の方に魔法の研究してる老人がいるらしいぜ。ずっと家の中から出て来ない変人だそうだ。 行ってみようぜ。」
「…うん。」
「なんだ、あっけに取られて。あの子供が孤児だって事に驚いてるのか?」
 三人が目を見開いた。サーシャが尋ねる。
「どうしてセイが知ってるの?」
「夜飲んだおっさんが言ってたぜ。宿屋の夫婦に子供がいないから引き取ったんだとよ。」
 そうして三人は驚く。なによりもセイにあのあと飲みに行く体力が残っていたことにだ。
「まぁ、そんなガキこの世に何百人もいるぜ。いちいち会って話して行く気か?」
「できる限りはしたいと思ってるよ。」
 セイはわざとらしくため息をついた。それから無口で歩き始めた。


 ちょっと短めの今回のお話。イベント多いんだか少ないんだか分かりません、アリアハン。( でも、今までを見るに、毎回これくらいの話数って話が毎回短いような…)
 ちなみに塔の老人ですが、別に伏線でもなんでもありません。超重要人物みたいな書き方をしましたが、 もう出てきません(笑)あしからず。

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