終わらないお伽話を




 昔々、あるところに二人の姉妹がおりました。
 姉はとても美しい娘でしたが、いじわるでした。
 妹は捨て子でしたが、とてもやさしい娘でした。
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 ”勇者に選ばれた少年、トゥール”

「行ってらっしゃい、トゥール。ちゃんと王様に挨拶するんですよ。」
 心配そうに見守る母親に、トゥールは手を振った。
「大丈夫だよ、母さん。…それじゃ、行ってきます。」


 ”フェミニストな盗賊、セイ。”

「じゃあ俺は、一抜けさせてもらうぜ。ここまで楽しかったぜ。」
 きり、とサーシャは一瞬歯噛みした。
「やっぱり裏切るのね?」
「裏切る?」
 せせら笑いながら、サーシャのあごを持ち上げセイは顔を近づける。
「言ったろ?俺はプロなんだよ。勝ち目のない戦いは、最初から参加しねえの。 まぁ、仲間のよしみだ。勝てねえからやめとけ。」


 ”賢者になりたいと旅立つ僧侶、サーシャ。”

「で、まぁ結局、そこの勇者さんは良いとして、何のために旅立つんだ?」
 セイの言葉に、サーシャは胸をはって言う。
「私、賢者になりたいの。悟りの書を手に入れてね、ダーマの神殿で転職したいのよ。」
「へぇ。そりゃご立派だな。」
 そしてサーシャは祈るような表情でつけたした。
「それと、オルテガ様をみつけたいの。必ずどこかにいらっしゃると思うから。」


 ”無口な魔法使い、リュシア。”

 ふと目が覚めた。たった一人の部屋。下からはにぎやかな酒場の声が聞こえる。
 空を見ると、それほど時がたって居なかった。せっかく寝付けたのに、なにかの 拍子に目覚めてしまったのだろうか。
 リュシアは少しだけ考えて、枕を持って立ち上がった。そして、トゥールの部屋へと向かう。
「…トゥール…おき、てる?」
 ノックをしたあと、小さくそうつぶやくと、目の前のドアが開いた。
「どうしたの?リュシア。」
 パジャマ姿のトゥールが、そう聞いた。灯りがついているところを見ると、どうやらまだ眠っていなかったらしい。
「…一緒に、寝てもいい…?」


 ”四人は、何かを求めて旅に出る。”


「我…ら…いさ…いち…一族…?」
「リュシア、読めるの?」
 ぼけた古代も字を、必死でたどるリュシアに、サーシャは目を丸くした。
 だが、そこでリュシアの目が止まった。
「…わかんない…」
「そっか、ぼろぼろだしね。」
 トゥールはそう言ってリュシアの頭をくしゃりと撫でる。リュシアはほのかに頬を染めて、少し黙った。
 ”我ら一族は、闇の一族なり。”
 読み取れた最後の言葉は、胸の奥へとしまって。


 少しだけ寂しそうに言うサーシャに、トゥールは笑う。
「じゃあ僕なら大丈夫。勇者だから転職できないし。なんて書いてあった?」
「ねぇ、トゥールはこの旅が終わったらどうなるの?」
「ん?」
 サーシャは真剣な表情をしていた。
「だってトゥールは勇者でしょう?この旅が終わるって事は…勇者が必要となくなるということよ?」
「んー、とりあえず僕には夢があるから。」


「…オーブを探しなさい、トゥール。」
「…サーシャ?」
 目の前にいるのは、確かにサーシャだった。だが、その目は、その口調は、決してサーシャのものではありえなかった。
「安らぎの緑。活力の赤。勇気の青。知力の黄。歴史の銀。自信の紫。すべて揃いし時、新たな 道が開けるでしょう…」


「なぁ、結局勇者ってなんなんだ?なんで勇者はアリアハンでしかなれないんだ?」
「それは勇者になる儀式はアリアハンでしか執り行うことができないからよ。」
「なぜだ?」
 聞き返したセイに、サーシャは頷く。
「詳しい事は私も知らないわ。けれどアリアハンは、世界で唯一勇者になるための儀式を 執り行うことができるの。だから…アリアハンは閉鎖しているのよ。」


 ”そして”


「あなたさえいなければ、私は否定されなかった…あなたさえいなければ、私は 必要とされたのに。あなたさえいなければ、私は幸せになれた!!返して!!私の居場所、 返して!!!!!!!」
 悲痛な声。その声と共に、激しい黒い風がこちらに吹き付ける。
 すべてを吹き飛ばす風。すべての者を消し去ろうとする意思をもった風だった。


 そしてサーシャはそのままトゥールの剣を抜くと。
 トゥールのわき腹へ剣を刺し貫いた。


 セイはリュシアの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。リュシアは不信そうにセイを見上げた。
「いや、別に。…ちょっとお前、妹に似てるな」
「…セイの?いるの?」
「まぁな。もうすっかりでっかくなって…こんぐらいになってるんだろうな。」
 もう一度乱暴に髪を荒らした。リュシアは少し不満そうに髪を戻した。
「…やっぱり、リュシアは妹…?」
「あ?」
 みるとリュシアは少し、泣きそうな顔をしていた。
「…トゥールは、…妹だって思ってる…かな…」


「…貴方は世界を救いたかったのではないのですか?」
 創造神にして精霊の女王に、トゥールは答えた。
「僕は…。」

 ”お伽話が、始まる。”


 「終わらないお伽話を」の予告です。あんまりかっこよい予告にならなかったのが残念です…
 DQ3です。あの精霊のこどもたちで出てきた勇者たちのお話です。
 中編DRAGONQUESTの時とはえらく設定が変わってしまったのですが、頑張って 書ききりたいと思っております。長くなりそうですが、どうぞよろしくお願いいたします。

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