精霊のこどもたち
 〜 自分らしく 〜




 三人はまた、洞窟へと舞い戻った。入ったとたん、レオンは胸に手を当て、きょろきょろと周りを見回す。
「…どうしましたの?」
 あまりにもその様子が怪しく、リィンはいぶかしげに聞く。
「さっき入ったときも思ったけどよ…やっぱり気のせいじゃないな…なぁなんかしらねぇけど…胸が騒がないか?」
「…どうしたの具合が悪いの?」
 ルーンの言葉に、レオンは首を振る。
「違う、なんか…行かないと…そんな気がするんだ…俺。なんだろう…」
「なんですの?おかしいですわね。」
 リィンの言葉に、レオンが頷く。
「おう、なんかおかしいんだ。最初にこの洞窟に入ったときも…なんか胸がざわめくつーか… そんな感じがしたんだ、俺。紋章のことかと思ったんだけどな…」
「瘴気が溢れているからではなくて?」
 リィンの言葉にレオンは首をかしげた。
「かもな。まぁ、とりあえずとっととロンダルキアへ行こうぜ。」


 現界から魔界へとくぐる洞窟。ただよう瘴気。それはまるで魔族の臓物の中の様に不気味で、難攻不落な 場所だった。
 まるで、細菌のようにいる、凶悪なモンスターたち。

 レオンがキラーマシンの足へ、力いっぱいロトの剣を叩き込む。キィンと、高い音が響く。
「…硬ってぇ…」
「レオンどいてくださいませ!!」
 リィンの言葉と同時に、爆発音が響き、砂煙がもうもうとあがる。だが、キラーマシンは意に介した様子すらなく、 リィンに向かって矢を放つ。その矢をすかさずルーンが叩き落した。
「呪文が効きませんわ?!」
「大丈夫、攻撃はきっと効いてる。リィンはフォローして!!」
 ルーンはそういうと、キラーマシンに向かって駆け出す。不思議な機械音とともに放たれた矢を打ち落とす。 そしてキラーマシンの刃を飛んで避け、そのまま飛び越した。
 ふわりとルーンのマントが一瞬キラーマシンの視界をさえぎる。その隙を逃さず、レオンは力いっぱいキラーマシンの腕を叩き 切った。それと同時にルーンがキラーマシンの顔に柄を叩き込み…キラーマシンは沈黙した。
「…これで何匹目かしらね?初めて見るモンスターは…」
「さぁな。まぁ、剣に血がつかないのはいいことだけどな。」
「皆無事でよかったねー。」


 空間を捻じ曲げる、永久回廊。

 ”リィンディア・ルミナ・ロト・ムーンブルク”
「…やっぱり…」
 先ほど石で書いた目印が、そこにあった。間違いなくリィンのサインだ。
「どうなってるんだ?ぐるっと一周してんのか?でも、カーブしてねえよな?」
「わずかに曲がっているという可能性もありましてよ?」
「ううん、きっとこれ、空間自体が曲がってるんだよ。ほら、聞いた事ない?勇者ロトが入った洞窟の話。その一つに そんなのが在った気がするよ。」
 ルーンの言葉に、レオンが手を叩く。
「そういや聞いたことがあんな。…まじだったのかよ。」
「そうなると一つ一つ探っていくしかありませんわね。」
 リィンはそう言って次の通路へと向かい、そこに自分の名前を書いた。


 暴力的なまでに広い迷宮。

「…ちょっと待って…っと、うん、書き終わったよー」
 今まで歩いた場所のマップを書き終え、ルーンは自慢げに見せた。
「…これでやっとこのフロアの左側を終えましたの?」
「そうだな、じゃあ次はこっちだ。」
 今だ未記入の場所を指差し、ルーンは先頭を切って歩く。
 敵を蹴散らし、階段を登り…ついた先は、何度目かの行き止まりだった。
「…どうして洞窟って、こう無駄な場所が多いのでしょうね」
「そりゃ、迷わすためだろう?」
「もともと自然に出来た穴倉を改造したのかもしれないねー。あれ?」
 ルーンが奇妙な声を出した。そして駆けて行く。…ちょうど壁の影になっているところだった。
「どうしましたの?ルーン?」
「宝箱があるよー。」
 ルーンの声に、レオンがかける。そこには確かに大きなサイズの宝箱。
「なんでこんなところにあるんだろうな。…開けてみるか。」
「気をつけてくださいましね。海底洞窟では罠の宝箱がありましたでしょう。」
 リィンの言葉に頷き、レオンは二人を下がらせ、ゆっくりと宝箱を開けた。
「……」
「………」
「…………」
 そこに入っていたのは、蒼く光る鎧。胸には高らかにラーミアの紋章が刻まれ、鈍く光る。
 それはかつてロトがルビスから与えられ、アレフがモンスターが守る樹の根元から掘り出した、伝説の鎧。



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