がらがらと、音を立てて鉄格子が閉まり、石像に見せかけたモンスターが襲い掛かってくる。 「我らは魔王の部屋を守るもの…。」 「陳腐な罠だよな!!」 突然動き始めた石像に、セイはそう叫びながら 思い切りけりを入れる。その衝撃で、石像のふりをしていたモンスターは、地面に倒れ伏した。 その横から、サーシャは高々と剣を振りかぶる。その勢いを殺さずに、的確に首の付け根に剣を入れる。 「マヒャド!!」 リュシアの呪文とともに、サーシャは敵から離れる。目の前が真っ白に染まり、 セイに倒された石像が粉々に砕ける。そしてその吹雪の切れ目から、 「これでとどめっと!!!」 トゥールが石像の肩に深々と剣を入れると、リュシアの呪文で弱っていた岩が、ぼろぼろと砕け散った。 「ったく、弱いんだから大人しくしてろっての。これで全部終わりか?」 全ての石像を倒し終え、セイが砕けた岩を蹴飛ばして悪態をつく。 「あ、扉が開くわ。これでいけそうね。」 サーシャの言葉の通り、目の前の鉄格子ががらがらと開いていく。 ゾーマの城の内部は、思ったより綺麗だった。壁には黄金の宝玉まですえられている。美しい事は美しかったが、どこかゾーマの 目玉のようで落ち着かなくはあったが。 そして、おそらく玉座があると思しき広間へ向かう最中、通路へ入ったとたん閉じ込められ、石像が襲い掛かってきたのだった。 「ったく、こんな姑息な罠をしかけるあたり、ゾーマってのもたかが知れてるな。」 「さすが本拠地だけあって敵も結構多いし、疲れるわね。」 サーシャの言葉にリュシアが頷く。トゥールはそれを見てうなった。 「けど呪文は節約しないとまずいね。リュシアはまだ剣とか難しいしね。」 「鞭とかのほうが良いんじゃねぇの?あれなら離れて撃てるしな。教えるぞ?…まぁでも生兵法は怪我の元だ。 今は諦めろ。」 リュシアは頷くと、目の前の床を指差す。 「……ダメージ床……集まって。」 扉の向こうは輝くダメージ床で埋め尽くされている。リュシアの言葉に応え、四人はリュシアの周りに集まった。 リュシアの呪文とともに、四人の体を保護の光が包む。 そうして、その扉をくぐると、四人の前に空の玉座が出迎えたのだった。 思わずセイはその場に座り込む。 「まーたーかーよー。」 「あ、そっか、たしかバラモスの時もそうだったっけ?じゃあ他の場所なのかな?」 「めんどうくせーな。あんな罠まで仕掛けといて別の場所にいんのかよ。魔王の部屋だって言ってたんだがな。」 セイは腹立ち紛れに玉座の裏に回り、玉座を蹴り飛ばす。 「うわ!!」 突然、セイが消えた。 「「「セイ?!!!」」」 三人が裏手に回ると、セイはぽっかり空いた隠し階段の上に手をついて座っていた。玉座を蹴った反動で床がずれたようだった。 「怪我ない?」 「おう。びっくりしたけどな。」 リュシアの言葉に、セイは満面の笑みで手を振りながら応える。 「これはあれかしら、いざというときの避難通路みたいな感じなのかしら。お話でよくあったわね。」 「ああ、襲われてこういう通路で逃げ延びた王子が、あとでここから進入して敵を倒すんだよね……ってことは、これ 外につながってるんじゃ……?もしかして父さんこっから来たんじゃ?」 サーシャのたわいない言葉に、トゥールが真剣に考え始める。セイが呆れたように声を出した。 「……だったら今までの苦労はなんなんだよ……。台無しだろ、あの虹の橋。」 「それもそうだよね。……そうでいいのかな?」 そう問われ、サーシャが首をかしげる。 「……多分。分からないけど……ごめんなさい。」 「あ、いや、謝らなくても良いんだけど、うん。」 「……とにかく、行こう?」 なんだか妙に暖かな雰囲気になった二人に、リュシアが遠慮がちに割り込んだ。 |
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