落とし穴の仕掛けがある一階をセイの案内で通り抜け、迷路のような細い通路が つながる二階をなんとか潜り抜けた。
「…どうしようか。」
「道、間違えたか?」
 三階に入って、四人は途方にくれていた。大きな石壁が目の前に立ちふさがったのだ。
「…扉…かしら?これ、魔法の鍵で開けるってことなのかしら?」
 サーシャは扉を丹念に見て回る。入り口のように取っ手もなければ鍵穴もない。かといって、複雑な文様や 壁画が彫られている事から魔法の玉で爆破するようなものでもなかった。
 だが、その手前に階段があり、床に彫られた文様は確実にその扉の奥まで続いているようだった。
 セイはしばらく扉の周りを調べた後、立ち上がった。
「たいていこういうもんは、近くに開けるための装置があるんだろうけどな…。んじゃ、遠隔操作なのかも しれねえな。」
「他の場所にあるってことだよね?」
「多分な。しかしこうなった以上、魔法の鍵はまだある可能性は高いな…まぁ今までの空の宝箱に入ってなきゃの話だけどな。」
 セイがため息をつきながら言う。ここまで空けてきた宝箱のほとんどが、空か宝箱にみせかけたモンスターだったのだ。
「古いお墓のような物なのに、すごいのね。」
「旅の扉みたいに、今の人間じゃわからない装置を、昔の人たちは作ってたんだよ、すごいね。」
 サーシャとトゥールが感心したように言う。リュシアも頷いて、小さくつぶやいた。
「魔力、強かったの。昔はもっと皆。」
 ちょうど両翼のように分かれた道を曲がり、細い通路を通る。最後に小さな分かれ道。 するとそこに、小さな窓、そしてその下に小さなボタンがあった。
「…このボタンか?」
「…セイ、こっちにもボタンがあるよ?」
 すぐ隣の通路の行き止まりにも、同じように窓とボタンがあった。
「…まずいな。下手に押すと落とし穴とかそういうオチか?」
「もう片方の道に、何かヒントがあるかもしれないわね。そちらにも行ってみたらいいんじゃない?」
 サーシャの言葉に頷いて、道を引き返す。そうしてたどり着いた先は、先ほどの光景とまったく同じだった。

「…どこにも何もなかったわよね…?」
「うーん…こういうのって、やっぱり適当に押したら駄目なんだよね…」
 トゥールの言葉に、リュシアが首を振る。またあの地下に行くのがどうしても嫌なのだ。
「…でも、このまま放置ってわけにも行かないよ。…僕、押してみる。皆下がってて。」
 三人を押しのけて、トゥールが前に立つ。少し震える手で、ゆっくりとボタンに手を伸ばした。
 その手を、砂漠の太陽が照らす。
「っと、ちょっと待った!!!」
 セイが声をあげる。トゥールの指が止まった。

「どうしたの?セイ?」
「…まんまるボタンはお日様ボタン…?」
 奇妙な言葉が返ってきて、三人は目を丸くする。
「…セイ、どうしたの?暑さにやられたの?」
 サーシャがいぶかしげに言うが、セイは目を閉じてなにやら考えている。
「そうか、太陽か…童謡とか昔話ってのは、意外と昔の実話だとか暗号だとか…そんなもんが含まれてる ことが多いな。東ってこっちだよな?」
 セイはすたすたと歩き出す。トゥール達はあせってセイの後を追う。
「セイ、どういうことなんだよ?何かわかったの?」
「三人が城に行ってる間、俺は町で子供たちが遊んでるのを見たんだ。その時、遊びながら子供たちが歌って たんだ。『まん丸ボタンはお日様ボタン、小さなボタンで扉が開く』ってな。」
 セイは、一番東にあるボタンの前に来た。
「俺が正しかったら、一番東のボタンを押して、次に一番西のボタンを押せば扉が開くんじゃないかと思うぜ。」
「開ける方法を、童謡にして残したということ…確かにありえない話じゃないわ。このピラミッドの話か どうかはわからないけど…」
 サーシャの言葉に、セイは苦笑する。
「それは否定しないぜ。どうする?」
「乗るよ、セイ。僕が押すね。もし罠があったらフォロー頼むよ。」
 トゥールは笑って先頭に立つ。リュシアは心配そうにトゥールとセイを交互に見、サーシャは不安げに ため息をついた。
 トゥールの指が、古びた石のボタンを押す。かこん、と軽い音がして、トゥールは目をつぶる。
「…なにも、起きないな…」
 いつでも対応できるように構えていた鞭を、セイは降ろす。トゥールは恐る恐る三人の元へと戻る。
「とりあえず、もう一つの方も押してみよう。」


 トゥールが最西のボタンを押したとたん、奥の方で重い音が響いた。
「行ってみましょう!」
 四人は駆けだす。細い通路を抜けた先…階段の向こうにあった岩壁…いや、扉は完全に消えていた。そして、 その奥には今まで出もっとも豪奢な壁画と、新しめの宝箱が置いてあった。
 駆け寄って、そっと宝箱を開ける。モンスターに備えて武器を構えるが、そこにあったのは、優美な銀の輝きを 持つ鍵だった。
「…魔法の鍵・・・。」
 その優美な形は、確かに貴族が持ち歩くにふさわしい形だった。
「良かった…今回はセイが大活躍ね。ありがとう。洞窟専門って本当だったのね。」
 サーシャが手をとって喜ぶ。セイは少し微笑んで、奥にある階段に目を付ける。
「まーな。…この奥にも宝がありそうだな。ちょっと探っていきたいんだが…」
「でも、それって盗掘じゃないか?」
「いいんじゃねーの?女王はなんにも知らねーって行ってたしな。ほら、行くぞ。」
 トゥールの腕を引きずって、ずりずりと階段へと進む。サーシャとリュシアは不安げにその後を追った。


 そうして夕方まで、四人は、散々イシス王家の恐ろしさをたっぷりと思い知る事になったのだった。


 ピラミッド編終了ー!今回は何気にリュシア主役かもしれません。毒針のネタは絶対 どこかでやろうと思ってたので、やれて満足です、はい。
 黄金の爪は、私はこの時点で取らないのでパスします。レベルがもっとあがってからでないと、 死んじゃうんですよね…後半のレベル上げの一環にしてます、毎回。

 さて、次は一気のポルトガに向かいます。ここでもちょっと長々としたお話になる予定…


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