その小さな、それでいて大きな願いを、リュシアは胸にしまった。 「良かった。それ、聞きたかったの。」 「……ありがとう、聞いてくれて。」 そうサーシャが例を言って顔を挙げると、リュシアの姿が薄れているような気がした。 「リュシア……。」 「もう、行かなきゃ。」 「行ってしまうの……。」 そう言ってから、サーシャは口をつぐんだ。溶ける事は覚悟していたはずなのに、こうして想いを口にすると このまま一人になってしまうのが怖かった。リュシアが助けてくれるのではないかと、わずかに期待していた自分が 恥ずかしかった。 だが、その恐れと要望を、リュシアは分かっていた。 「ごめん、リュシアはサーシャのこと、助けられない。」 「……分かってる。ごめんなさい。会いにきてくれて嬉しかった。」 そう無理して笑うサーシャに、リュシアは笑う。 「リュシア、魔法使いだから。」 「……ええ、魔法使い、よね?」 唐突な言葉にサーシャはあっけに取られるが、リュシアは嬉しそうだった。 「闇の中から連れ戻すのは王子様の役目。リュシアの役ははお伽話の魔法使いだから、 王子様とか勇者の手助けをするだけなの。」 「リュシア?」 「でもね、リュシア、嬉しいの。ずっとずっと憧れてたお姫様にはなれなかったけど、王子様にもなれないけど、でもこうして お伽話の魔法使いにはなれた。お姫様の願いを叶えられる魔法使いに。それが凄く嬉しいの。幸せなの。」 それは、本当に無邪気で幸せそうな笑みだった。 目の前にいるルビスは、やっぱりサーシャに似ていて。それでもやっぱりまったく違うものだった。 ふっとルビスは笑みを浮かべた。 「……そう、ですね。その通りです。トゥール。」 子供は母を慕い、やがて母から離れ、新しい伴侶を見つける。それは自然な行いであり、ルビス自身が そう作ったものだ。 「ありがとうございます、トゥール。私はその想いに何も返せない。けれど約束します。いつか貴方の子供達…… 貴方の子孫達に、この恩返しをいたしましょう。」 「ルビス様?」 ルビスの胸の前に光が現れ、それは複雑な文様を描き出す。羽に、大きな樹、月桂樹の葉っぱ……つい先日、 同じものを目撃したセイにはわかった。それがサーシャの聖痕と同じものであることを。 ……やがてそれは一つの光に代わり、 ふしぎなプレートのようなアクセサリーのようなものになる。真ん中に 宝玉が埋めてあり……鳥のような紋章が象られていた。 「これは、代わりの聖なる守りです。本来の物のような力はありませんが、これがあれば全てを理解し、 貴方の力になってくれるはずです。さあ、お帰りなさい。」 「え、あ、あの……。」 「私は改めて、人の想いの強さというものを見せていただきました。貴方達にならきっとこの世界を 守ることができると確信しています。また、いつかお会いできる時を楽しみにしております。……けれど、その時はそう遠くはない ないかも知れませんね……。」 そう言って、ルビスは消えていった。 「待ってください、ルビス様!」 手に聖なる守りを持ったまま、トゥールはあせるが答えは返らない。 「……どうする?」 「とりあえず戻ろう。リュシアも心配だし。」 トゥールはそう言うと、リレミトの呪文を唱え始めた。 リュシアの体がサーシャから遠ざかっていく。 「リュシア!!」 呼びかけるサーシャに、リュシアの口からずっとずっと、旅に出る以前から聞いてみたかった問いが、驚くほど するっとすべり出た。 「サーシャは、トゥールのこと、好き?」 旅に出る前は、怖かった。なんと答えるのだろうと。聞くのが怖くて仕方なかった。 「…リュシア…。私…、私、は……。」 サーシャは、困惑してうつむいた。それを見て、分かってしまったのだ。自分がどうしてそれを問いたかったか。 消えそうになりながらも、リュシアは声の限りに叫んだ。 「でもね、サーシャ、トゥールは、サーシャの事が好きよ、ずっとずっと好きだったよ!!!」 自分はずっと、ずっとそう伝えたかったのだ。 うっすらとまぶたの向こうから、光が漏れた。 「大丈夫か?」 目を開けるとその表示に涙がこぼれた。 「セイ……トゥールも……。」 「びっくりしたぞ。帰ってきたらなんか泣いてるし、突然倒れるしよ……。」 どうやらそのまま仰向けに倒れようとしたところで、セイに支えられたらしい。見ると手が震えている。体も動かせないほど 疲れていた。 「ずっとそうやってたの?大丈夫?」 トゥールがいたわるように言うが、それに答えるより早く、リュシアは重要なことを伝えた。 「サーシャ、いたよ、トゥール。会ったよ。」 「本当?」 トゥールが顔を突きつけてくる。それにリュシアは静かに頷く。手に持っていた木の小さなペンダントを差し出して。 「助けてあげて、トゥール。トゥールになら、きっとできるから。」 トゥール、二度振る。実際のところ、トゥールは今まであんまりもててないタイプです。 なにせ勇者で旅立つことが分かっている上に、超絶美形がすぐ側にいたために、女の子にもてた経験はリュシア しかいませんでした。むしろ精霊に愛される素質を持つことが勇者の素質かもしれない。リュシアも元祖は 精霊だしな。 2長編の伏線?をここで消化。ドラクエは壮大ですね。 次回はお姫様救出編です。らぶらぶできるでしょうか。 |
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