年の頃は16ほど。短い黒い髪に黒い瞳。新しい旅装束と銅の剣。顔はすこし目つきがきついが、ハンサムと言えるだろう。 その後ろにいるのはそれと同じか、やや年下の女の子。赤い目に青い髪を腰までたらし、女性用の旅装束を 身に着けている。装備はこん棒だが、それににつかわしくない優雅な顔立ちとしぐさだった。だが、 その優雅で愛らしい顔を台無しにしているのは、おどおどとした表情だった。 そんな二人が城から出てくるのを見て、思わず声をかける。ついに、探し求めた勇者に 会えたのだが、浮かぶ笑みはどこか冷ややかだった。 「貴方がここの王様から全面援助を受けているって言う勇者?」 そう声をかけてきたのは、緑の目、背中の半ばまでの赤毛の髪を、首の後ろで無造作に結んでいる魔法使いだった。 ルウトより少し上だろうか。きちんとした凹凸があるその体系も、表情もどこか大人びている艶のある女性だ。 ルウトは後ろにいたクレアをかばいながら言い返す。王様との対面で疲れきっているクレアをこれ以上傷つける のは嫌だった。 「なんでそう思うんだ?」 「貴方も、その後ろにいる冒険者用の服を着た彼女も、まだ若くて装備は新しいわ。兵士ではなく、 駆け出しの冒険者に間違いないわ。たとえ市井に開かれている城だと言っても、駆け出しの 冒険者が城に訪れる用事なんてないはず。ならこの町で噂の、今日旅立つという勇者オルデガの子供だと認識 するのはたやすいと思うけれど?」 自分のことを言われ、クレアが肩を震わせる。腰まである美しい青い髪が、ふわりと揺れた。 それをなだめるように、ルウトはクレアの肩に手を置いて、魔法使いに言う。 「援助ってほどでもないぜ。ちょっと資金をくれて、城の物ならなんでも持って行って良いって許可もらっただけだ。」 魔法使いはじろじろとルウトを見て、言う。 「ふぅん。……まぁいいわ。私を連れて行って。魔王討伐に行くんでしょう?」 「そっちも魔王討伐がしたいのか?物好きだな。オレとしては魔王討伐に出るが、世界の平和はどうでもいい。 ただ、クレアを守り抜きたいだけだ。……そんな偽者だけどいいのか?」 その言葉を聞いて、魔法使いは少し意地悪く笑う。 「私には勇者という通行証が必要なのよ。それがあれば偽者だろうとなんだろうとかまやしないわ。どんなに 弱くても私の後ろに着いてきさえすれば、本物の勇者にしてあげるわ。」 「……クレア、こう言ってるけどどうだ?」 クレアは自分の後ろから縮こまってその会話を聞いていたが、頷いた。 「……あの、至らない者ですが、よろしくお願いします。」 「そういうことだ。よろしく。オレはルウトでこっちはクレア。16だ。あんたは?」 ルウトの言葉に、魔法使いは薄く笑う。 「私はエリン。呼び捨てで読んで頂戴。17歳で魔法使いよ。行きましょう。」 そう言うと、エリンはくるりと城へ向かって歩き始めた。 「ちょ、ちょっと待てよ、どこに行くんだ?」 ルウトが追いかけると、エリンは振り向く。 「城の物は持っていってもいいんでしょう?だから宝物庫へ行くのよ。」 「確かに持っていってもいいだろうが、鍵がないぞ?」 ルウトの言葉に、エリンはにっこりと笑う。 「問題ないわ。私のレベルは40あるもの。開錠の呪文は心得ているわ。」 そういうとすたすたと歩き始める。 ルウトとクレアは仰天した。まだ自分とそこそこ変わらない年頃の女性が、すでにレベル40だとは、 一体どこから来たのだろうか。 ルウトはエリンを追いかけながら思わず尋ねる。 「あんた、どっから来たんだ?」 エリンは立ち止まる。追いかけてきたルウトとクレアに、無表情のまま答えた。 「……地獄からよ。」 |
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