「あー、城の外の空気がおいしいな。」
 セイが城から出たとたん伸びをした。
「セイ、いきなり言うから驚いたよ。」
「うん、びっくりしたわ。」
 トゥールとサーシャの言葉に、セイは吐き捨てるように答える。
「ああいうずうずうしいやつが大嫌いなんだよ。やって当然と思ってやがる。んで、 どうすんだ?」
「どうするって…。カンダタっていう盗賊を探すけど、セイ、場所知ってるの?」
 トゥールの言葉に、セイはにやりと笑う。
「ああ、知ってるぜ。ここらのアジトはシャンパーニュの塔だ。こっから北西だな。行くのか?」
「うん、頼まれたし。」
 トゥールがあっさりと頷くと、その答えを待っていたように、セイは用意していた言葉を口にした。
「じゃあ俺は、一抜けさせてもらうぜ。ここまで楽しかったぜ。」


 きり、とサーシャは一瞬歯噛みした。
「やっぱり裏切るのね?」
「裏切る?」
 せせら笑いながら、サーシャのあごを持ち上げセイは顔を近づける。
「言ったろ?俺はプロなんだよ。勝ち目のない戦いは、最初から参加しねえの。 まぁ、仲間のよしみだ。勝てねえからやめとけ。」
「勝てないなんて、わからない。」
 リュシアの言葉に投げ捨てるように言葉を返す。
「盗賊の世界の中でも、カンダタは特に有名なやつだぜ。何百人も配下をかかえてるし、 伊達に世界をめぐってねぇよ。もちろん専門は盗む方だから、戦う 方じゃそうたいした事はないと思うが、今のお前じゃ勝てねぇよ。行っても死ぬだけだ。 俺は死にたくないからな。てめぇらだけで行ってこい。それか、 他に仲間を探しな。んじゃな。」
 後ろ手をひらひらと振りながら、セイはその場からゆっくりと立ち去った。

「待って、セイ!」
 トゥールがそう叫んだのは、セイの背中がずいぶんと小さくなった時だった。
「じゃあ、カンダタ退治に行くのはやめる。それならいい?」
「トゥール?いいじゃない、セイの事なんて気にしなくても。」
「王様と約束。やぶるの?」
 気がつけば、セイが近くまで戻って来ていた。
「勇者様が、王様の頼みを断るつもりか?意外だな。」
「今はって事だよ。さっきセイは今は言っても駄目だって言ったよね?王様だって期限を決めなかったし。 カンダタの事を知ってるセイがそう言うんだから、多分本当に勝てないんだと思う。だから、 後に回すよ。」
 セイは目を見張る。
「それはつまり、俺に仲間のままでいて欲しいって事だよな?」
「そうだよ、きちんと頼んだほうが良い?セイは実際頼りになると、僕思ってるけど。」
 セイは口に手を当ててしばらく考えていたが、やがて顔を上げてトゥールの頭をからかうように叩いた。
「いいぜ。あの横暴な王より俺を取るって言うのが気に入った。別に行くあてもねぇし、もうちょっと 一緒に旅でもしてやるぜ。」
「そうか、ありがとう。」
 にっこりと笑うトゥールから、セイはなぜか目線をそらした。




 私の勘違いかもしれないのですが、FC版の攻略本では、シャンパーニュの塔より ノアニールの方が先だった印象があるのですよ。(SFCだとシャンパーニュの方が先なので、 私の記憶違いのような気もしているのですが…)
 なので、私は毎回ノアニールの後で カンダタを倒すことにしています。ですのでトゥール達にもそうしてもらいました。 次回はとりあえずカザーブに向かいます。

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