「王様とご面会?王様に呼ばれてきたのか?違う?ならば立ち去れ!用のないものを城へ入れるわけにはいかぬ!!」
 取り付く島もない門番にトゥールはなんとか食い下がる。
「えっと、用はあるんですけど…。」
「いくら言っても王はお会いにはならぬ!立ち去れ!!」
 隙間なく入り口をふさがれ、トゥールたちはどうにも出来ずに城門を後にした。

「…まぁ、普通はそうだよなぁ…。」
「でも、エジンベアの時と違って…門番の方も、なんだか鬼気迫っていた気がするわ。」
「…王様に怒られる?」
「怒られるというよりは…殺される…のかなぁ…。」
 どうすることも出来ず、トゥールたちはそのまま来た道を歩く。
「わわわわわ」
 突然、サーシャがその場に倒れこんだ。
「あ、失礼しました…美しいお嬢さん。」
 商人風の男が、おそらくサーシャの肩にぶつかったのだろう。倒れたサーシャに駆け寄って手を差し伸べた。
「…なんとお美しい…。よければお名前を教えていただけませんか?私の名前は…」
 両手をつかまれ、詰め寄られるサーシャ。だがサーシャは皆まで言わせず、にっこりと笑って、強引に立ち上がった。
「いえ、こちらも不注意でしたから。ご迷惑おかけしました。」
「…あなたのような美しい方が、このようなお城に近づいてはいけませんよ。」
 脈がないのは分かったのだろう。だが、諦めがたいのか、いまだに手を離さず、心配げにそう言う。
「…いえ、私はどうしても、そのお城の中に用があるんです。でも、入れそうになくて…。」
「も、もしかして、貴方、ご家族が王様に…?なんて気の毒な…。でもね、諦めなさい、私はこの城の 御用聞きとして城に何度は入っていますが、ご同業が粗相をして王様に死刑を言い渡されたという噂は しょっちゅうです。」
「お城に入れるんですか?」
 トゥールがそこに割り込んだ。その隙に、サーシャはすっと手を離す。男は未練がましそうにそちらを 見たが、トゥールが更に口を開く。
「貴方は城門から入れるんですか?」
「…いえ、東側の目立たない所に勝手口がありまして。そこならそれほど詳しく調べられないで…いけません!いけませんよ! 貴女のような美しい方が、あんなところに言って、もし王の目に止まれば…そのまま徴用されてしまいかねません! 断ったら死刑ですよ!!」
 再びサーシャに標的を変えて、言い募る男。そして、
「貴方も!この方をそんな危険な目に遭わせるなんて、この私が許しません!もし行くと言うのなら、この方は 私が預かりま」
「おりゃ!」
 セイが後ろから後頭部に力いっぱいチョップを入れた。武闘家の力で殴られた男は、そのまま昏倒した。
「…迷惑かけてごめんなさい。…助かったわ、と、言うべきなのかしら…。」
 倒れた男とセイを見比べて、サーシャは困った顔をした。
「いくらなんでも口説くのが下手すぎるだろ。女を困らすなんて、最低だ。」
「…まぁ、ちょっとやりすぎだとは思うけど。」
 ちょっと苦笑したトゥールと、なんと言って良いか困惑しているリュシア の横で、サーシャは座り込んで男に回復魔法をかけた。
「ごめんなさい。傷は治しておきます。ありがとう、おやすみなさい…ラリホー。」
 駄目押しをして、サーシャは立ち上がる。
「さ、じゃあ勝手口を探しましょう。」


 本当にあっさりと勝手口から城の中に入る。台所では、女たちが忙しく働いている。
「あのすみません…王様の所へは…」
「話しかけないでおくれ!ちょっとでも作業が遅れたら殺されちまうよ!!」
 話しかけた女に怒鳴られ、トゥールは引き下がる。四人は顔を見合わせ、とりあえずらしいところをうろうろする事にした。

 玉座の間を見つけるのは、比較的簡単だった。城の中心部にあり、薄絹をまとった女たちが、王を十重二十重に囲んでいたのだから。
「享楽主義の王様か…ようは無能ってことだな。」
「なんか…見る場所に困るな…。」
 若干トゥールが顔を赤くして横向くと、リュシアがじっとこちらを見ていた。
「いや別にそうじゃないから。」
「…なんか嫌…。…ここの雰囲気も、嫌い。」
「少なくともまともに政治しているとは思えないわね。」
 サーシャがそうため息をついた時だった。
「何者だ!!」
 大勢の兵士が、トゥールたちを囲んだ。
「ま、待ってください、王様に会いに来たんです!僕は、」
 トゥールが自分の身分を明かそうとした時、玉座の方から声がする。
「…うぬらはどこから入った。…怪しい奴め!わしに会いに来たじゃと?そんな奴等しらん!この者等を牢にぶち込んでおけ!!」
「ちょ、ちょっと待って!僕は、アリアハンから来た勇者で、」
「黙れ、来い!!」
 大勢の兵士たちに囲まれ、抵抗もむなしく、四人は牢へと連行された。




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