終わらないお伽話を
 〜 ふれて、響き合う。 〜



”妹が森のずいぶん奥に来ると、ようやく小さな枝が落ちているのを見つけました。
 しかし拾おうと手を伸ばすと、小鳥の歌が聞こえました。

”♪娘さん、娘さん、それは私が巣を作る枝。どうか別の枝を捜してください♪
 可愛そうに思った妹は、あきらめてもう少し奥に入ることにしました。”



 カザーブに到着したのは、昼を少し回った頃だった。
「これからシャンパーニュの塔に行くのは少し遅すぎるから、宿を取ろう。宿屋のおじさんにも、 ノアニールの事を、ちゃんと報告しなくちゃいけないし。」
 トゥールはそう言って、じっとセイを見つめた。
「…明日の朝に僕は行くつもり。セイが来るのか来ないのかは…それまでに決めて欲しい。 駄目なら、できればこの村の酒場ででも待っていて欲しい。これは僕のわがままだけど。」
「帰ってこなかったら?俺に延々酒を飲ませるつもりか?」
 からかうように笑うセイに、トゥールは真面目な顔で答える。
「帰ってくるよ。でも帰ってきてセイがいなくても、それは仕方ないから。」
 だから飽きたらどこかに行ってくれてもいい、とトゥールは笑った。


「やぁやぁ、あんたたちかい。」
 宿屋の主人はトゥールたちの事を覚えていた。
「こんにちは。またお世話になります。」
 サーシャが頭をぺこりと下げる。世にも美しいサーシャに顔を赤らめながら、ちらりと後ろを見た。おそらく 自分の女房がいるのだろう。きまずげに話題を変える。
「…まぁ、ともかく、無事に帰ってきて良かったよ。それで、ノアニールはどうだったんだい?」
「それが…」
 トゥールが前に出て、手早く説明する。ノアニールの青年がエルフの少女とかけおちしたこと。それが エルフの女王の怒りに触れ、10年以上呪われていたこと。先日、その呪いは解けた事。
「…これから大変だと思います。眠っていた人は自覚がないでしょうし…だから、 難しいでしょうが、もしできる事があればしてあげてください。」
「そうだね。ああ、そうだ。」
 宿屋の主人は引き返し、しばらくして布に包まれた棒状の物をトゥールに手渡した。
「東の方の珍しい武器らしくてね。うまく使えば女性でも 一撃でモンスターを仕留められるらしい。これから旅をするんだろう? つまらないお礼だけど受け取ってくれ。」
 布をあけて見ると、取ってのついた、大きな針だった。どうやら先の方に仕掛けがあるらしい。
「ああ、毒が仕込んであるんだな。急所をつけば一撃ってやつか。」
 セイが感心したように言う。どうやら似たような武器は扱ったことがあるらしい。
「神の祝福は受けていない武器だし、護身としてリュシアが持つのがいいかもしれないわ。」
「うん、リュシア。荷物にならないなら予備の武器として持ってもいいかもしれないよ。はい。」
 トゥールに渡された武器を、リュシアは頷いて受け取った。
「…ありがと。」
 トゥールの後ろから、そっと主人に向かってそうつぶやく。主人は手を振って笑う。
「いやいや、こっちも安心したよ。宿取っていくんだろう?安くしておくよ。」
「あ、はい。4部屋お願いします。」


 部屋に入って、鍵を降ろす。荷物を降ろして部屋を見渡すと、そこには大きめの鏡台があった。
 サーシャは服を脱ぎ、体を映す。
「…やっぱり…大きくなってるわ…」
 きゅっと体を抱きしめ、そしてまた服を着た。


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