終わらないお伽話を
 〜 聖痕 〜



” その場所には国中の女が花嫁衣裳を来て立っていました。どれも美しかったのですが、泉の水で 織り上げた姉のドレスには適いません。すぐに王子様の目に止まりました。

 王子は姉の前に出て、こう言いました。
「なんと美しい。まさに私の花嫁にふさわしいドレスです。それは貴方が織ったのですか?」
 姉は自信を持って答えました。
「はい、もちろんです、王子様。私が織りました。」
 王子は再び聞きました。
「そうですか、どうやって織ったのですか?」
 姉は自信を持って答えます。
「私の家の織り機を使ってです、王子様。」
 王子は再び言葉を重ねました。
「その織り機はどこで手に入れたのですか?」
 この問いに、姉は答える事はできませんでした。”



 大陸を迂回し、東側に回り、そこから入り組んだ河を地図を頼りに進んでいくのは、大変な手間だった。 何せあまりに河が入り組んでいて、自動操縦が効かないのだ。
「…ここまでして、その村に行って、何もなかったらがっかりね…。」
「オーブの情報があるといいんだけどな。だいたいオーブがどんなものかもわからないし…なんだか漠然としてるよね。」
 トゥールの言葉に、サーシャは自分の言ったらしい言葉を思いだす。確かにあいまいで、良く分からない言葉だった。
「おーい、着いたぞー。」
 舵を握っていたセイが、大声で呼びかける。船はちょうど、小さな村の近くの河で止まった。


 そこの村人たちは皆、頭に羽を着け、顔に不思議な文様を塗りつけて自らを飾るという、変わった格好をしていた。
「お前たち、誰だ。何しに来た。」
 その中で、トゥールたちはよほど目立つのだろう、鋭い眼光で村人たちがこちらに話しかけてきた。
「僕達は…アリアハンから来ました。えっと…オーブってご存知ですか?」
 トゥールの言葉に、村人たちの視線が痛くなる。
「こいつら、オーブ知ってる。」
「また奪いに来た。」
「盗りに来た。」
「捕まえろ。」
「捕まえろ。」
 そんな声が聞こえ、空気が不穏になる。トゥールが剣の柄にそっと手をかけ、セイたちも構えた。
「…念のために聞いておくけど、セイ、前にここで何か盗んだって事はないよね?」
 トゥールのささやき声に、セイが小さな声でどなりつける。
「だったら来るかよ!」
「あはは、それもそうだよね。…話、聞いてくれないかな…?」
 トゥールの言葉もむなしく、村の男達は殺気を放ちながら、こちらを囲んでいる。その円は、徐々に狭くなり、 男達は今にも襲いかからん勢いだ。
「お前たち、待つ!!」

 そこに声がした。円が崩れ、老人が顔を出す。羽の豪華さからいって、ここの村長だろうか。
「こいつら、オーブ、取ろうとした。」
「悪い奴等。捕まえる。追い出す。」
 周りの男たちが、その老人に訴えかける。老人は一通りそれを聞いて、こちらを見た。
「お前たち、オーブの事、どこで知った?」
「えっと…バハラタの近くにある灯台のおじさんが教えてくれました。『世界に散らばる6つのオーブを 手に入れた者は船を必要としなくなる』って。」
 トゥールが答える。老人はさらに問いを重ねる。
「なぜ、ここに来た。」
「えーーーと…。」
 トゥールはちらりとセイを見る。まさか近くにある塔の宝を狙って来ました、とは言えない。すると、サーシャは 横から一礼をして、口を開く。
「ここだけではありません。先ほど言いましたが、バハラタと言う町や、ダーマ、ムオル…他にも沢山の町を 訪れて、オーブを探しております。…ここに…オーブがあるのですか?」
 サーシャの言葉に、老人はしばらくなにやら考えているようだったが、さっと片手をあげ、男達を 引かせた。
「…わかった。お前たちに説明してやる、こっちこい。」


 こうして周りを見渡すと、村の作りがいい加減であることに気がついた。家の作りなど、家というより掘っ立て小屋 と言ったほうがしっくりくるほどだった。
「多分、開拓民なんだろうな。だからいつでもつぶせる家を建ててるんだろう。」
 ものめずらしげにきょろきょろする三人に、セイがそう解説してみせる。
「…なんだろ。オーブ?」
 ここの民に負けず劣らず片言のリュシアが、少し不安そうにつぶやく。セイは頭を掻きながらため息をつく。
「…リュシア、何度も言うが、しゃべる前に人に聞きとりやすいか、考えて話せよ。それじゃ訳がわからんぞ。」
「…セイって意外と面倒見がいいわよね。」
 サーシャのささやきにトゥールが頷く。
「うん、お兄さんって感じだと思うよ。」
 それを聞き届け、セイは笑う。
「まー、実際これっくらいの妹がいるからな。」
「へー、セイから家族の話、聞くの初めてだね。」
 トゥールが目を丸くする。サーシャも驚いていた。
 ”俺に過去の事を聞けるのは、本当に良い女だけだ、サーシャ。”
 セイの過去の言葉。その欠片を話してもいい、と思う程度には、セイは自分たちのことを信用してくれているのだろう。 そう思うと嬉しかった。
「あ?もう家族なんて、全部捨ててきちまったから、いないも同然だぜ?妹ったってもう何年も会ってねーし、 …成長してりゃこんな感じになったのかね。」
 妙に重いセリフを、セイは軽く言ってのけた。
「ここ、入れ。」
 老人はそう言って、目の前の建物に入っていく。他の建物とは違い、比較的しっかりした作りなのは、やはり この老人がそれなりの地位の人間だからなのだろう。
 入ると、そこには大きな椅子があり、一番飾りつけられた椅子に、老人が座っていた。
「座れ。話す。」
 そう促され、四人はそれぞれ椅子に腰掛けた。


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