終わらないお伽話を
 〜 道標 〜



 朝日を浴びて、遥かなる葡萄酒の香り号が出航した。目指すはルザミ。

 サーシャが見る限り、セイは変わらないように見えた。今日の朝もライサとは今までのように、 親しげに話していた。
「どうしたよ?」
 そう言われて、見ていた事がばれたかとサーシャはぎくりとしたが、セイはトゥールにくっついている リュシアに話しかけたようだった。
「…?大丈夫?」
 リュシアの言葉に、セイが不思議そうに答える。
「は?なんでだ?」
「…変。どっか。」
「セイが具合悪そうってって事?でも、顔色悪いようには見えないよ?」
 トゥールの言葉どおり、セイは本当に普段どおりに見えた。それでも昨夜の事を思いだして、もう一度じっと セイの顔を覗きこむ。
「おいおい、サーシャまで。さては俺に惚れたか?」
「まだ懲りないの?…健康そうに見えるけど…?」
 そう言われて、リュシアは申し分けなさそうに口をつぐんだ。それを見て、トゥールはそっと頭を撫でる。
「責めてるわけじゃないよ。どうしてリュシアはそう思ったのか、僕、聞きたいな。」
「…ぼんやりしたり、なんだか嫌な顔。時々だけど。どこか悪い?」
 リュシアのその言葉に、セイは一瞬凍ったように止まったがやがて優しく笑い、リュシアの髪の毛を撫でた。
「お前、やっぱり俺の妹に似てるな。」
 おどおどして、気の弱い子供だったのに、どこか人の表情に聡く、ごまかしが効かないところがあった。
「…どこか悪いのか?セイ?」
「おー、本当に島があるんだなー。ほらあれだろ。」
 セイのあまりにもあからさまな会話のそらし方に、トゥールはつっこまずに乗る事にして、セイの視線を 追った。

 徐々に近づいてくる、小さな小さな島。そこに塔のような物がみえた。
「あれがルザミかな。ずいぶんと航路から外れたところにあるんだね。」
「ま、忘れられるくらいだからな。」
「あの塔はなんなのかしら…ちょっと変わった形ね。」
 島にあったのは村…とも言えないほどの小さな集落だった。
 その中で、サーシャが言った高い塔は妙に目立っていた。
「予言者ってあそこにいるのかしらね。」
「とにかく、村に入ってみよう。」


 村に入ってきた四人を見て、村人たちは固まった。
「…変?」
 リュシアが自分の体を見回すと、村人の女性がぎこちなく声をかけてきた。
「驚いたわ。ここに旅人が来るなんて何年ぶりかしらね。ここはルザミ。忘れられた島。貴方たち、なんの ご用?」
「えっと…ここに、予言者がいるって、そう聞いてたんですけど。」
 トゥールの言葉に、女性は少し顔をしかめる。
「おんじに、一体何を聞きに来たの?言っておくけれどおんじは占い師じゃないわ。貴方の未来なんてわからないのよ。」
 言われてセイはぽん、と手を打つ。
「ああ、そうか。予言っていうからには、神託だよな。まったく関係ない事しか知らない可能性もあるのか。」
「でも、危機に瀕している世界を神が憂いていらっしゃらないはずはないわ。」
「世界の危機?貴方たち、そんな事をきいてどうするの?」
 女性のいぶかしげな視線に、リュシアは答える。
「トゥールは勇者だから。」
「まだまだ、未熟だから、勇者と名乗るにはおこがましいと思うけれどね。そうよ…それに真の 勇者であるオルテガ様が本当に…お亡くなりになったなら、それこそ神様が存じていらっしゃると思うわ。」
 サーシャのいつもの言葉に、リュシアは少しだけ眉をひそめたが、何も言わずにトゥールにくっついた。 トゥールはあまり気にせず、女性に話しかける。
「そう言うわけなんです。良かったら案内してもらえませんか?」
「良いわよ。こっち。」
 そう言って歩いて行くのは、村の北の小さな家の方向だった。セイが村の東を見ながら女性に尋ねる。
「ところで、あの塔はなんなんだ?」
「あれ?あれは星見の塔って呼んでいるわ。なんでも望遠鏡っていって、星が良く見えるんだって。ちょっと 変わり者も学者が住んでいるのよ。」
「へぇ…きっと綺麗なんだろうな。」
 トゥールの言葉に、女性は苦笑する。
「それが、その学者がずっと張り付いてて、見せてくれないの。なにか研究のせいでこの島に 来たらしいけれど…おんじ、お客です。」
 ドアの前で女性がそういうと、中から咳払いが聞こえた。
「入って良いって。頑張ってね。」
 女性はそう言うと去って行った。


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