〜 4.ロマリア 〜


「……すげぇ……。」
 ルウトがそういう横で、クレアもぽかんと口を開ける。
 アリアハンの町もそこそこ都会だと思っていた。そしてそれは事実のはずだ。レーベなどに比べたら花の都と いえるだろう。
 だが、このロマリアの町に比べたら規模が違う。城下町の入り口の門には見張りが立ち、馬車が頻繁に行き来して いるのだ。
「ロマリアは、歴史ある町にしていまや鎖国していたアリアハンに変わり、世界の中心都市になっているのよ。」
「……エリンはここに来たことがあるのですか?」
 クレアの言葉に、エリンは苦笑する。
「ないわ。聞きかじりよ。とりあえず宿を取りましょう。」
 エリンの先導で、二人は城下町への門をくぐろうとしたときだった。
「そこの三人。こちらへ来なさい。」
 見張りの兵士が声をかけてきた。クレアが無実の人間でもしょっ引かれるだろうと思えるほどびくっとする。
「あ、あの、何か……」
「クレア……。」
 ルウトは少し呆れながら、クレアの肩を抱き安心させると、兵士に警戒しながら近づく。
「クレアは、ちょっと人見知り激しいが、俺達は別に怪しい人間じゃないぜ?」
「そうではない。お前達はあの祠から来たと報告が来たのだが。そうか?」
「許可はもらってきた以上問題ないはずだけれど?」
 エリンの言葉に、兵士は背筋を正した。
「かのアリアハンの勇者が来国された際には、是非国王が一度お会いしたいとおっしゃられておりまして……。」
 言葉は丁寧だが、おそらく強制だ。もちろん断ってすぐに国を出てもいいのだろうが、さすがにそれは色々と 厳しい。
「……わかった。俺が行く。クレアとエリンは宿を取って待っていてくれ。」
 ため息混じりに言うと、クレアがルウトの腕につかまって首を振る。
「ま、待って!私も、私も行く。」
「クレア……いいのか?」
「だってルウトだけに行かせるなんて……。」
 ほとんど涙目になりながらも、クレアはそう言って首を振る。
「わかった。……エリンは、どうする?」
「……私は宿を取って待っておくわ。」
 ふう、と息を吐いて言うエリンに、ルウトは神妙な顔をして礼を言った。
「悪い。」
「別にかまわないわ。……行くんでしょう?途中の道に良さそうな宿屋があれば、そこで別れるわ。」
 エリンに促され、兵士が頷くと、四人は黙々と城への大通りを歩いていった。


 宿の食堂で待っていたエリンに、ルウトは開口一番こう言った。
「……悪い、エリン。」
「……待たせたからって理由ではなさそうね。」
 座るようにしぐさでエリンが促すと、ルウトとクレアは向側に座る。
「ごめんなさい、エリン……。」
「とりあえず謝る前に説明してくれるかしら。」
 クレアの詫びの言葉をあっさりと交わして、エリンは話を促した。
「その、あのな。話の展開で、ロマリア王から盗賊退治を依頼されちまったんだ。」
「盗賊退治?」
「……そうだ。勇者の子供だからといって、勇者だとは限らない。王冠を盗んだカンダタ盗賊団を倒し、王冠を 取り戻した暁には勇者と認めようって言われて……まぁ、つい……。」
 気まずそうにしているルウトに、エリンが言葉を継ぐ。
「引き受けたのね。」
「ごめんなさい、寄り道させるようなことを引き受けてしまって……。」
 クレアの言葉に、エリンは表情を変えずに答える。
「まぁいいわ。アリアハン大陸では私が突き進んだせいで、貴方達のレベルはあがっていないものね。いくら後ろを 着いて行くだけだと言っても、不意打ちで死んでしまう可能性もあるわ。このあたりでレベルを上げておくのは マイナスにはならないはずよ。」
「ありがとう、エリン。」
「悪いな。助かる。あ、なんか城のものは持っていってもいいらしいぞ。」
 口々に礼を言われ、エリンは少し口角を上げてため息を着いて見せた。
「そう、じゃああとで宝物庫に行きましょう。それで?その盗賊団はどこにいるかは分かるの?」
「ああ、シャンパーニの塔とか行って……エリンは色々詳しいのに、知らないんだな。」
 途中でルウトがそう話題を帰ると、エリンは少し寂しそうな顔をした。
「私が詳しいのは魔王退治に必要になりそうな道具や、重要そうなアイテムや伝承だけ。それも大分古いわ。 人に関する事はほとんど知らないの。」
「……じゃあ、なんでアリアハンに来たんだ?……親父の事は知ってたんじゃないのか?」
 ルウトがそういい、クレアは少し切なげにルウトを見上げるが、エリンはそれに気づかず答える。
「勇者オルデガの事は、一応ね。ほんの少しだけ、そういう人がいたという事は目星をつけていたみたいだから。 行ったのは賭けみたいなものだったわ。」
「そうか……そうか。」
 ルウトがふーーと長いため息をついて、複雑そうにへたり込んだ。


戻る 目次へ トップへ HPトップへ 次へ
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送