終わらないお伽話を
 〜 足跡 〜



 激しく波が船にぶつかり、絡められた触手が船を砕かんと力を込める。
 残った触手が船の上から入り込み、こちらを握りつぶそうと襲い掛かる。それを掬い取るように、トゥールは剣で 弾きながら切りつける。
 そのトゥールを握りつぶそうと、触手を後ろから迫る。それをセイが飛び上がって突くように爪でえぐった。
「刺身にしてやる!」
「僕は食べないから、セイ一人で食べてね!!」
 たわいないことを言いながら、次々と触手を切り付けていくが、キリがないことは分かっていた。
「メラミ!!」
 大きな火球がクラーゴンの顔を焼き、ずるりと船から触手が外れる。だが、また別のクラーゴンが取り付き、再び 船を揺らし始める。
 そこで、待ちかねていた呪文が完成した。
「ザラキ!」
 死の呪文がクラーゴンたちを襲い、船に取り付いていたクラーゴンが次々と海に沈み、消えていく。その衝撃で船が 大きく揺れ、そして静まった。

 揺れが収まったのを確認し、サーシャは柱から手を離す。
「遅くなってごめんなさい。皆怪我はない?」
「わたしは大丈夫。」
「大丈夫だよ。…それにしてもやっかいだよね、あんまり呪文も効かないし。サーシャこそ魔力大丈夫?」
 この魔に侵された海に良く出てくるイカの魔物は、死の呪文以外の効きが弱く体力もあるため、どうしても サーシャ任せになってしまう。
「平気よ、…セイは?」
 返事がなかったセイをいぶかしんで見てみると、なにやら鷹の目を使ってみているようだった。
「あー、進路がずれたな。ちょっと東に行き過ぎだ。…ちょっと来てくれ。」
 そう言って地図を広げながら三人を呼び寄せる。
「どうしたの?」
 三人が集まったことを確認し、セイは地図の下の部分の真ん中辺りを指差す。
「この地図によると、メルキドは岩山の中にあるから、大陸の端で降りて歩く予定ってのは言ったよな?なんだが、 今いるのはここ、大分行き過ぎた。…でだ、こっちの方にだな、妙な祠があるんだよ。メルキド行った後で言おうと 思ってたんだが。今ならこっちの方が近い。どうする?引き返すか、いっそこっちを覗いてみるか?」
 セイがついっと指を動かした先は現地点から近い、海岸近くの場所だった。
「んー。そうだね、せっかくだからそっちに行ってみようか。まだ余力もあるみたいだし。どう?」
 少し考えて出たトゥールの提案に、三人は頷いた。


 海岸沿いにある祠は、およそ人の出入りがあるとは思えない毒の沼地の中にあった。だが、たしかにそこには 灯りがともっている。
「人がいるのか…。」
 提案した本人が、驚いたように言う。サーシャがトラマナをかけたことを確認し、四人は祠へと入っていく。
「…人間?」
「…エルフ?」
 祠にいたのは、緑の髪をしたエルフだった。耳が確かにとがっている。
 エルフは突然の人間の来訪に驚いたようだが、じろじろとこちらを見て、ため息をついた。
「…なんだ、オルデガじゃないのね。」
「父さんを知ってるんですか?!」
 トゥールの言葉に、エルフは目を丸くする。
「あら、貴方オルデガの息子なの?オルデガはモンスターにいじめられている私を助けて、ここまで連れてきてくれたのよ。 人間は嫌いだけど、オルデガは好きよ、きっと大魔王を倒してくれるわ。」
「…いつ、ここ来たんですか?」
「ここに来たって言っても、私を送り届けて、主様に会わずに帰っちゃった。ついさっきよ。10年は経ってないと思うわ。」
 その言葉を聞いて、力んでいたトゥールが肩を落とす。何百年も生きるエルフは時間の感覚が違うのだろう。 参考になりそうもなかった。
「そうですか、ありがとうございます。」
「貴方は主様に会いに来たの?主様なら上にいるわ。」
 そう言って、エルフは階段を指差す。ここに来た目的はとくにはないが、とりあえずその階段を登ることにした。


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