吟遊詩人ルバートの悲劇





「…ここは、どこだ…?」
 吟遊詩人ルバートは、歌の題材にするために虹色の薔薇があるという森にいる、はずだった。 森の中にあった、深い穴に落ちるまでは。

 だが今いるのは、それとは似ても似付かぬ平原。
 ルバートも旅をして長い。齢12の時から、吟遊詩人として旅をしてきたのだ。だが、見える 風景はおろか、周りにある草、遠くに見える木…どれも心当たりがないものばかりだった。
「とにかく、人を探そう。」
 手にしっくりとなじむ竪琴。これさえあれば、ルバートはどこでだって生きていけるのだから。


 ついたのは、神殿を中心とした小さな町だった。
「…なんですって?」
 町民が言った聞き覚えのない町の名前に、ぽかんとするルバート。町の人間はそれこそあっけにとられ、聞き返す。
「そ、あんた知らないの?どっから来たの?…ふぅん、知らないねぇ。よっぽど田舎なんだね。」
 ルバートの言った地名に笑ってそう返す町民。
「そんな…では…。」
 誰もが知っている大都市の名前をいくつもあげる。だが、町民は全て顔を横に振って笑った。
「悪いがどれも知らないね。でもま、ようはあんた、迷子なんだろ?そうだ。神殿の神官の所へ行きなよ。 神官様は物知りだからさ、きっと色々教えてくれるよ。はい、これ餞別。」
 そう言って、小銭を握らせる。ルバートは困惑しながらも受け取った。
「ありがとうございます…。」
 受け取った銀貨は、見たこともないお金だった。


「ふむふむ…なるほど…。」
 神殿に入り、ルバートは神官に促されるままに、自分の事をひたすら話した。
「神官様は物知りだと聞きました。」
「ふむ、確かに私は、この世界の主要都市くらいは全部わかっているよ。しかし、君の言った地名は、どこも聞き覚えがない。 それと、君が持ってるお金もね。見覚えがない。この世界とは異なる世界があると、聞いた事がある。 おそらく君は、何がしかの事情で、別の世界からこちらに来てしまったのでは?」
「そんな…。私はどうすれば…いいのでしょうか…?どうしたら帰れるのでしょうか?」
 ルバートは真っ青になった。自分はただ、歌の材料を探しに、森に来ただけなのだ。帰りたかった、どうしても。

 絶望したルバートに、神官が言葉をかけた。
「これは聞いた話だが、他の世界につながる、大きな穴があるらしい。」
「なんですって!そこに行けば、帰れるのでしょうか!!」
 ルバートは顔をあげる。神官は難しい顔をした。
「可能性はあるね。…だが、そこに行くには特別な者…世界を救う特別な人間でなければ、 たどり着くことはできない。」
「…そんな……私は、私は帰れないのですか…?」
 真っ青になるルバートに、神官は優しく声をかける。
「いいや、そんなことはない。貴方がその特別な人間でない事は確かだが、その仲間になれる可能性はある。 そうすれば、きっとたどり着けるはずだ。諦めてはいけないよ。」
「ありがとうございます!!」
 ルバートは立ち上がって、神官にお礼を言った。
「いや、礼には及ばないよ。それよりルバート君、君の事を話してくれないか?君がいままでしてきたこと、君が 一体何が出来るかを。特にどうやって生きてきたか。戦ったことはあるのか。 武器はどんなものが得意なのか。これはとても大切な事だからね。」
「はい!」
 そうしてルバートは吟遊詩人についての腕と、今までの旅の経験を語り始めた。


「ふむ…なるほど…。すると…むずかしいな…。」
 神官は難しい表情をしている。ルバートは不安そうな顔をした。
「あの…私は何か、まずい事を言いましたか?」
「いや…素晴らしいと思う。人に歌を歌い、喜びを与え、笑顔を望む。誰かへ笑いを伝え、感動が、なによりの 君への報酬だと…。」
「はい!他には何もできませんが、それだけは私の自慢です。」
 ルバートは自信を持って行った。どんなに落ち込んだ人間も、微笑ませる事が、自分の使命だ。
「悪くはない、悪くはないんだが…。この世界にね、戦う人間を9種類の人間に当てはめる。種類と言うか… 属性…いや、職業と言うべきだね。経験をつんでいくと、色々な事が学べたりするその 系統だと考えて欲しい。」
「はい。」
 神官は苦い顔をして言った。
「君は、戦闘では役立つことはないが、人々に笑顔と幸福をもたらす。この、属性…君は…………遊び人だ。」
「は?」

 あっけにとられたルバートに、神官は解説をしていく。
「遊び人はなんの能力もない。経験を得るにしたがって、遊びを覚え、人を笑わし、戦闘の邪魔をする職業。… 魔王と戦う勇者には、…あまり望まれない能力だ。」
「なんですか!それは!!わ、私は吟遊詩人です!!」
「うむ。だがここでは…遊び人ということになってしまうんだ…。君が癒しの術を使えれば、魔力があれば、剣が使えれば、 武術があれば、商才があれば…いっそのこと、盗み癖があれば…まだ何かが違ったのだが…。」
「そ、そんなぁ…。」
 誉れ高い吟遊詩人が、役立たずだと宣告されルバートはほとんど泣きそうになる。神官は慰めの言葉をかける。
「だが、勇者が君を仲間に選んでくれれば、旅に出られる事は変わりない。勇者が旅立つ国、アリアハンに 行きなさい。そして勇者に仲間にしてもらえるよう、頑張るんだ。」
「…は、はい…。」


 そして彼は、アリアハンに向かう方法を教えてもらい、ランシールの出口へと立つ。手には、しっくりと なじんだ竪琴。


 ルバート:遊び人 レベル1
 彼の冒険は、今はじまったばかりだ。



 なんとなく思い付いた小説。終わらないお伽話をとは違う世界ですので、ご注意を。職業の 解釈、おわおと(略してみた)とは違いますよー。
 元ネタと言うか、思い付いたきっかけは「FF5の職業ってたくさんあるけど、それをドラクエ3の職業に 当てはめたらどうなるのかなー」+α から生まれました。ドラクエにも吟遊詩人、いるんですけどね。多分、分類から言えばこうなる…のかな?
 …思ったんですが、マーニャの職業「踊り子」って3に当てはめたら遊び人…魔法使いから 転職した遊び人って感じ…?いや、4には戦う遊び人「パノン」がいるけれども。


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