終わらないお伽話を
 〜 決戦!バラモス城! 〜



 あちこちにひびが入った動く石像のどてっぱらに、セイは力いっぱい蹴りを入れる。
「これで、終わりっと!」
 セイの言葉どおり、石像はばらばらになって一気に地面へと崩れ落ちた。
「…もう、うっとうしいったら…。」
 さすがに汗をかき、サーシャはうなじに風を通すために髪を手でまとめて振る。トゥールは刃こぼれを 気にしながら剣を鞘に収めた。
「まぁ、本拠地だしね…。ずいぶん奥まで来たとは思うんだけど。」
「でもまぁ、本拠地のわりには地味だよな。ロマリアの城の方がよっぽど豪華だな。」
 セイの言うとおり、この建物は二階建てだった。横には割りと広く、しかも入り組んでいるがもっと巨大な 城を想像していたので拍子抜けとも言えなくはない。
「…でも、嫌な感じ。」
 リュシアの眉間にわずかにしわが寄る。リュシアいわく『気持ち悪い』場所らしい。セイとトゥールにはよく 分からないが、サーシャにはなんとなく分かったらしい。
「…普通、そういうのって勇者の役目のような気もするんだけどね…。」
「でも、別にバラモスの場所が分かるわけじゃないわよ。なんとなくこう、嫌だなって思うだけよ。」
 ぼやくトゥールにサーシャがそう言うと、リュシアが頷く。
「それがわかりゃいいんだがな。…なんか部屋があるな。」
 緊張の面持ちでセイが扉に手をかける。思い切って開けると、そこには空の王座があった。

 警戒しながらも、トゥールはゆっくりとその王座に近寄る。
「…王座だよね…。」
「空だけどね。…てっきりこういうところにいるかと思ったのに。」
「だな、案外牢屋にでもいるのか?意表をついて。」
 揶揄するように言うセイに、三人は笑う。
「それ、面白いわね。」
「うわー、もしそんなんだったら、僕バラモスを前に笑ってしまいそうだよ。」
「…変なの。」
 これでも最初はもっと気が張り詰めていたのだが、度重なる戦闘にいつもどおりになってしまった。
「んじゃま、牢屋の方も探してみるか。っと、また来たか。」
 どうやら今度はじごくのきしのようで、骨がこすれる音がする。
「しつこいなぁ…、ちゃっちゃと倒して次にいこう。」
 トゥールは剣を抜くのとほぼ同時に、モンスターへと低く走った。


 牢屋を越え、部屋を越え、中庭を抜け…離れとも言える場所。…おそらく最後の部屋。それは、 地下への階段が一つあるだけだった。
「…いるね。」
 大きな気配がびしびしと伝わってくる。おそらく向こうにもこっちの気配が伝わっているのだろう。
「んじゃいくか。早く帰ってリュシアのところで祝杯でもあげようぜ。」
「そうね。父さんにもちゃんと報告しなくちゃ。」
「ママに会うの、楽しみ。」
 三人とも、さすがに緊張した面持ちだが、なんとか笑いあった。そして、トゥールはゆっくり階段を降り始めた。

 そこは、『魔』の気に満ちていた。…それも、濃く邪に染められた気が空気を支配していた。 あまりの濃さに息苦しくさえ感じる。
「ついにここまで来たか、トゥールよ。」
 どこかしわがれた声。その言葉に四人は硬直する。
 仰々しいひな壇の上に、大きな大きな玉座があった。
 そしてその前に、見たこともないモンスターだった。見上げるほどに大きいそのモンスターの頭には、大きな一つのこぶが 隆々とあり、しわだらけの顔には大きな大きな口が禍々しいほどに赤々としている。伸ばされた三本の指からは、 剣ほどもある爪が光っていた。
「魔王、バラモス…。」
 そこには、今まで追い続けていた宿敵が堂々と待ち受けていた。


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