降り立った元空き地は、今や巨大な町になっていた。 「…城下町レベルだな…、すげぇな。」 「本当に、ここ、だよね…。」 「多分…、ほら、あそこに湖があるもの。整備されてるけど、場所は同じ、よ、多分。」 あまりの変わりように目を疑いながらも、四人は中へ入る。とりあえず審議を確かめようと、近くにいた女性にトゥールが 声をかけた。 「すみません、この町はなんていう町ですか?」 「ここ?ここはギーツバーグ。偉大なるギーツ様がお作りになった町ですわ。」 それを聞いた瞬間、トゥールは頭を抱えた。幼馴染のすることながら、あまりにも頭が痛い。 セイが呆れたようにつぶやいた。 「自己顕示欲の強い奴だなぁ…。」 「…ともかく、ギーツに会いに行く?私たちのお願いで、ここまで町を大きくしてくれたんだもの、 きちんとお礼を言うべきだわ。」 サーシャの言葉に、トゥールは苦笑いで頷く。 「そうしよう。…やっぱり才能があるんだね、ギーツは。普通の商人よりこっちの方が向いてるかもしれないね。」 ギーツの館は町の一番奥、日当たりの良い場所に作られていた。 「…きんきらきん。」 きらきらと光を受けて輝く柱は、大理石だろうか。その横にあるのは、銀で作られた女性の像。精密な彫刻が彫られた門。 新しいからというものあるだろうが、それ以上に権力を誇示した悪趣味な館がそこにあった。 「…趣味悪いな、おい。」 「…ギーツの好みな感じはするわね。」 門の前には、二人の門番。 「あの、すみません。僕達ギーツに会いに来たんですけど…。」 「ギーツ様にか!?面会の約束はとっているのだろうな?」 「いえ、その…。」 「とっていないのだな!ならばお会いにならぬ!文書にて申し込みをせよ!」 「ちょっと待ってください!僕達は、ギーツの知り合いなんです!」 「知り合いだろうがなんだろうが、ギーツ様はお忙しいのだ!!まぁきちんと約束すれば一週間後には会ってくれよう!」 まったく聞く気も持たない門番たち。この様子は見覚えがあった。 「…サマンオサかよ。」 「…ギーツは操られてなくてもやると思う。」 冷たい目をしたリュシアの横から、サーシャはすっと歩み出た。 「あの…お仕事でお忙しいところごめんなさい。私、ギーツの友人でアリアハン出身のサーシャと申します。」 ぺこりと頭をさげたサーシャに、門番たちは一瞬見とれた。 「…いや、しかし例え友人だとしても…。」 「確かに本日の約束はとっていません。ですが、また会いに来るとの約束はしているんです。今すぐに、とは言いません。でも、 …ギーツも私達に会うのを楽しみにしているはずなんです。せめてアリアハンのサーシャが、ギーツに会いに来たとお伝え願えませんか?」 サーシャがそう熱心に頼むと、門番達はしばらく考える。 「…分かった。」 「ありがとうございます!ご無理を言ってごめんなさい。またあとでお伺いします。」 サーシャの清らかな笑みを向けられ、門番たちは相好を崩した。 サーシャはそんな門番に何度も頭を下げながら、町の方へと戻った。 町の人間に聞くと、アープの長老の弟の創立者の老人の居場所はすぐにわかった。 挨拶に行ったトゥールたちを出迎えてくれた老人の顔には、疲れと翳りが見えた。 「ギーツ、一人で良くやってくれた。村、あっという間に大きくなった。ギーツ凄い。…だが、ギーツはやりすぎた。 やりすぎて、町の皆、反感を買った。」 「……」 どうやりすぎたのはかは分からないが、あの屋敷と門番の様子を見る限り、想像が付きそうだった。 「わし、あの屋敷、通れない。隠居したから。わしの代わり、皆辛いと嫌がった。 ギーツに言ってやりたい。町の皆がどう思ってるか。…どうか伝えてくれ。頼む。手遅れになる前に頼む。」 「伝えて、伝わるかは分かりませんが…会えたら伝えます。」 トゥールがそう言うと、老人は安堵したように座った。 「…ここは見違えるほど大きくなった。店が出来て、劇場が出来て、牢屋もできた。全部ギーツのおかげ。けど、 ギーツ、自分しか見てない。自分と町しか見てない…。町の皆も、不満あるけど、ギーツに任せっきり。寂しい。」 「…綺麗で寂しい町か。」 トゥールが少し寂しげに口にする。その言葉の響きはどこか切なさを秘めていた。 「ギーツに、ちゃんとお話しないとね。せっかく私たちの為にここまでしてくれたんだし…。」 「そうだ、イエローオーブやってきた。ギーツが持ってる。お前たちに渡すように言った。」 「…無事に渡してくれると良いがな。サーシャ、色仕掛け頑張れよ、さっきの門番みたいにやりゃいいからよ。」 セイの言葉に、サーシャは深くため息をついた。 「色じかけした覚えはないんけど。…まぁ一生懸命お願いしてみるわよ。なんだか賢者と言うより、遊び人の仕事よね…。」 「まぁそう言うなって。遊び人といや、劇場ってなんだろうな?」 「ちょっと覗いてみる?そのあと、もう一回ギーツの所へ行ってみよう。」 空は、西からゆっくりと赤色が差してきていた。 |
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