どうやら洞窟で見つけた青い盾は伝説の武具の一つで「勇者の盾」というらしかった。 「なんだか凄く機嫌がいいね、クレアねーちゃん。」 その盾を磨きながら微笑んでいるクレアに、カザヤは嬉しそうに尋ねた。 「ええ……いつかこれをお父さんに渡せたらって……これを見てくれます?」 クレアが取り出したのは、ぼろぼろの兜だった。あちこちに穴が開いているが、おそらく 魔力がある中央のエンブレムはほのかな光を放っていた。 「男の人の兜だよね、随分ぼろぼろだね。」 「ええ……エリンたちと離れている間に、ムオルと言う村に行って……かつてそこでお父さ、父が滞在していた そうなんです。私が娘だと分かると、形見としてくれました。……どうしても母に渡せなくてどうしようかと 思っていたんですけれど……これと一緒に渡せたら良いなって。」 「そっか、そうなったらいいね。きっと喜ぶよ。」 にぱっとカザヤが笑うと、本当にそんな気がするから不思議だった。 「ありがとう、カザヤ。」 「ううん、あのね、クレアねーちゃん。……その、ごめんね、ずっと黙ってて。オルデガさんが見えないって……。 ずっとちゃんと謝りたかったんだ。」 申し訳なさそうに言うカザヤに、クレアは首を振る。 「いいんです、そんな。カザヤが私のためを思ってしてくれたことだってよく分かってますから。」 「できれば私にも謝って欲しいのだけれどね?カザヤ?もう、クレアといいルウトといい、カザヤまで私に 隠し事するのだもの。」 すこしいたずらめいた声で、エリンが笑いながら声をかける。 「あ、エリンねーちゃんもごめんね?でも人は誰だって隠し事あるもんだよ、きっと。」 「まぁいいのだけれど。それはともかく、私も謝らなければならないわ。この先のことなのだけれど、はやり ゾーマの城に行く明確な手段がわからないのよ。とりあえずこれからドムドーラへ向かいましょう。 オルデガさんがいるかもしれないわ。」 「いえ、そんな……いつもエリンにはお世話になってばかりで……。」 クレアは恐縮しながら首を振る。カザヤは地図を思い起こしながらエリンに問いかける。 「なんでドムドーラなの?たしか他にも街はあったよね?」 「そちらの方に精霊が住んでいるという情報があるの。ドムドーラはその通り道なのよ。精霊はかつて勇者ロト伝説にも 深く関わったそうだから、何か情報が手に入ればいいのだけれど。」 「精霊さんですか……以前エルフの方にお会いしましたけれど、とても人がお嫌いのようでしたが……大丈夫でしょうか?」 心配そうにいうクレアの言葉に、エリンは複雑な表情を浮かべるだけだった。 ドムドーラは牧歌的な町だった。それなりに都会ではあるが、少し足を外に向けるとそこには牧場が広がっている。 「静かですね、ルウト。」 「そうだな。」 二人はただ、その空気を楽しみながら歩いた。澄んだ空気が気持ちよかった。 「……なぁ、クレア。もしかして、何か悩んでいないか?」 ルウトの唐突な言葉に、クレアは一瞬赤い目を丸く見開く。そして寂しげに笑った。 「わかってはいるんです。……でももう少しだけそっとしておいてくれますか?」 「クレアがそう言うんなら。でも困ったことがあったらなんでもオレに言えよ?」 「……では、ルウト。貴方も何か、悩んでいませんか?」 そう切り返され、ルウトは一瞬黙り込んだ。 「私も、ルウトが心配です。ずっと何か悩んでいたでしょう?」 優しく言われ、ルウトは笑う。 「クレアには敵わないな。でもま、オレの場合は答えが出てるんだ。多分最善の答えが。それでもまだ少し 踏ん切りがつかないだけだ。大丈夫だよ、オレは。」 そうしてルウトは立ち止まる。その横で同じく立ち止まったクレアのあごをくいっと持ち上げ、ゆっくりと その唇に近づいていく。 ”ひひーーーーーーーーん” 突然、悲壮とも言える馬の声が響き、クレアはぱっと身を翻し、声のした方へ走っていった。ルウトは 少し心で舌打ちをしながら、その後を追いかける。 そこは牧場だった。馬の足からは血が流れている。 「これ、刃物の傷だぞ?誰かがいたずらでしたのか?」 「かわいそう……足は馬の命なのに……。暴れないで、すぐ治して上げるから……。」 クレアが暴れる馬にそっと呼びかける。やがてゆっくりと興奮が収まった馬に、クレアは回復魔法をかけた。 「……違う、これ、なんだ?」 馬の血をたどっていくと、その牧場の茂みにきらりと光る刃物が落ちていた。どうやら刀身のようだった。 「なんだか……ぽっきりと折れていて可愛そうですね。」 横からクレアがハンカチを出し、慎重にそれを持ち上げる。 「それをみつけたのね。」 見慣れぬ声に顔を上げるとそこにはエルフの娘が立っていた。 「貴方は……?」 「なら教えてあげるわ。マイラの村のもっともルビス様の守護篤きところから南に十歩のところ。 そこに笛が埋まっているのよ。」 クレアの質問にも答えず、エルフの娘は一方的に言い放つ。 「それはどういう意味だ?」 「救って差し上げてね。」 ルウトの言葉を無視して、エルフの娘はそのままその場を立ち去る。追いかけようとしたルウトだが、すぐに その姿は緑に消えていった。 |
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