館の周りには、十重二十重とたいまつの火が包んでいる。町中の人間が館に集まってきているのだ。
「ギーツを出せー!!」
「暴君ギーツに責任を!」
「もうお前の奴隷にはならないぞ!」
「この町は皆の町だ!暗君ギーツに渡すなーーーーーーー!!」


 巨大な館を揺るがす、人々の叫びにギーツは呆然としていた。
 ずっと今まで、上手くやってきたのだ。確かに辛い事はあった。自分がするべき仕事ではないことまで やらされて、舌うちすることも多かった。やっとそれが減ってきて、この先ますますこの町を発展させ、王になる 未来が待っているはずだったのに…。
「…嘘だ。」
「嘘じゃねぇよ、現実を良く見ろ。これがお前のやってきた政治の結果だろ。お前は王になんてなれる 器じゃなかったって事だ。」
「嘘だ!オレは間違ってない!こんなの全部何かの間違い……、そうか、トゥール、お前だな!お前のせいだろ、 お前が全部仕込んだんだろ!!」
 ギーツはトゥールの胸倉をつかんだ。
「ち、違うよ、僕、そんなこと…、」
「オレの成功をねたんで、お前が!」
「やめてギーツ!そんな事してないわよ!」
「うるさい!黙れ!!」
 ギーツは、間に割って入ったサーシャの肩を殴りつけて引き離す。サーシャは軽くよろけた。
 その瞬間、トゥールははじけるようにギーツの元へと走る。
「ギーツ!」
 トゥールは軽くギーツを顔を殴った。それだけでギーツは吹っ飛ぶ。
「何しやがる!!」
「こっちのセリフだ。サーシャに八つ当たりするな。ましてや暴力なんて最低だ。」
 リュシアは、サーシャにかけよる。
「…サーシャ、平気?」
「平気、なんともないわ、……リュシアこそ、大丈夫?どうしたの?」
 リュシアの顔は真っ青だった。差し伸べた手は小刻みに震えていて、とてもまともな状態とは思えなかった。
「…ちょっと、怖いだけ。」
 無理ににこりと微笑むリュシアが痛々しく、サーシャはそっとリュシアの手を握った。

 リュシアはその手を命綱にしながら立ってた。
 怖かった、たまらなく怖かった。暗闇に浮かぶ火。闇の中の灯り。
 思いだす。遠くから、空から見ていた。下が明るかった。
 とても似ていたから。
 あれは、わたしが初めて飛んだ日。…お父さんとお母さんと別れた日。…生まれたその日を、覚えているような気がした。


 トゥールを殴り返そうとするギーツを、トゥールは軽々と押さえつける。セイは怒り顔でサーシャ達を庇うように 立った。
「ま、俺達が原因ってのもあながち間違っちゃいないかもな。」
「セイ?!」
 皆が驚いた顔をする。ギーツは憎憎しげにセイをにらみ付けるが、セイはまったく意に介した様子もなく、物騒な笑いを浮かべた。
「俺達は劇場で反乱の相談を聞いた。それで出口でお前の部下に声をかけられたんだよ、お前が呼んでるってな。それを 聞かれてたとしたら?俺達の口から反乱の情報が漏れるのも時間の問題だと思った。だから今日、強襲したと考えるのが 筋だろうな。」
「やっぱりお前等のせいじゃねーか!!」
 怒鳴りつけるギーツに、セイは『白刃』の名にふさわしい鋭い視線でギーツを黙らせた。
「勘違いするな。今日来たのは俺達のせいでも、そもそもの原因はお前だ。考えても見ろ、計画が今日じゃなかったとしたら、 なんだってこんなに人が集まるんだ。お前のやり方が嫌な奴等が多かったか…、お前を逃がすだけではあき足らない から強引に人を集めたか、どちらかだろうな。」
 セイがそう言って、手で首を切る動作を見せると、ギーツは真っ青になった。そして、それを 裏付けるように、激しく扉が叩かれる音と、外から痺れを切らした人々の声がする。
「悪君ギーツを殺せー!」
「この町に平和を!」
「ギーツに責任を取らせろ!!」
「俺達の前に出て来い!!ギーツ!!」
 ギーツは震えながらうずくまる。そこにセイが冷たい声が響いた。
「古来から、欲に溺れるものは欲で破滅するって決まってるんだよ。」
 死刑宣告をされ、ギーツは真っ青になりながらも、ただ震えるしかできなかった。


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