町の中は、すでに祝福の雰囲気で満ちていた。周りは皆、トゥールたちに笑顔を送るが、話しかけてこないのは、 王様になにか通達されているからだろうか。 そして、城の中に入ると、兵士が次々と笑顔で出迎えてくれた。 「トゥールさん、お疲れ様でした!!」 「さぁ、早く王様の下へ!!」 そう呼びかけられ、トゥール達は王の間へと向かう。旅立ちの日、勇者の儀式をうけた場所だった。 王はトゥール達の姿を見ると立ち上がり、感極まった様子で声をかけてきた。 「おお、トゥールよ!よくぞ魔王バラモスを打ち倒した!!さすがはオルデガの息子!国中の者がトゥールを称えるであろう。」 その言葉に、トゥールはひざをつき、頭を下げた。 「サーシャよ!亡き母の意思を継ぎ、見事賢者になったと聞いておる!そしてよく、トゥールを支えてくれたな。」 「もったいないお言葉、ありがとうございます。」 サーシャもひざをつき、頭を下げる。 「リュシアよ。その力、まことトゥールの役にたったのだろう。そなたがこの国に来たことは、このための運命で あったのだろうな。よく頑張った。」 リュシアもすでにひざをついて頭を下げていた。 「…ありがとうございます。」 王がセイに目を向ける。 「…そなたもトゥールの仲間か?」 「はい、セイは僕達の大切な仲間で、何度も助けられました。」 トゥールの言葉に、王は満足そうにセイに語りかける。 「わしの国民を、そして世界を助けてくれたことを、心より感謝する。」 (…なるほどな、トゥール達が褒めるわけだ。) 偉大な勇者の手助けをしたのが、こんな流れ者だと分かったら、下手をすれば罵倒されるだけだと思っていたが、まさか まっとうに感謝をされるとは思っていなかった。 セイはひざをつかず、小さく頭を下げただけだったが、それに対し 笑顔で応えたアリアハン王に対する評価をぐっと上げた。 「さぁ、皆の者!祝いの宴じゃ!!」 王がそう声をあげると、いつのまに待機していたのか、ラッパを持った兵士達がすっと前に歩み出た。 そしていざ、吹かんとした時のことだった。 突然目の前が真っ白になった。 それは、魔法でも説明し得ない現象だった。 突然大地は揺れ、目を刺す光が稲妻を呼び、兵士を一人一人雷で打ち付ける、地獄。そして光が消えると、 今度は暗黒に包まれる。それと同時に揺れは収まり、禍々しい笑い声が聞こえた。 「ははははは、喜びの一時に少し驚かせたようだな。我が名はゾーマ。闇の世界を支配する者。この わしがいる限り、やがてこの世界も闇に閉ざされるであろう。」 突然の出来事から、とっさに立ち直ったのはやはり勇者の素質なのだろうか。 「そんなこと!させるもんか!!」 「さあ、苦しみ悩むが良い。そなたらの苦しみがわしの喜び。命ある者全てを我が生贄とし、絶望で 世界を覆いつくしてやろう。我が名はゾーマ。全てを滅ぼす者。そなたらが我が生贄となる日を楽しみにしておるぞ。 わははははははははははっ!!」 ゾーマと名乗った声は、トゥールの言葉に耳も貸さず笑う。やがて再び大地が揺れ、暗黒が消えた後しばらくして、ようやく 皆は力を抜いた。 「なんとしたことじゃ…。やっと平和が取り戻せるかと思ったのに…。闇の世界が来るなど、皆にどうして言えよう…。」 王の絶望の声。 「王様、僕は…。」 「トゥールよ、ゾーマの事、くれぐれも秘密にな…。もう、疲れた…。下がって良いぞ…。」 トゥールの声に耳も貸さず、絶望にあふれた言葉を出す王様に、トゥール達は弔いの言葉をかけ、城を去った。 「…まさかこんなことになるなんて。闇の世界ってどこなのかしらね。」 サーシャはそう言いながらも、どこかそんな予感がしていたような気がした。 竜の女王様が残した光の玉。結局バラモスに使うことはなかったから。 「…ギアガの大穴…。長老様は異なる世界からギアガが来たって。だから、多分そこだと思う。」 リュシアが小さな声で答える。その声を拾い、セイはかつて空から見た大穴を思い出す。 「あそこか。なんか災いが来るとか言ってたか。」 「…そうね、行かないと。ほっとけないわ。あんなこと、これ以上繰り返させる わけにいかないもの…そのつもりなんでしょう?」 ずっと黙っているトゥールにサーシャが問いかける。 「あ、…うん。そうだね。…うん、ほっとくわけにはいかないよ。」 「…トゥール…。」 リュシアが、トゥールの袖を引く。 「あ…なに?リュシア?」 「あのね、出発、あさってにして欲しいの。」 その意外な言葉に、三人は目を丸くする。 「…リュシア達いなくなったら、ママ達ずっと結婚しないと思うから。」 「…そうね。きちんと話して…急で申し訳ないけれど、ルイーダさんたちがよければその方がいいかもしれないわ。」 二人のその言葉に、トゥールは頷いた。 「うん、わかった。僕も母さんに話したいし。それじゃ、………あさっての昼。町の入り口で。セイは、どうする?僕の 家に来る?」 「遠慮しとく。せっかくの家族団らんを邪魔する趣味はないからな。トゥールの家の隣、宿屋なんだろ?そこにいるから用が あったら声をかけてくれ。んじゃ、またな。」 ひらひらと手を振り、セイは宿屋へと消えていく。それを合図に、トゥール達は待っているであろう親達の元へと 向かった。 |
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