「おお!貴女は!また会えるとは嬉しいな!!」 「あれから全然来ないし、噂も聞かないから心配してたんだ…もしかして城に捕まってるんじゃないかとか…」 「皆待ってたんだよ。城では何かされなかったかい?」 船場に向かった四人を、船職人たちは喜色満面で迎えてくれた。男達はあっというまにサーシャを囲んだ。 「心配してくれていたのですね…ありがとう。見ての通り、私達は無事です。実は…」 そこに、横からトゥールが手にした書類を付き出した。 「遥かなる葡萄酒の香り号を、僕達が譲り受けることになりました。これがその書面です。」 トゥールの言葉に、男達に驚きが走る。男の一人が書類を奪い取り、一人一人に回す。 「へぇ、たいしたもんだ。あの王から船を一隻もらうなんてな…」 「しかも葡萄酒の香り号って言ったら、最新型のやつだぜ。いい気味だ。」 「どんな手段を使ったんだ?魔法みたいだ。あの王から…」 その言葉言葉に、今までの苦労が読み取れる。サーシャは苦笑した。 「ええ、そのいろいろありまして…皆さん、苦労なさってますね…」 「わかってくれるかーーーーー!!」 「ああ、でも俺たちはこの国を愛している!いつかきっと認めてもらえる日が来るさ!!」 「この技術を子と孫に伝えるまでは、俺たちは!!」 全員でトゥールたちを囲んで、男泣きを始めた。 「あ、あの…」 「まったくなさけねぇなぁ。ほら、上がどうだろうが誇りをもって生きていけばいいんだ!!」 そう怒鳴りつけたのは、以前親方と呼ばれていた男だった。 「すまねぇな。積荷の準備もしておく。明日の朝には出港できるようにしておくが…それでいいか?」 「はい、お願いします。」 トゥールは頭を下げた。そのトゥールの横から、セイが口を挟む。 「ところで、操縦ってどうなってるんだ?」 「ん、この型式なら魔法補助が入ってるからな、単純な操縦なら素人でも簡単にできるだろうが…この港を出てすぐ南に 灯台がある。航海術やら詳しいことはそこで教えてもらえ。暇してるだろうからな。」 親方はそれだけ言って、サーシャに泣きつく男達を怒鳴りに向かった。 「ん?」 「あら、セイ。どこに行くの?」 外に夜の礼拝に行っていたのか、サーシャと廊下ですれ違った。 「馬鹿だな、俺はその青い瞳に…」 セイはそこまで言って、口をつぐんだ。 「…サーシャはそんなこと言っても、喜ばねぇよな。」 「そうね。」 サーシャは、セイに、聖母のような笑みを向けた。 セイは、宿屋にあった小さなサロンにサーシャを誘った。 「イシスで…サーシャのこと愛してないって、言ったな。覚えてるか?」 セイの言葉に、サーシャは頷く。 「覚えているわ。」 セイは苦笑した。 「その通りだよな。愛なんて、そんなもんじゃない。俺は…女を泣かせるのが嫌なだけだ。嫌って言うより 苦手なんだ。」 「バハラタでも、そう言っていたわね。」 サーシャの言葉に、セイは髪を掻き上げる。銀に透き通る髪が、夜空に映えて美しかった。 「…初めてまともに会った女が 失恋で泣いていた。俺はどう慰めていいか知らなかった。ただ、泣きやんで欲しくてだから思い付く言葉で慰めたら口説いた形に なっただけだ。それが癖になったんだな。」 サーシャは一瞬目を丸くしたが、その言葉に何か冷たい物を感じて、そのまま触れないことにした。 「ふふ、なんだか遊び人みたいね。」 サーシャが笑う。セイは目を丸くした。 「遊び人?なんだそれは?」 「人を笑わせて娯楽を提供する職業よ。あまり役に立たないと言われているから、なる人は少ないけれど…そうやって 人に愛を与えることで悟りの書なしで賢者になったという伝説もあるわ。」 「へぇ…サーシャはそっちは目指さなかったのか?」 セイの言葉に、サーシャは少し考える。 「考えたこともなかったわね。小さい頃から近くに神の教えはあったし、遊び人じゃ旅に出たら苦労しそうだもの。」 「じゃ、なんで賢者になろうとしてるんだ?」 |
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