精霊のこどもたち
 〜 序章 〜

 ある伝説があった。
 暗黒に封印された大陸。
 空より舞い降りた勇者が、光を取り戻した。
 そしてその血を引く勇者は囚われの姫君を助け出し、邪竜を倒し、光を取り戻し…そして姫君と旅に出る伝説。

 そしてその伝説は別の大陸で帰結する。
 その勇者は細々と暮らしていた村の人々の暮らしを治め、土地を整地し、大きな一つの王国を作り上げた。

 その勇者アレフと、その恋人ローラ。
 その心は鳥のように自由。そして、決して他を圧しない心を持っていた。その心に人々は惹かれ、集った。
 人の心は人のままに。今までの生活を決して変えず、ただ、請われるままに人々を治めた、歴史に残る王だったと 伝えられている。

 やがて王妃となった姫君との間に子供が生まれる。
 一人目の子は、王女ルミナ。
 二人目の子は、王子アレン。そして、アレンと双子として生まれた、王子サルン。
 徐々に大きくなりはじめた国。人の欲と統一されていない『常識』が交差し、争いが起こった。
 第一の子ルミナ王女に、国を継がせるべきだとする意見。
 女には王位継承を与えるべきではなく、アレン王子に国を継がせるべきだとする意見。
 双子の兄と言うのは腹の中で弟に先を譲るため、双子は後に生まれた方が兄であるのでサルン王子に継がせる べきだとする意見。
 それぞれの補佐についた大人たちが、それぞれを優先してもめた。
 そして、その決断は、まだ名もついていなかった王国のこれからを決める重要な決断だった。
 人々の注目が集まる。勇者となったの決断。王国のこれから。
 だが、王とその王妃は、旅をしてきた自由な心のままの決断をした。


 王女ルミナに、最も広く豊かな大陸を分割し、一つの国として与えたのだ。
 その名はムーンブルク。もともと芸術家と魔術士が多く生まれ、暮らしていた村々を一つの美しき国として、アレフは 王女に与えた。
 ムーンブルクはその後、その特色をより大きく活かし、美しい花の国として栄えていく。

 二人の王子が成人に近づき、城の空気がまたも荒れつつある頃、第二王子サルンが、父王にこう伝えた。
 自分は兄と争い、国を混乱させる事は望んではいない。その申し出に答え、アレフは隣りの地方に、 一つの城を建て、その地域一帯を、国として与えた。
 やがてその緑萌ゆる湖の国は、サマルトリアと名づけられ、文学を愛し、病人や弱きものを加護する、 世界の中立国として栄えていく事となる。

 そして、最愛の王妃ローラの名を冠されたローレシアを受け継いだ第一王子アレンは、アレフが築いた そのままをよりよく発展させ、今は武術に発達した国となった。

 やがて、勇者アレフが死に、その五年後の同じ日子供たちを見守るようにローラ王妃が亡くなった。
 だが、それ以来この三つの国は、空より舞い降りた勇者にちなみ、 ロト三国と呼ばれ、国が分かれることになってもその絆は絶える事はなく、兄弟国として 友好状態が今も続いている。
 アレフとその子等は、決してその土地の風土を侵すことなく国へと吸収したゆえ、三国は兄弟国でありながら、 全く違う文化と風習を持ち備え、発展した。
 だが、三国は、天上からやってきたと伝えられる勇者ロトと、その血を引くアレフの偉業を決して忘れる事はない。
 その証としてか、ローラ姫のみを生涯愛し続けたアレフにちなみ、王族は国王であれど側室を持つ事はない。
 そして、いつの頃からだろうか。その血に連なる者はその二人の勇者に敬意を表し、ロトの勇者が旅立った16の年から、竜の勇者が 光を取り戻した26までの10年にかかるロト王家の者を『精霊のこども』と呼ぶようになった。

 アレフが死んだ、ちょうど100年目の日。ある一人の王子が、ローレシアに誕生した。
 その王子の旅立ちから、この物語が始まる…


   序章です。設定の塊と言うか、なんというか、ぎこちなくて申しわけありません。ここから精霊のこどもたち が始まります。
 なおアレフはわたしの小説闇に葬られた或る1つの論文 の設定に準じております。ご了承くださいませ。あんまり出張っては来ないと思うんですけれど。


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