終わらないお伽話を
 〜 くもりないお日様が 〜



 サマンオサ南の洞窟。四方を人工の湖で囲まれたこの洞窟は、過去になにか儀式的なことに使われたのだろう、 と言われているが、詳しい事は定かではない。
 だが、一つ確かな事。それは、人工的に水を囲わせているせいか、この洞窟はとてつもなくじめじめしていたということ。

「うわっ!」
 足元に生えていたコケに、足をとられてトゥールは体をぐらつかせる。
「…地面がぬれてるからすべるわね…たまらないわ、これ。」
「…モンスターと会ったら、トゥールとセイ、気をつけて。リュシア、頑張る。」
「まず足場の確保だな、こりゃ。」
 天井から時々雫がしたたり落ちて、四人を驚かせる。
「とっとと探して出よう。僕達にカビが生えそうだよ。」

 ガチャガチャと軽い音が響く。目の前に入るのは、6つの腕を持つモンスター。その手には剣を持ち、めちゃくちゃに 振り回している。きちんと剣を学んだ者でない動きであることが救いだ。
 先ほど斬られた頬から、小さく血がにじむ。
 遠くから、歌が聞こえる。リュシアとサーシャが向こうで四匹のモンスターを相手しているのだ。
「…二人で一気に行こう。」
 トゥールの言葉に、セイは頷く。そして、声もなく、二人は一気に走った。
 トゥールは右から、セイは左から攻める。
 二人合わせても、腕は四本。組み合うのは愚の骨頂だ。
 まず、セイが飛ぶ。真上から肩を砕かんと、爪を打ち付ける。
 飛んできたセイを空中で貫こうと、モンスターは右腕たちを一斉に向けるが、それをトゥールが剣で受け止める。
 セイが深く爪を入れると、陶器のような音を立てて、モンスターの左肩が砕けた。だが、空に舞った腕の持った 剣が、セイの肩に落ちる。
「っ!」
 冷気が向こう側から流れ、傷に響いた。だが、それにかまっている場合ではない。一瞬で、セイは残りの剣を弾き飛ばした。
 トゥールは剣を下に滑らしながらしゃがみ、そのまましゃがんだ。バランスを崩したモンスターに、セイが蹴りを 入れて倒す。
 そして、トゥールがそのまま頭を貫くと、モンスターは動きを止めた。

 サーシャが放つ青白い光が、セイの傷を治して行く。
「ありがとな。」
「これくらいさせて。…リュシアってば呪文一つで片付けちゃうんだもの、 さっきも猛吹雪で敵を一掃しちゃったし、私何もしてないのよ。」
 リュシアの呪文の威力はますますあがっていく。同じ呪文を唱えても、同じ呪文だと思う人間はいないだろう。 サーシャが下手なのでは決してない。リュシアが桁違いに凄いのだ。
「でも、魔力無駄遣い、良くないから。一人で出来るなら頑張るの。」
「詠唱もなんだか上手くなったよね、リュシア。僕まで聞きいってしまいたくなるよ。」
 トゥールがそう言うと、リュシアは顔を真っ赤にして黙り込んだ。
「はい、おしまい。」
 サーシャがセイの肩をぽん、と叩く。セイは立ち上がって腕をぐるん、と回した。
「よし、悪かった、待たせたな。…しかし、すごいな、これ。元盗賊魂がうずくな。」
 セイが視線を向けたのは、広いフロアに奥へと道なりに置かれた宝箱だった。


 ぽつぽつと、導くように置かれた、多数の宝箱。
「一直線。たくさん。変な置き方。」
「奥まで続いてるみたいだけど、何個あるのかな。」
 トゥールの言葉に、セイがなにやら呪文を唱えてしばし。
「…聞きたいか?……21個。…宝物庫か、ここは。」
「これ、全部開けるの?なんだか罠がありそうだけど。」
 サーシャはそう言って、眉にしわを寄せる。
「でも開けないわけにはいかねーだろ。…罠くさいけどな。」
「…昔、僕こうやって餌まいて、鳥捕まえた事あるかも。」
 その時、リュシアがてこてこと宝箱の前に出て、呪文を唱える。
「……インパス。」
 宝箱は黄色に光出す。
「…お金。」
「あ、ほんとだ。えっと…128G。すごいね、リュシア。」
「簡単、でも、魔力なくなるかも。サーシャと二人でやったら大丈夫かな?」
 少しだけ得意げに言うリュシアに、サーシャが焦る。
「でも、私それ知らないわ。」
「簡単。教えられる。」
「…頑張るわ。教えてくれる?」
 魔法講習会を始めた二人を尻目に、セイは少しため息を着いた。
「…魔力が尽きなきゃいいがな。」


 ぼんやりと赤く光った宝箱を確認して、サーシャは腕を降ろした。
「…これで、最後、よね?」
「…だな。…ロクなもん入ってなかったな。」
 セイの手にあるのは、お金と種、そしてすごろく券やちいさなメダルだった。
「この石くらいかな?収穫は。」
 トゥールが掌でもてあそんでいるのは、命の石。死の呪文から身を守ってくれるアイテムだった。
「でも、ラーの鏡はなかったわね。」
「…罠。モンスター置いてあったの。」
 宝箱は、小部屋へと導くように、転々と置かれていた。そしてその小部屋には宝箱が意味ありげに置いてあったが、その 全てが赤色に光った。つまりモンスターが潜んでいたと言うことだった。
「まー、つまりそのための宝箱ってことか、ご苦労なことだな。しっかし無駄足かよ…。」
「んーーーーーーー。んーーーーーーーーー。んんーーーーーーー。」
 トゥールはしばし考え込んで。そして両手をぽん、と鳴らした。
「どうしたのよ?」
「そっか、そういうことか。」
 そうしてトゥールは意気揚々と道を引き返し始めた。


「…道標ってなんの為にあると思う?」
 トゥールは歩きながら、そう言った。サーシャは首をかしげる。
「何のためって…道案内のためでしょう?」
「うん、そうだよね。でもこの場合、罠なんだから…、」
 リュシアは後を継ぐ。
「罠に案内するため。」
「めちゃめちゃ怪しいけどな…、まぁ盗賊なら開けずにはいられねーけど。」
「怪しいよね。…それに手間もかかってるよね。なんでこんな事したのかなって。それこそ盗賊ならさ、 こんな怪しい事しなくても、ほっといても隅々まで探して、罠の宝箱開けてくれるよね。」
 そう言いながらも、トゥールはすたすたと歩いて行く。やがて、開けられた宝箱がぽつぽつと残る広場…元の場所へと帰ってきた。
「…まぁ、そうよね。じゃあ何のため…?」
「昔ギーツがさ、落とし穴作って手前に頭上注意って看板立てたんだよ。僕、上ばっかり見てて、落っこちちゃったんだよね。」
 そうして、階段の前…モンスターとの戦闘跡に来た。そこからトゥールは周りをきょろきょろ見回す。そしてしばらくして、隅の方へと 歩き出した。
「…だからさ、この道標は見られたくないものから目をそらすためじゃないかなって…、ほら、あった…ぁ?」
 振り向きざまに、足に強い衝撃。
 穴に落ちていくトゥールが見た物は、武器を構えるサーシャたちと、自分の足にぶつかってきた亀の姿をしたモンスターだった。



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