〜 呪術師の旅路 〜


「ここ?」
 ローラが耳元で囁く。目の前には、石造りの洞窟がぽっかりと穴をあけていた。
「そうなんだが、あんまり気配がしねーな……。」
 ガライの墓ではあふれるばかりの呪いの気配だったが、少なくとも入り口に立っている分には感じない。
(何もないか、もしくは姫を結界から出したから、か?)
 そう思いながら、一歩洞窟に足を踏み入れるが、やはりなにも感じない。
 あの呪いくささがないのは快適なのだが、方向が分からない。自分は冒険家ではなく、呪術師であり、 よく分からない洞窟をうろうろするのは勘弁して欲しいところだった。
「でもなんか、変な感じするね、アルフ。」
「それはどっちかわかるか?」
 ローラに囁くと、ローラはうなずく。
「もうちょっと下のほう、かな?」
「わかった、行ってみるか。」

 さすがに体は5歳児ほどとはいえ、やはり抱えて歩くの負担にならない重さではない。
 だが、ローラは意外なほど気配を察するのがうまいらしく、自分より早くモンスターを見つけるが多い。すっとモンスターを 指差し、自分がうなずくと音を立てずに地面に降り、じっとしている。
 それをちらりと確認し、アルフはモンスターに切りかかる。
 自分は決して強くない。だからこそ、敵は不意をついて先手必勝が鉄則だ。最初に一撃入れさえすれば、 それでずいぶん有利になるのだから。
 水平に薙いだ剣が、メーダの蛇をごっそりと切る。反対側の蛇がアルフの腕に噛み付いてくるが、それを振り払い、 その大きな目を突いた。声にならない悲鳴を上げて、モンスターは消え去った。
「大丈夫?」
 小さな声でローラが心配そうに声をかけてくる。
「これくらいでどうこう言ってたら何もできないからな。」
 治した腕を見せ、またローラを抱き上げる。
「ローラも、結構気持ち悪いだろ、平気か?」
 当たり前だが、モンスターが血を流して倒れていく様は、中々にグロテスクだと思うのだが、ローラは 自分が戦っている間も、決してこちらから目を離さない。
 ローラは少し困ったように笑う。
「気持ちいいわけじゃないけど、でも……。」
「まぁ、気持ち悪いなら、見なくてもいいからな。」
 ローラは困ったように笑い、小さく首を振った。


 階段を下りたところで、アルフは呪いの気配を感じた。
「やっぱりあるみたいだな」
「こっち。」
 ローラがそう言って指差した先は、なんの変哲もない小部屋に見えた。だが、その 中央に、以前の魔法陣があった。その中には宝箱が置いてある。
 アルフはローラを下ろすと、破却するために聖水やらをふりかけ、呪文を唱える。
 ぽん、と軽い音がして、魔法陣は消えた。慎重に宝箱に手をやり開けると、中からは 禍々しい首飾りが出てきた。
「なんだか、気持ち悪い……。」
「呪われたアイテムってやつだな。人に不快感を与える……ってとこか。結構古いけど、ガライのやつほどじゃねぇか。これならもう 壊しちまってもいいよな。」
 呪いがかかった布の上に乗せ、特別に薬草などを調合した粉をふりかけ、そこに火を当てると、ぼっと燃え上がると共に、 首飾りは砕けて消えた。
「消えちゃった。」
「消さない方がよかったか?さすがにあれはいらないと思ったんだが。」
「ううん、そうじゃなくて……アルフはやっぱりすごいんだなって。」
「元々これが本職だからな。」
 そう言ってみるが、ローラの顔は優れない。何を思っているかはなんとなくわかったので、アルフに笑ってやった。
「心配するな。俺が必ず無傷でローラの呪いを解いてやるから。」
「……うん、そしたら私、きっと世界一の美女になるんだから……一番に見せてあげるわ。」
「まぁ、期待せずにおく。」
「なによう。」
 膨れるローラに笑って、アルフは地上に戻るための呪文を唱えた。


 二人はメルキドに向かうことになった。
「メルキドに何かあるの?」
 ローラはアルフの首にしがみつきながら、囁くように聞く。
「あるかもしれないし、ないかもしれないけどな。まぁ、ゴーレムが暴走してるって 話しだし、とりあえずそれをなんとかしてみようかと思ってるんだが……。」
 そこまで話して、アルフはローラを見た。
「そういや、ローラは竜王に会ったんだよな。何か、覚えてるか?」
「何かって?」
「まぁ、理想を言えば、太陽の石の場所とか、残り一個の媒体の場所なんだか、そうじゃなくてもいい、 竜王がどんなやつだったかとか。」
 ローラはうつむく。
「あんまりわからない……だって、さらったのは別の魔物だったし、目が覚めたときは寝かされてたから……。 それから血を抜かれて、あとは、もう多分、気がついたらアルフが助けてくれた場所に寝かされて、辛くて苦しかった……、あ。」
「何か思い出したか?」
「うん、血を抜かれる前、多分竜王だと思うんだけど、が、言ってたの。『姫もうまい具合になったものだ』って。 ……もしかして、私の呪いって竜王がしたのかなって。」
「まぁ、何か知ってることは確かだな。」
「ねぇ、アルフ。もし竜王が呪いをかけたなら、竜王を倒したら、その呪いは解ける?」
「まぁ、その可能性は高いな。」
 アルフがそういうと、ローラは周りが輝くような笑みを見せた。
(……まぁいいか、嬉しそうだしな。)
 今、夢を壊すこともあるまい。アルフはそう思って、南へ足を進めた。


 
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