洞窟の中は重苦しく、じめじめしていた。それを差し置いても、人間であるならば洞窟が心地よいという 者はそういないはずだ。だがしかし。 「……なんかむしろこっちの方がいいと思うのはなんでだろうな……。」 「そうとうひどいんだろうね。僕のところはあそこまでじゃなかったもん。」 男達がしみじみとそう思うほど、サマンオサは重苦しく、じめじめした空気に満ちていた。実際の空気ではないのだが。 おそらく、国王の圧政は相当なものなのだろうと、一泊しただけのルウトたちにも良く分かった。 情報収集しようにも、宿の女将でさえ早く出て行ったほうがいいという空気を出し、結局予定通り、四人はラーの 鏡とやらをとりに、南の洞窟へと足を運んでいた。クレアは慎重に歩を進めながらおどおど言う。 「……でも、洞窟って暗いですけど……ここは特別暗い気がします。」 「天然の洞窟は初めてだしね。気をつけないと……。あ、ようやく階段よ。」 エリンの言葉に、四人はホッとした。その天然の洞窟のせいか、無駄に行き止まりなどがあり困っていたのだった。 そうして降りた四人の目の前には、また四人を唖然とさせる光景が広がっていた。 「……もしかして、ここにもカンダタがいて、ここは宝物庫ってオチじゃねぇよな……?」 広い空間に、宝箱が並べられている。その光景は明らかに『天然の洞窟』にはありえない光景だった。 「いえ、それにしては、おかしな並べ方だわ。おそらく罠でしょうね。ラーの鏡を取りにきた人間がこの宝箱を 開けながらたどると、奥にはミミックでもいるのではないかしら? ラーの鏡はおそらく別の場所にあると思うわ。……もしそうだとすれば、あまり頭の良い 敵ではなさそうね。」 エリンがふぅ、と小さくため息をつく。 「どうしてそう思うのさ?エリンねーちゃん。」 「私は罠に関しては自信があるもの。もし私ならもっと多くの宝箱を用意して、その中に7:3の割合で モンスターと宝を仕込ませるわ。戦闘で魔力と体力を消耗させることができるもの。だからもしこの中に ラーの鏡があるならやっかいね。」 「で、でも、エリン。あの、もしその宝を隠すなら、海にでも投げた方がずっといいと思うんです。でもこうやって 罠をしかけてるっていうことは……。」 「触れないってことなのかな?魔を退けてくれるのかもしれないね。」 クレアの言葉に、カザヤは嬉しそうに言った。ルウトも頷く。 「そう考えると親切だな。わざわざこの洞窟に何かあるって教えてくれるってことか。」 「ただ、逆に言えば、そんな頭の悪い奴がリーダーだと考えると、相当戦闘ができるやつだと考えるべきね。」 「そうだな。……とりあえずこの宝箱を無視して洞窟を歩くぞ。隠し通路がある可能性があるからな。」 ルウトの言葉に頷き、四人は洞窟を歩き始めた。 それはほどなくして見つかった落とし穴。そしてその下にはきらりと輝く何かがあった。四人は慎重に 穴を降りる。それは古びた一面の鏡だった。 「これか?なんか普通の鏡に見えるけどな?」 ルウトがそう言うが、カザヤは感心したようにその鏡に手を伸ばす。 「うわー、すごいや。これ。人が作った奴じゃないね。」 「カザヤは分かるの?」 クレアの言葉に、カザヤは少し考える。 「これがラーの鏡かはわからない。でもただの鏡じゃない事はわかるよ。」 エリンはカザヤが持っている鏡に、わざと姿を映す。映ったエリンもいつもと変わらない。 「……まぁ、これが真実の姿、なのかしら?」 「うん、エリンねーちゃんの綺麗な姿が映ってるしね。」 にっこりと笑うカザヤに、エリンはつん、と指で押した。 「馬鹿なこと言っていないで。行くわよ、サマンオサの王様のところへね。」 |
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