城に入り込み、物影に入ったとたん周りからほのかな煙があがる。
「…効き目が切れたのかな…?」
「残念ね、ちょっと鏡の前に立って見たかったのに。」
「面白かった。気づいてなかった。」
 自分の体を見回す三人の横で、セイはなにやら紙を広げた。どうやらこの城の見取り図らしい。
「よし、こっちだ。」
 セイは堂々と城を歩き始める。
「でもそんな物、もしかして宝物庫にあるんじゃ?もう消え去り草ないんだろ?大丈夫?」
「いや、大丈夫だ。ベンノの情報が確かなら、そこには見張りがいないはずだ。…ちょっとばかり鍵がややこしいがな。」
 そう言ってセイが先導したのは、ちょっとした地下室だった。宝物庫や倉庫と言うよりは、祠に近い雰囲気だった。
 所々に水のたたえた小さな池と、文様。そして。
「…岩?」
「岩だね。」
「岩だわ。…どうしてこんなところに?」
 三つの岩がごろりと転がっている。セイはその岩に手を添える。
「これが鍵なんだと。宝をとって来たはいいが、使い方が分からずここに封印したんだと。妙な事するもんだ。」
「渇きの壷。エドさん達に返してあげたい。北の海で使ってって。」
「そうだな。ベンノのためにもな。…というわけでだ。これ動かしてその文様の上に置かないといけねーんだよ。 トゥール、手伝え。サーシャとリュシアは上から誘導頼む。水に落としたらおしまいだからな。」
 セイの言葉に、トゥールの眉が少しだけゆがんだ。
「…どうしてそんな妙な封印をしたんだ…。」
「さーな、都会の人間の考える事は田舎者の俺にはわからねーよ。」
「…こんな妙なことが分かるようになるくらいなら、僕も田舎者でいいよ…。」
 トゥールは少し疲れたように肩を落とし、岩に手をかけた。

 そうしてトゥールとセイは、汗だくになりながら岩を動かし、サーシャとリュシアは 階段の上から賢明に指示を送り、なんとか封印の先から渇きの壷を手にした。


 アリアハンからまっすぐ北、エジンベアからは東の海に、その不思議な浅瀬は存在した。
 そこは大海のど真ん中。周りにはなにもない海原。そこに岩の端がちらちらと波間に見える。
「ここに壷を投げ込む…らしい。」
「…投げ込んで大丈夫?エドさんに、返せる?」
 心配そうにセイを見るリュシアに、セイは引きつった笑いを浮かべる。
「まぁ、多分、大丈夫なんじゃ…ないかと、思う、が…。今まで誰かは、使った事があるんだろうしな…。」
 そう言いながらも自信なさげに視線をそらすセイ。リュシアを安心させるように、トゥールがリュシアの頭を撫でる。
「大丈夫だよ、リュシア。ほら、あの馬さん『北の海で使って』って言ってたじゃないか。使わないで返されるよりも 僕達に使って欲しいはずだよ。使わなかったらきっとがっかりすると思うよ。」
「うん。」
 トゥールの言葉に、リュシアは本当に嬉しそうに笑う。その周りを取り巻く空気は、まるで桃色の花畑のようだった。
「ラブラブねー。」
 後ろで小さくサーシャがつぶやく。セイは頭を掻きながら、それに応えるわけでもなく言う。
「んー、でも最近なんかなぁ…。変だとおもうんだが…。」
「何が?」
「いや、色々と。上手くは言えないがな。」
 セイがそう言ったとたん、目の前の浅瀬が大きく地鳴りし、ゆっくりと隆起する。そして目の前に、小さな洞窟がある 小島が浮かんでいた。

 洞窟の中は、ずっと海に沈んでいたわりに、とても綺麗だった。
「よかった、魚とかがたくさん落ちていたらどうしようかと思ったわ。」
「サメとかいたら怖いよね。」
「…だいおうイカ…。」
 洞窟の中で、ぴちぴちとあえいでいるだいおうイカを想像して噴き出しそうになったセイは、急いで 視線を前に向ける。すると部屋の真ん中にぽつんと置かれている宝箱が目に入った。
 中には、不思議な光沢を放つ鍵。触るとぐにゃりと形を変え、固まった。
「…うわ、本物だ!まじで最後の鍵だぜ、これ!」
「本当だ、なんだか不思議な形だね。」
「だな!本当にあったんだな、おい。」
 妙に興奮したセイ。盗賊の中でも伝説中の伝説の宝。それを手にした事が妙に誇らしかった。
「うっわー、なんか使ってみてぇ。…お、なんかあるか?」
 目を凝らせば奥の方に、なにやら鉄格子が見える。セイはうきうきしながら小走りに奥へと向かった。
 海に使っていたわりに、ちっともさびていない鉄格子の鍵穴に最後の鍵を差し込む。それは伝説どおりに鍵穴の 形に固まり、確かな手ごたえで鍵を回した。
「本当に開いたわね。」
「ああ!…あ?」
 目の前にあったのは、古びた玉座。そしてそこに座る屍。
「どうしてこんな所に…?せめて天に返してあげましょう…。」
 サーシャが骨となった屍の側に寄る。すると、その屍がかすかに動いた。
「う、ごいた?」
 震える声でサーシャがそう言うと同時にトゥールはサーシャの前に出て剣を構えていた。
「モンスターか?!」
「…私はいにしえを語り伝えるもの。」
 骨を震わすように、屍が話しだす。
「イシス砂漠の南、ネクロゴンドの山奥にギアガの大穴ありき。全ての災いはその大穴よりいずるものなり。」
 その言葉を終えると同時に、骨は一気に灰となって散った。
「…なん、だったの?」
「ネクロゴンドの山奥…確か魔王バラモスの城がある場所だね。…だんだん近づいてるな。」
 トゥールが剣をしまいながらそう言った。
 海に浮かぶ隠された洞窟で、灰はゆっくりと床へと降っていた。


 インターバル編。なにやらセイが苦労性と化しております。元々一匹狼のはずだったのですが…。
 トゥールとセイのかけあいが妙に楽しかったです。
 消え去り草の特殊設定は…、なんというか、あれあまりにも物騒すぎて追加してしまいました…。 だって他に何に使うんですか…?考えて見れば絶対これがないとクリアできない重要アイテムが、普通に 店に売ってるってシュールですねぇ…。

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