トゥールがぶつけた頭を抱えながら起き上がった。なんとかホイミで回復しているようだった。手に残った 血を勢いよく振り払う。
「ほう、まだ立ち上がるか。どうだ、俺の子分にならないか?」
「悪いけど、お断りだよ。貴方は凄い人だと思うけど、多分僕とはうまくいかないと思うし。」
「へえ、セイとはうまくいってるのか?」
 揶揄するように言うカンダタに、トゥールは真顔で答えた。
「セイは、いい奴だからね!」
 トゥールのその言葉が合図になったように、セイが跳ねた。すでに鞭の柄は捨て、ナイフを持って切りかかる。 だが、それを手で受け止めた。
「白刃たってなぁ、ただちょっとすばやいだけの盗賊風情じゃ、本気の俺に傷なんて付けられねぇんだよ!」
 どうやら手袋が特別制らしい。そのままナイフをつかんで、ナイフごとセイを投げ飛ばす。
「スカラ!!」
 そのセイに、リュシアが呪文をすかさずかける。そのままセイは壁に叩きつけられたが、 呪文のおかげか、ダメージはあまりなかった。
 トゥールが後ろから切りつける。だが、カンダタはやすやすと斧で受け止めた。
「マヌーサ!」
 そこに、サーシャの呪文がとんだ。敵を幻惑の霧で覆う呪文だった。カンダタが目を覆う。
「うぉぉぉおお…なんてな!」
 にやりと笑って、カンダタは駆けた。それはその巨体からは考えられないすばやさで、 サーシャの横顔を殴り、よろけたサーシャの襟首をつかみ上げる。 サーシャはとっさに首が締まらないよう首筋の服をつかんだ。


「…とりあえずお前から売ってやるぜ?いい値つきそうだぜ?」
 切りつけようとしたトゥールの前に、サーシャをぶら下げ、盾にする。セイは挑発するように笑う。
「っは、落ちぶれたもんだな、天下のカンダタがよ。」
「俺はお前みたいなフェミニストじゃないもんでね。女を殴るくらい、屁とも思ってないんだよ。世の中 生きたもんが勝ちなんだ。」
 挑発を受け流し、カンダタが言い切った。サーシャをぐっと顔の前まで持ち上げる。
「さてと、別に律儀にお前等と戦ってやる必要もないか。子分の変わりもいくらでもいるしな。 セイ、道開けろ。死にたくないだろ?女?」
 カンダタはにやりとサーシャを見て笑う。三人は歯噛みしながら、それを見ていた。サーシャは 力なく三人に目を向けた。
「…トゥール、セイ、リュシア…ごめんなさい、足手まといになって…」
 そう言うが早いか、サーシャはぐっと足に力をいれ、カンダタの目に思いっきり蹴りを入れる。 カンダタはたまらずサーシャから手を離す。
「けどね、生憎まだ殺されるつもりはないわ。」
 地面に降り立って、サーシャはそう言った。その横を、トゥールが走る。首筋に剣先を向けた。


 トゥールは驚くほど冷たい目で、カンダタを見つめた。
「…このまま切ってやりたいよ、僕。」
「だろうな。っま、因果応報ってやつか。ははは、人質なんか取らなきゃ、こんな無様な死に方はしなかっただろうな。」
 カンダタは、晴れ晴れと笑ってみせた。セイが油断なく斧を遠くに投げる。そしてナイフを持ち、トゥールの反対側から 首筋に当てた。
「まぁ、四対一じゃ俺たちが正義だとはいわねぇよ。」
「別に僕も正義で怒ってるわけじゃないよ。」
 サーシャは横で殴られた顔に回復呪文をかけていた。リュシアはカンダタを警戒しながらも、それを心配そうに 見ている。
「はは、それはつまり、正義の味方じゃないから命乞いしても無駄ってことか?」
「…どうだろうね。命乞い、やってみる?」
 トゥールのその言葉に、カンダタが笑う。
「頼むわ、もうこれっきり心を入れ替えるからよ。許してくれねぇか?」
「心を入れ替えるってどういうこと?」
 トゥールの言葉にカンダタが、芝居じみたしぐさで両手を合わせた。
「もう人をさらったりしねぇよ。子分にさらわせたりもしない。盗賊団もやめるからさ。」
 サーシャが回復を追え、トゥールの隣に立った。

 カンダタが、サーシャに笑いかける。
「悪かったな、綺麗なねーちゃん。顔殴っちまってよ。」
「生きるか死ぬかの戦いだもの。私も目をつぶすつもりで蹴り上げたしね。謝る必要はないわ。」
 カンダタにそう言ったサーシャに、トゥールがようやく顔をほころばせた。
「綺麗に直ったね、サーシャ。」
「大丈夫、なんてことはないわ。足手まといになったことは反省しているわ。」
「でも、サーシャがいたから。…リュシア、役立たずだった。」
 リュシアが後ろから少し愚痴るようにつぶやく。セイがそれをフォローした。
「いや、おかげで痛い思いせずにすんだぜ、リュシア。…で、トゥール、どうするんだ、これ。」
 カンダタにナイフを更に近づけて、トゥールに問う。
「そうだね…以前に手加減してもらった恩もあるし…そろそろグプタさんたちもちゃんと逃げられただろうし。 僕達の実力で勝てたわけでもないしね。」
 トゥールの言葉に、カンダタがナイフをつき付けられているのも忘れて笑う。
「はははははははははは、なるほどな、今更あの二人を追いかけて、人質にする事を恐れてたってわけか。なかなか いい頭してるな。お前も盗賊になれば良かったのにな。」
「僕達だけなら、魔法で逃げても良かったしね。でも、三度目戦うことがあれば、次はないよ。」
 トゥールはそう言って、剣を引いた。それにあわせてセイもナイフを引いた。

 警戒してはいたが、カンダタがこれ以上見苦しい真似をすることはないと、セイには 分かっていた。
「長い付き合いだったな、金腕のカンダタ。いろいろ世話になった。」
「こっちこそな。…なかなかいい奴だな、勇者ってのは。」
「…かもな。」
 セイが短くそう答えると、カンダタは最後にトゥールに向かって手を振った。
「じゃあな、また会う事があれば、そん時は頼むぜ。じゃあ、元気でな。」
「…僕は二度と会いたくないけどね。じゃあ、さよなら、カンダタ。」
 トゥールの言葉を聞くと、カンダタはひらひらと手を振って、そのまま洞窟の入り口の方向へと消えていった。
「…なんだか不思議な縁ね。」
 サーシャの言葉に、セイが苦笑する。
「腐れ縁なら嫌だよな。…まぁ、とにかく帰ろうぜ…疲れた。」
 トゥールが頷くと、リュシアはリレミトを唱え始めた。


 そんなわけでセカンドバトルでした!!
 何個かパターンは考えたんですが、結局トゥール達は実力では勝ってないですね(笑)偶然の産物と言うか。 まぁ、運も実力のうちということで。カンダタってなんとなく、トゥールたちでは越えられない 壁のような気がします…
 そして意外とグプタがいい男に…多分、運がいいんですね。あときっと、聖なる河の流れに毎日漬かってるので モンスターには遭わないのでしょう、ええきっとそうです、はい。



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