夜になろうと、商人の町、アッサラームのにぎやかさは変わらなかった。
 宿屋で合流した四人は、宿の主人とセイの薦めにしたがって、夜の町に出る事にしたのだった。
 ランプの灯りがきらきらと輝き、魔法めいたネオンがにぎやかに夜を隠す。
「あっちがにぎやかだろう?あそこがベリーダンスの劇場だ。まぁ、女子供にゃあんまりお勧めできねーけどな。 ほら、周りを見てみろ。その女に差し入れするもんがたくさん売ってるだろう? なんならサーシャ、何か見繕ってやろうか?ルイーダの店でそう言ったしな。」
 サーシャは顔をしかめていた。ここまで来るまでにも、薄絹のみをまとった女性が 夜の町に立っているのを何度も見たから。
「…あら、ねぇ可愛いわね。ここは初めて?」
「あ、えと、僕連れがいるので…」
 サーシャとリュシアの腕をしっかり握っているセイはともかく、トゥールはこうやって何度も話しかけられていて、 側にいるサーシャたちは、その女性の質の悪い化粧の匂いを、何度も嗅ぐはめにもなっていた。
「…どうして、あんなこと…」
 サーシャは顔を真っ赤にしてつぶやく。いくらサーシャでもなんのための呼び込みなのか知っていた。
「トゥールは、そんなこと…しない…よね?」
 トゥールのすそをぎゅっとつかみ、訴えるような目で見つめるリュシア。黒くて澄んだ瞳が、じっとこちらを見る。
 最初からそんなことしようとも思っていなかったが、なぜか罪悪感を感じるのはなぜだろう?
「しないよ!そんなこと…」
 なんとなく、語尾をにごらせるトゥール。それに不安そうに、リュシアはトゥールの腕をきつく つかんだ。

 残念そうに去っていく女の背中を少し寂しげにみつめながら、セイはつぶやく。
「まぁ、勉強なんだし気があれば買ってやればいいんじゃねーって思うんだけどなぁ…苦手なんだよなぁ…」
「…意外ね。盗賊の中では当たり前なのかと思っていたわ。私たち聖職者の間では害悪だけど…」
 サーシャは目を丸くする。少し意外だったからだ。
「まぁ、カンダタの部下もここに買いに来る奴は多いぜ。俺は女は口で口説いて喜ばせる もんって言うのが信条だからな。あいつらも大変だろうし稼いだ金をここに回して両方が潤えばいいんだけどな。」
 さらりと言ったセイの言葉に、少しサーシャは重みを感じる。それは、苦労して生きてきた人間の 重みだった。
「セイ。」
「サーシャに合うのは…白か緑だな。緑かな。そのゼニス・ブルーの髪に合うオーシャン・グリーンの布を買おうか。 俺の愛の証だ。」
 そっと両手で手をはさみ、顔を近づける。
「…セイ、僕たちのこと忘れてるだろ?」
 呆れてるトゥールと、顔を赤くしてるリュシアを見て、セイが追い払うように手を振る。
「気が効かねーなぁ。そっと場を離れるくらいしろよ。」
「そうしてまたはぐれられても困るけど。愛の証なんてもらっても困るしね。」
 サーシャはそう言って、セイの手をつかんではぎとった。
「冷たいなぁ…俺はこんなにサーシャの事を愛しているのにな。」
 大げさに嘆いてみせるセイを無視して、サーシャは空を見上げる。
「ふざけた事を言っていないで、もう寝ましょう。この町には夜がないけれど、やっぱり 私は昼は起きて夜は寝る、天地の法則に従った生活の方が好きよ。」
「そうだね、そろそろ寝ないと明日が辛いし。」
 トゥールはにぎやかな町を眺めた。
「多分、ここも父さんが守りたかった町だよね。…父さんはここに来て、どう思ったのかな。」
「…よくまぁ、10年以上前の人間の事を覚えてる奴なんていたもんだな。」
「父さんはすごい人だったからね。父さんは父さんは僕の自慢だよ。」
 トゥールは臆面もなくそう言い切った。それは輝くまぶしい笑顔だった。
「…んじゃ寝るか。明日は早いぞ。」
 セイはそう言って、宿屋の方へと目を向けた。そのトゥールから目をそらすように。


   意外とイベントがあるようでないようなアッサラーム。魔法の鍵ってなんなのかなーは 蒼夢のオリジナルです、すみません。ガイドブック無視しちゃいました…
 私はこのまちで危ない水着が欲しかったことだけが印象的です。さすがに作品には 出せませんでしたが(笑)SFC版ではなくなってるんですよね…一生懸命お金ためたのに…

 そんなわけで次回はイシスへ行っていただきます。ピラミッド攻略頑張れ。

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