なんとなく口を挟みがたく、四人は無言で船へと戻ってきた。
「トゥール?」
「トゥールー、だいじょうぶかー?」
 リュシアとセイがトゥールの顔をうかがうと、トゥールは大きく深呼吸をして笑った。
「あーーー、驚いた。まさか父さんがポカパマズって名前だったなんて。 …おじいさんには悪いけど、僕でも名前、変えたくなるかな。」
 トゥールの言葉に、セイが小さく吹き出した。
「…そういや、トゥールの従兄もポポタって名前なんだから、ここらへんの地方にはそう言う韻を持たせる 伝統なのかもな。」
「かもね。悪いけど良かったよ、アリアハンで。」
「…トゥールの名前、リュシア好き。」
 そう笑いあう三人の横で、サーシャが少し不機嫌そうに文句を言う。
「それにしても、オルテガ様とトゥールを間違えるなんて!全然似てないのに…!」
「若い頃は似てたのかもしれねーぜ?ほら、ああいうやつらって、自分が若い頃で時が止まってるからな。」
「トゥール、おじさん、親子。だから似てる、きっと…。ずっとそう言ってた、他の人も。 おじさんも、トゥールもかっこいいから。」
 セイとリュシアの言葉に、サーシャはそう言って、きびすを返した。
「認めないわ…私は絶対に認めないわよ!全然似てないんだから!!」


「…なんだ…?いつもより激しくないか?怒り…?」
 セイがあっけにとられながら、サーシャを見送る。トゥールが笑う。
「頭の中に父さん像が崩れて、混乱してるんだと思うよ。僕もそうだしね。意外と普通の人だったんだね、 田舎が嫌で出て行っちゃうなんて。…さてと、せっかくだし、東の大陸行ってみようかな。ここから東って何かあるかな?」
「おお、そう言えば、あの大陸に挑戦しようと思ってできなかった塔があったな。行ってみないか?」
 セイが地図を広げる。
「ここに、現地人、スー一族の村があるんだが…そっから山脈を迂回したここに、塔があるんだな。なんか 宝があるって言うのは噂で聞いたんだが…入ってすぐの所の鍵のかかった扉が開かなくてな、ちょっと気になってたんだ、俺。」
「…いいけど、宝って何?」
「いや、知らね。挑戦することに意義があるからな。」
 トゥールの疑問に胸を張って答えるセイ。トゥールは笑う。
「わかった…じゃあ、まずその村に行って、何があるか聞いてみよう。塔のことはそれからってことで。リュシアも いい?」
 トゥールの言葉にリュシアが頷くのを確認して、トゥールは舵を取り始めた。


 痛いと言うより熱い。生まれつきの事で慣れているとはいえ、最近どんどんひどくなっている。この旅を 続けてから。
 それだけではない。どんどん大きくなり、広がっている。最初は、ほんの小さな小さなものだったのに、 いまや大半をしめるほど、大きくなっている。…これも旅に出てからだった。

 海原に映った星空は美しかった。思わずそれを見て、サーシャはため息をつく。
「はぁ…。」
「はぁ…。」
 ほぼ同時に、ため息が聞こえた。サーシャは思わず声の聞こえた方向へ向かう。そこには、兜を前にして ぼんやりと座り込んでいるトゥールがいた。
「…サーシャ?」
 隠れていたつもりだが、トゥールはすぐに気づいたようだった。こちらを見て、手招きする。
「…それ、オルテガ様の兜よね。多分、旅立ちの時につけていったやつだわ。」
「うん。…やっぱりなんだか複雑だよね。」
 そう言って、トゥールは兜をかぶる。良く手入れされた兜は、しっとりと頭になじんだ。
「…やっぱり似合わないわ。トゥールには。」
「そう?」
 そう言われて、トゥールは兜をはずす。
「そうよ、おじ様はこう、絵に描いたような勇者!というか、勇ましい感じ だったけれど、トゥールは違うもの。おじ様とトゥールは全然違うわ。」
「…うん。僕も、どっちかというと、母さん似だと思うんだけどな…。」
 トゥールは力なく兜を床に降ろし…そのまま静かに泣き出した。
「…トゥール?」
「…ごめん…側にいて…欲しい…少しだけでいいから…。」
 サーシャは何も言わず、トゥールの側に座った。トゥールはそのまま、少しだけ泣いた。


 そんなわけで、「ポカパマズは実はオルテガの本名説」でした。いかがだったでしょうか?
 いや、案としては二つあったんですよ。一つはこれ。もう一つは「ポカパマズというのはムオル の言葉で『血まみれの男』と言う意味で、倒れて意識不明のオルテガに暫定的に付けてた名前が 定着した」という案。後者の方が原作に近いんですが、オルテガさん、このあたりで 一人旅で倒れるなら、魔王退治なんて無謀過ぎるよ!ってことで後者を選んでみました。… 本当にどうやって一人旅してたんだろ、オルテガさん…
 次回はスーです。攻略順めちゃくちゃですみませんです…。


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