「えい!!」 最後にクレアがこうもり男の頭に止めを刺して息をつく。 しょっぱなにマホトーンをされ、エリンの呪文が止められてしまったのだ。なんとか勝利したものの、 レベル上げをしておいたのは幸福だったと言える。 「ふがいないわ、ごめんなさい。」 「謝らないでください、エリン。私たち、……仲間、でしょう?」 クレアが上目遣いにそういうと、エリンは微笑んだ。申し訳ないと 言うエリンだが、実のところたとえ魔法使いでもアリアハンの宝物庫で手に入れた ルーンスタッフをもったエリンが、ダントツに強いのだが。 「いや、俺も油断した。これが役にたって何よりだ。」 ロマリアで手に入れたふうじんの盾を振り回し、ルウトはにこっと笑う。 「カンダタの手下に魔法使い崩れがいないといいのだけれど。これは計画からもう少しレベル上げの期間を 考慮するべきね。」 エリンはぶつぶつといいながら階段を上がっていく。 「悪いな。エリン。大丈夫か?」 「平気よ。行きましょう。そろそろ頂上に着くわ。」 エリンは目の前にあった扉に手を開けて、カギを開けると、そのままずけずけと入っていく。 「……ルウト、あの、勝手に入っても、いいのかしら……あの、魔法の玉のおうちでも思ったのですけど。」 「あっちはともかく、こっちは盗賊だからいいと思うぜ。クレアは優しいな。行こう。」 ルウトはクレアを促して、中へと急ぐ。あった階段を登ってエリンと合流すると、その向こう側の男達が仰天していた。 「お前ら、どっから来た?!」 「変な奴らだ、御頭に報告するぞ!!」 そう言って去っていく男達を追いかけて最上階へとあがると、そこにはごつい男達がいた。 一番ごつい男が、目を丸くする。 「なんだ?お前らは?女の行商か?……そこの赤毛の色っぽいねーちゃんなら俺様の相手をしてもらってもいいぜ?」 にやりと笑うカンダタに、エリンは真顔で返す。 「何?貴方がカンダタ?かまわないわよ。……戦闘的な意味でならね。」 「……俺様を捕まえに来たのか?だが俺様を捕まえる事は誰にもできん!!はっはっはっは!!」 カンダタがそう言うと、手元の綱を引いた。とたんに足元の床がぱかん、と開く。 「きゃああああああああああああああああああ!!」 「クレア!!」 ルウトがクレアに手を伸ばすが、空中で体勢を変える事も出来ずに落ちていく。そして、一階下の地面に落ちた。 ふわりとスカートを翻し、綺麗に着地したエリンが、服の埃を払う。 「怪我はない?」 「へ、平気です。」 そういいながらも、クレアは腰を抑えている。少しだけ打ったらしい。 「……オレのクレアによくも……。いくぞ!!」 ルウトが立ち上がり走り出す。 「あの、大丈夫だから……ルウト……。」 クレアがそう言って止めようとするが、ルウトはすでに階段を駆け上がっている。 「……行きましょう。」 エリンとクレアがその後を追うと、最上階の部屋はもぬけの殻だった。 「下か?」 大きく開かれた窓に、ルウトは飛び乗り、クレアに手を伸ばす。クレアはそれにつかまり一緒に飛び降りる。 「……逆に着地しづらい気もするんだけれど。」 あまりに自然な動きだったので突っ込み遅れたエリンが、それに続いた。 タイミングが良かったのか、荷物をまとめたカンダタの前に三人は着地する。 「しつこいやつらめ!!やっつけてやる!!」 おそらく先鋭の部下達がとびかかってくるが、大きな鎧を着けている盗賊より、エリンの方が数倍早い。 「じっくり相手してもらえるかしら?最強の呪文、見せてあげるわ。イオナズン!!」 巨大な爆発が塔を揺るがす。だが、 「や、やるな……だが、これで倒れるほど俺は甘くねぇ!!」 倒れた部下達の体を踏みつけ、カンダタはルウトに斧を振るう。それをまともに食らい、ルウトは吹っ飛んだ。 「ぐあぁ!!」 「ルウトを、傷、つけないで!!」 クレアが槍をカンダタに突くが、カンダタの皮膚は槍を弾く。ルウトは起き上がりながら、カンダタに悪態をつく。 「くそ、オレにとって、これっくらいかすり傷なんだよ!!」 その横からルウトが槍を投げると、それは背中に当たり、わずかな傷をつけて弾いた。 「……これくらい、かすり傷ともいわねぇぜ?」 カンダタがにやりと笑うが、エリンはいつもの冷静な表情で告げる。 「これを食らってからもそう言えるのならば、素晴らしいわね。……メラゾーマ!!」 特大の火球がカンダタを埋め尽くした。 「まいった!金の冠を返すから許してくれよ!な!な!」 あちこちこげたカンダタは、部下達と全員でルウトたちに土下座を始める。 「……どうするの?頼まれたのは貴方達だからそっちで決めて。」 「と言われてもなぁ……。こういう奴らはどうせまた繰り返すだろうしなぁ……。」 ルウトがそう言って頭を掻くと、クレアが躊躇いながらルウトに言う。 「あの、反省してるようですし……許してあげられないですか……?」 「もうこの地方で悪さをしないなら、まぁ……。」 けろっと意見を変え、ルウトがそう言うとカンダタが希望の目で頭をあげた。 「ありがてぇ!!あんたのことは忘れないよ!!じゃあな!!」 いそいそと金の冠を置き、そのままカンダタはなだれるように塔から降りていく。 「いいのかしら?」 「まぁ、返せば良いだろ。殺せとは言われてないしな。」 「そう、けど、面倒なことになりそうだから、私はまた宿で待っているわ。」 「わ、私が言ったんですから、私が行きます……。」 「いいよ、俺が許したんだからさ。クレア、二人で行こう。」 ルウトは金の冠を手に取りながら、クレアを安心させるために小さく微笑みかけた。 |
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