終わらないお伽話を
 〜 生い立ち 〜



「メラミ!」
「メラミ!」
 大小二つの炎が、同時に大王いかを焼く。
「おー、すげーな。」
 マリンスライムを一番に叩いたセイが、船のへりにもたれながら拍手をした。
「攻撃魔法が二人とも使えるようになって、楽になったね。セイも攻撃力があがったし。」
「そうね…でもやっぱり、リュシアには敵わないわね。魔力があがったわけじゃないし…」
 サーシャが自分の手を見つめる。賢者になったとしても、魔力があがったわけではなく、あとは自分の 努力次第だ。だが、おそらくどれだけ努力しても、リュシア並の魔法は使えないだろうとわかっていた。セイも 納得して頷く。
「まー、そりゃ無理だろうな。リュシアは特殊だろうしな。」
 旅に出て、リュシアの魔力は更に向上していた。何十回と聞いているのに、うっかり聞き惚れてしまいそうなほど美しい 呪文の旋律。同じように歌ってみせても、サーシャでは呪文が発動すらしない。自分なりにやるしかなさそうだった。
「でもサーシャ、回復できる。すごい。剣も使える。…リュシア、力ないから。」
 リュシアがそう控えめにそう告げた。トゥールはリュシアの頭を撫でながら笑う。
「だから皆がいるんだしね。大丈夫だよ。僕も頑張るから。…ところでセイ、こっちでいいの?」
「おう…もうちょっと北だ。ほとんど最北端だな。」
 セイは頷いた。目的地は大陸の一番北だった。セイがガルナの塔の一番上から、北の方向に村を見たと言うのだ。
「本当にあるの?私には見えなかったけど…。」
「とっとと落ちたお前等に、あの高くて狭いところでひたすら敵をおびき寄せて叩き続けた俺の苦悩がわかるか?遠くを見ながら 現実逃避する以外どうしろっていうんだ…。」
「「「ごめんなさい。」」」
 冗談めかしていったセイに、三人がほぼ同時に謝った。あまりのタイミングに、四人は一瞬顔を見合わせて爆笑した。


 雪さえ降りそうな凍てついた大地。さぞ暮らしにくそうだと思うその場所に、確かに村はあった。
 少し大きな市場と、教会。そして村の人々が住まう家々。ささやかな町並みが並んでいた。
「ほら、俺の言った通りだろ?しっかし、ずいぶん田舎だな…こりゃとっとと東の大陸探したほうがいいかもな。」
「そうね…あまり旅人が訪れそうにも見えないわ…。けれど、落ち着く雰囲気ではあるわね。」
 サーシャの言葉に、トゥールが頷く。
「そうだね。それに田舎って言っても、レーベよりは大きいんじゃない?」
「ポカパマズ!ポカパマズじゃないか!」
 突然、そう声が聞こえる。声の方向を見ると、おそらく村人だろう、壮年の男性がこちらに向かって嬉しそうに歩いてきた。
「やっぱりポカパマズだ!久しぶりだな!」
 そう言って、トゥールの手を取った。
「…へ?」
「元気そうだな!」
「…いや、あの、その…人違いです。僕、トゥールって言いますし、この村に来るの、初めてですから。」
 そう言われて、男はトゥールをまじまじと見つめる。
「ん??そう言われたらあいつにしちゃ若いな…?でも良く似てるな…?」
「はぁ…そうですか…?そういう名前の知人は知らないので、良く分からないんですけど…。」
 トゥールの言葉に、男は手を離す。顔を赤くして頭をかいた。
「人違い、すみませんでした。いやはやお恥ずかしい。」
「いえ、気にしてませんから。」
 トゥールはそう言って手を振った。

「まぁ、ポカパマズじゃない、お久しぶりね。」
 老人女性の声に、セイがうんざりしたようにトゥールに声をかける。
「何度目だ…?」
「いや、覚えてないけど…多分、二桁は越えたかな…?」
 トゥールも少しうんざりしながら答えた。何せ村を奥に進むたびに『ポカパマズ』という会った事も聞いたこともない 人物に間違えられるのだ。
「変わったお名前よね…ここの村、独特のお名前なのかしら…?」
「少なくとも、聞いたら一発で覚えられると思うんだけどね。」
「おお、ポカパマズ!!」
 聞こえた男の声に、まだ四人はうんざりした顔になった。
「あの…僕…」
「ポポタ、ずっと待ってたんだぜ!さ、早くこっちへ!!」
 トゥールの言葉も聞かず、男はトゥールの手をつかみ、ずかずかと歩き始める。
「いや、その…。」
「ずっと楽しみにしてたん、ポポタ。いやぁ、約束を守ってくれるなんて嬉しいね!」
 男はトゥールの話は聞いてないようだった。トゥールは嘆息して、促されるままに歩いた。


「ポカパマズさん!」
「あ、ポカパマズさんだ!!」
「お帰り、ポカパマズ!!」
 市場に入ると、その声は一層大きくなる。トゥールはすでに諦めていた。どうやらポポタという 人物に会わせるのが目的らしいのだから、まずそこから誤解を解いたほうが早そうだと思ったのだ。
「…それにしても…ずいぶん人気のある人だったのね、ポカパマズさんって。」
「そうだな、良かったな。下手に賞金首なんかに似てなくて。いっそポカパマズのふりしてつけでなんか 買ったらどうだ?」
「…トゥールはしない、そんなこと。」
 サーシャとセイは、むしろ気楽に市場を見ながら後ろについて歩いている。リュシアは皆の注目が 気持ち悪いようで、トゥールにぴったりとくっつきながら歩きながらも、セイの言葉に抗議した。
「…はいはい、俺だって本気で言ってるわけじゃねぇよ。しっかし他人の空似ってあるもんだな。」
「ほら、ポカパマズ!早く早く!」
 階段の前で男が手招きする。トゥールはもう一度嘆息して、男に尋ねる。
「それで、ポポタさんは上にいるんですか?」
「…ポポタさんって…どうしたよ?ポカパマズ?」
 どうやらポカパマズとやらはポポタをさん付けでは読んでなかったようで、男はいぶかしげにトゥールを見る。
「いえ、僕はポカパマズさんじゃありません。似てるみたいですけど。でもこれだけ大騒ぎになったなら、 ポポタさんにも会って、誤解を解いておかないと色々大変そうですし。案内ありがとうございます。 良かったら他の誤解している方々にも伝えて置いてください。」
「はぁ…?」
 男は良く分かって居ないようだったが、トゥールは頭を下げて、階段を登る。三人も礼をして、その後を追った。


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