終わらないお伽話を
 〜 昔の唄を歌おう 〜



”そして次の日の事です。なんと家の裏手に、大きな大木が立っていました。妹が 驚いていると、家族たちは邪魔な木だからとその木を切り倒してしまいました。

 蓑虫の好意を無駄にしてしまって落ち込んでいる妹に、今度は小鳥の声がしました。
♪ありがとう ありがとう お礼に良い事教えてあげる その木を織り機にしてみなさい♪
 妹はありがとうと言って、小鳥の言うとおりその木で織り機を作りました。すると輝くような 素晴らしい織り機ができあがったのです。”



 くわぁぁ、とサーシャが子猫のようなあくびをした。
「サーシャ、寝不足?」
 トゥールがそういった時、その横にいたリュシアも、小さくあくびした。
「なんだよ、二人とも。俺たちより早く寝たんだろう?」
 セイがそう笑いながら、先頭に立つ。石扉に手をかけた。
「おい、トゥール、ちょっとそっち持て。」
 二人がぐっと力をかける。そしてゆっくりと、イシス王家の墓、ピラミッドの扉が開いていく。


「…偉大なる大地の精霊ルビス神よ。死者の眠りを妨げる行為をすることをお許しください…。そして眠れる者たちに、 大地の安らぎを与えんことを…」
 ピラミッドの前で、サーシャが祈りを唱える。同じく祈るトゥールとリュシアの横で、セイは冷めた目で それを見ていた。
「罠があるっていうから、気を付けなくちゃ。セイ、慣れてるんだっけ?」
 祈り終わったトゥールが、ピラミッドへと足を踏み入れる。三人もそれに続いた。
 ピラミッドは埃っぽく、かび臭かった。だが、
「さっきの扉も結構簡単に開いたし、足跡もある。…結構な人数が出入りしてるはずだぜ。魔法の 鍵もまだあるかわからねーな。」
「盗掘よね…私たちもしていることは変わらないけれど…。女王様にお許しをもらったのなら、 魔法の鍵がちゃんとあるといいんだけど…」
「あったらあったでやっかいなんだけどな。」
 セイの言葉に、サーシャは目を見開く。
「これだけの人数が来ても手に入らないって事は、そうとう手ごわいってことだろ。」
 その時、リュシアがトゥールの袖を引く。
「…来た。」
 トゥールが剣を抜く。サーシャとセイもそれを見て槍を構えた。リュシアも、呪文を唱え始める。
「っと!」
 セイがすばやく敵の後ろに回り込む。包帯を巻いたミイラ男の肩をめがけてナイフを振り下ろす。
「メラミ!」
 そこに、火の玉が飛ぶ。一瞬にしてミイラ男は灰へと変わった。
「…一匹だけみたいだね。行こうか。
 トゥールが剣を収める。使わなかった槍をしまいながら、サーシャが周りを見回す。
「眠れぬ死者が魔になるなんて…リュシア、気づいてくれてありがとう。」
 リュシアは嬉しそうにこくんと頷いた。歩き始めたトゥールに追いつくために、小走りに前に進む。
「っと、トゥール、リュシア、ちょっと待て!!」
 一番後ろにいたセイがそう叫んだ時、足元がぱっくりと開いた。


 ぐしゃり、と骨が砕ける嫌な音がした。続いて、もう一度同じ音。
「んっしょ…大丈夫?!」
 落とし穴の外側にいたセイが、とっさにサーシャをつかんだらしい。サーシャが宙吊りになったままそう叫んだ。
 サーシャがはセイの手に捕まって、なんとか上へと這い上がる。
「ありがと。助かったわ。」
 サーシャはセイににっこりと笑いかけた。
「リュシア?大丈夫?どこか痛くない?」
 トゥールは慎重に自分の体を動かしながら、リュシアに問いかける。リュシアも手足を動かし、頷いた。
「…痛くない…音、下。」
 リュシアの言葉に下を見ると、そこには骨の山だった。見渡すと、かなり広いフロアの全てが骨で埋まっていた。
「…クッションになったのはありがたいけど…」
 トゥールが顔をしかめる。上からのんきな声が聞こえてくる。
「おーい、だいじょうぶかー?」
「なんとかー。そっちは無事なんだよねー?縄でもたらしてくれる?」
 トゥールの言葉に周りを見回して、セイは首を振った。
「無理だな。捕まるところも足元にとっかかりがないから、重みで落ちちまう。」
「セイももうちょっと早く言ってくれれば、こんな面倒なことにならなかったのに…。」
 サーシャの言葉に、セイが頭を掻く。
「しかたねーだろ。これだけ暗いんだ。足跡がおかしいって気がついたのは、ついさっきなんだからよ。」
 言われて見ると、そこだけ滑ったような足跡になっていた。見ると変な回り道の足跡もある。
「…トゥール…トゥール…!」
 リュシアが声をあげる。怯えたような声だった。

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