〜 砂漠のフェスタ 〜



 確かに感じる人の熱気に、四人はホッと胸をなでおろす。
「良かった。本物の町みたいだね。」
「蜃気楼じゃないみたいね。ホッとしたわ。」
 大きなオアシスを背に、あちこちに天幕が張られている。その中では色々なものが並べられ、売られている。籠を頭に載せて、 果物を売っている女達もいる。まるでお祭りのようににぎわっていた。


 ドムドーラから船を出し南下した四人は、やがて新大陸……ずっと以前からあるのにそういう言い方は おかしいだろうが……にたどり着いた。
 ただし、着いたところは砂漠だった。セイはあからさまにいやな顔をしたのだが、降りることに反対はしなかった。
 建物の影が見えたからだった。建物があるということは、人がいる可能性が高い。まったく世界を知らない自分達の ヒントになるかもしれないと、四人は砂漠の中央へと歩いてきたのだった。


 すっぽりとした帽子をかぶったセイが、町を見渡す。
「しかし生活の匂いがしないな。あっちこっちほとんど天幕ばっかりじゃねぇか?こりゃぁ、宿屋は期待できそうに ないな…。あちぃ……。」
 同じオアシスの町でも、イシスは石造りの町だった。だが、ここには石造りの建物はない。宿屋はあるにしても、 ずいぶん簡素な物になりそうだった。
「お祭りみたい……。」
 ぽつりと言ったリュシアの言葉に、トゥールが同意する。
「それに近いね。もしかして、その、ここでもゾーマ討伐のお祝いやってるとか……ないよね?」
「ないんじゃ……ないかしら?まだ情報も伝わってないでしょうし……。」
 セイに以前もらった緑の布で頭を覆いながら、サーシャは不安そうに言った。
 逃げ出してきた身としては、なんとなく気まずい。間違ってもロトの勇者とルビスの巫女(正確には 違うが)だということをばれないようにしなければ。
「とりあえず、一通り歩いてみるか。じっとしてても仕方ないだろうしな。」
 その言葉に反対の言葉などなく、四人は中央に向かって歩いていった。


「だからそっちとこっちをつなげるための橋をかけるってわけさ。ただまぁ、けっこう荒れやすい河だからなんども 流されちゃってね。今度はつり橋にしようってんで、結構手間がかかっているみたいだけどね。」
 適当に入ったジューススタンドの女主人は話し好きのようで、事情を細かく話してくれた。
 以前から、このオアシスから北にある土地へと、人々は開拓のために旅立っていた。そこは肥沃な土地であるが、 アレフガルドが封印された関係で、ずっと手放された土地であったという。
 やがて、そこに小さな集落が出来、より発展させるために、あちらこちらから資材等を運んだり、 物を持ち込んだりする商人がこの砂漠を通るようになる。
 人の通るところ、商売あり、とばかりにこの砂漠のオアシスに、このバザールが集まり、なかなかの盛況ぶりだと いう話だった。
 特に最近は、『なぜか』ばったりとモンスターが大人しくなり、人々はより多く行き交うようになったと聞かされたときは、 トゥールの額に冷や汗がにじんだ。
 ずず、とやたら太いストローでジュースをすすると、何か黒いぶつぶつしたものが一緒に吸い込まれる不思議な ジュースだったが、これがなかなかフルーティーでおいしいのだ。
「ということは、この近くにまた町か国があるってことか?」
「うーん、近くはないねぇ。一番近いところって言うのは、ここから東のムーンエクサだろうけど。……ここも元々 ムーンクインダムっていう、魔術国家だったんだけどね、ここもアレフガルドの影響で色々あってねぇ……今じゃ一部の 魔法使い達が残ってる、国とはいえない集落になってるんだよ。」
「とは言っても、国だと言うのなら、結構な人数がいそうだけど……行ってみましょうか?」
 サーシャの言葉に、女主人は首を振る。
「今はやめておきな。この間寄った商人達の話じゃ、ちょっとした騒ぎだったそうだからね。」
「騒ぎってどういう騒ぎなんですか?」
「なんでも、大事な石が割れたとかなんだとか。詳しい事は知らないけど、大騒ぎで商人達も追い払われたらしいよ。」
 やれやれと、女主人はため息をついた。セイがさりげなさを装って聞く。
「じゃあ、ここらへんで一番大きい町ってのはどこだい?」
「ん?そうだねぇ、船で行かないといけないけど、やっぱりペルポイの国だろうね。あそこは鉱業の国でね、今一番栄えてる。 こっから南東、ロンダルキア山脈のふもとだよ。あとは……南西のベラヌールだろうね。ここは国じゃあないが、 教会を中心に栄えた宗教都市だよ。僧侶達がたくさん集まってるね。あと、こっから西に行ったところにある デルの町が国になるって噂だね。……あんた達、どっから来たんだい?」
 よほどおしゃべり好きなんだろう、女主人はそこまで話したところで、今までの話の全てをメモしているトゥールたちを、 初めて不審に思ったようだった。
「言ってなかったか?俺たちはラダトームから来たんだ。……大魔王が倒されたってんで、こっちの大陸を探検して、 一山あてようって思ってな。」
「な、なんだって?だ、だからモンスターが大人しくなったんだね!!こりゃぁニュースだ!!一大事だね!!」
 女主人は立ち上がり、店から出て行こうとして立ち止まる。
「あ、あんたら、せっかくだからダーラに占ってもらったらどうだい?」
「ダーラ?」
「そう、最近やってきたよく当たる占い師なんだよ。占ってもらうためにここに来る人間もいるくらいね。」
 そういい残すと、女主人はそのままどこかへ駆けて行った。


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