四人は顔を見合わせた。
「…いいのかな?」
「聞こえたの、咳払い。」
「良いって言ってんだからいいんじゃねぇの?」
「とりあえず、ノックしましょう。…すみません、お邪魔します。」
 サーシャの呼びかけに、
「ん。」
 奥から老人の声が聞こえた。トゥールは戸惑いながら扉を開けた。
「こんにちは…。」
「ほほぅ。」
 見た瞬間、小さな部屋の小さな椅子に座っていた小さな老人が、嬉しそうに声をあげた。
「あの…。」
「いや、言わんでもええ。わしはずっとおぬしを待っとったようじゃ。…勇者よ。」
「はい。」
 トゥールは頷く。それを認めたくないサーシャは、視線を少し横にそらした。
「ふむ、わしが言える事は、『魔王の神殿はネクロゴンドの山奥。やがてそなた等は火山の火口に ガイアの剣を投げ入れ、自らの道を開くであろう。』…これだけじゃ。」
「火山…父さんが行ったのは、このため?でもガイアの剣って…。」
「むかし、サイモンという男が持っとったそうじゃ。それ以上は知らん。」
「そうですか…とても、有益でした。ありがとうございます。」

「オルテガ様は、やっぱり魔王を倒そうとなさっていたのね。」
 外に出て、サーシャは開口一番そう言った。
「けど、オルテガはガイアの剣、持ってたのか?もし一緒に火山に入ってたら手の付けようがないぜ?」
「というか、そもそも自らの道ってなんなんだろう…?だいたい魔王の城に行くにはラーミアに乗らないといけないんじゃなかった っけ?」
 四人で腕を組んで頭を抱える。サーシャが持ち直したように顔をあげた。
「…まぁ、神のおっしゃることは、人には簡単に理解できないこともあるわ。旅を続けて行けば、やがてわかるかもしれない。」
「もしかして…父さん、その意味がわかるのに5年かかったのか?」
「なら、トゥールは20年かかりそうよね・・・大丈夫かしら。」
「そんなにはかからないよ…多分。」
 トゥールの最後の言葉は小さくなった。リュシアがトゥールの手をにぎる。
「大丈夫。トゥールなら。」
「…うん。そうだね。」


 船に乗ったとたん、セイは渋い顔をして言った。
「あそこに行くのはやめておけ。」
「あそこって、どこよ?」
「ジパングだ。あの国はやばい…絶対に行かないほうがいい。」
 トゥールは顔をしかめる。
「そうは言っても…オーブがそこにあるのなら、どうやっても行くしかないよ。」
「いや、なんとか人に頼んで取ってきてもらうとかだな、考えたほうがいい。あんなとこ、ロクなもんじゃねえ。」
「…セイ、行ったの?」
 リュシアの言葉に、セイは少し考える。
「…行った…ことはない。ただ、黄金の国、ジパングの噂は盗賊の中では有名なんだ。」
「黄金の国?」
 サーシャの言葉に、セイは笑う。
「そう言われてる。何人もの盗賊がジパングを訪れて、その黄金をとろうとしたらしいが…あんな田舎によそ者が 入ってみろ、一発でわかるぜ。」
「そんなに簡単にわかるものなの?」
 サーシャの言葉にセイは頷く。
「ああ、あそこは俺達の常識は通用しない。木と土の家に紙の窓と扉。草の床にボタンがない着物と呼ばれる服だ。」
「…なにそれ?どういうものなんだ?」
 トゥールの言葉に、セイは言葉をにごす。
「まぁ、…なんだ。聞いた話だから、詳しく説明はできねぇよ。まぁ、とにかくだ。せめて行くならリュシアとトゥール だけにしておけ。…それならまだましかもしれないからな。」

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