恋する乙女の座談会 〜世界樹のお茶会〜


マーニャ=マ、 ミネア=ミ、アリーナ=ア、シンシア=シ、ロザリー=ロ、です。ちなみにこの座談会での勇者は 「ラグ」という男勇者です。(カルアはあまり勇者っぽくないので)それではお楽しみくださいませ。

 マ「ほんっとここっていい眺めよねー。なんだか何もかも忘れられそうね」
 ミ「世界樹の葉のにおいが爽やかで、なんともいえない清らかなる気分になれますね」
 ア「高い所は好きだけど、階段で登っていくっていうのが邪道よね…」
 マ「あ、あんた幹を伝っていくつもり?むりよ!それは!」
 ロ「お茶をお入れしますね」
そういってロザリーはぽこぽこと、テーブルに乗ったみんなのティーカップにお茶を入れていく。
 ミ「ありがとうございます、ロザリーさん。お手伝いいたしましょうか?」
 ロ「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
 シ「ケーキお配りしますね」
いままでチョコレートケーキをいかに綺麗に切るかに苦心していたシンシアが、ケーキの入ったお皿をみんなに配っていく。
 ミ「あ、手伝います」
ゆっくり座っている事に落ち着かなかったか、ミネアが立ち上がり、ケーキを配るのを手伝い始めた。
 シ「ごめんなさい、遅くて。こんな高い所、初めてで枝も折れないと判っていますけど、ちょっと緊張してしまって」
 マ「気持ちはわかるわ。あたしも最初はそうだったもの」
 ア「ロザリーさん、座ったら?」
お茶を入れ終わった後でも立ったままだったロザリーに、アリーナはそう話し掛ける。
 ア「お茶を入れた人ってみんなそうなのかしら。椅子勧めるまで立ちっぱなしなのよね」
 マ「それはあんたの所の召使の話?」
 ア「ううん、クリフトよ。礼拝堂にお茶を飲みに行っても、私が座ってっていうまでずーと立ってるの。なにかの習慣なの? それとも作法?」
 ミ「いえ、それは…」
ミネアは苦笑しながらアリーナ姫にベタ惚れな神官騎士を思い起こす。あの几帳面なクリフトならば、何回2人でお茶を飲んでも、 2人がどんな関係になろうとも勧められるまで姫と同じ席にはつかないだろう。
そして全員が席に着いた。

 シ「それにしても大きな樹ですね。こんな大きな樹があるなんてびっくりしました。」
 ロ「ええ、エルフの森にもこんな大きな樹はありませんでしたもの。私はずっと高い塔に居ましたけれど、それでもこの光景は すばらしいと思いますわ」
 マ「え?でもこの樹ってエルフと天空人が管理してるんじゃない?下にエルフがいっぱい居たじゃない?」
マーニャは紅茶をすすりながらエルフ2人にそう聞いた。
 ロ「私たちエルフは飛べませんから、ここに来る事はできませんわ。誰かに連れてきてもらわない限り。」
 シ「それに私はずっとあの山奥の村に居ましたから。長生きしてるのに皆様より物を知らないかもしれませんわ」
 ア「でも、私が見たエルフは空を飛んだわよ?」
 シ「それは、見たわけではないからなんともいえませんが、キメラの翼をお使いになったのでは?」
 ア「そういえば、あのエルフ、天空城にいたわよね」
アリーナはチョコレートケーキをぱくつきながら納得した。
 ミ「そういえば…シンシアさんはずっとあの、ラグさんの故郷にいらっしゃったのですが?」
 シ「ええ、ラグが生まれてからずっとです。その前はずっとエルフの森に居ましたわ。」
 マ「昔のラグってどんなんだったの?」
 ア「マーニャたちは一番最初にラグにあったんでしょ?知らないの?」
 ミ「出会った頃のラグさんは、愛しい人たちの別れに酷く傷ついておられましたから」
 ロ「どうもすいません、ピサロ様が…」
そういってロザリーは頭を下げる。
 シ「かまいませんわ。ラグは守れたんですもの。私が決めた事ですし。そうですね、昔のラグは、今よりもっと純粋で、もろくて 、とても綺麗な水滴のような男の子でしたわ。」
ロザリーに笑いかけ、そして昔を思う目でシンシアは言った。
 マ「ラグ、強くなったものねえ。昔の弱いのが嘘みたいに。シンシアのためにね。」
マーニャはシンシアをからかうようにいう。
 ミ「姉さんてば、そういう風にからかうの好きなんだから、もう。でも、あの修行の日々も全てシンシアさんのためなんでしょうね」
 マ「なに?あんた、ラグのこと、好きだったの?」
 ミ「ち、違います!姉さんてば、シンシアさんに失礼でしょ?!」
 マ「はいはい、判ってるわよ、あんたにはずーと昔から思ってる人が居るものねー」
マーニャがそういうと、ミネアは真っ赤になって黙り込み、ぼそぼそと聞こえないような声でなにかを愚痴っている。
 シ「あの…別に私とラグは恋人というわけでは…」
 ア「何?違うの?私てっきりそうだと思ってたけど?」
 マ「そうそう、こーんな魅力的な女性が周りに居るのに見向きもしないのは、てっきり恋人が居るからだと思ってたけど?」
 ロ「え、違われるのですか?私に初めて逢った時に、ラグさんは一言『シンシアに似てる…』とおっしゃったので、てっきり…」
女性三人に聞かれ、はやりちょっと赤くなって、シンシアは困ったようにうつむいてしまった。そしてこう言った。
 シ「私は…その…エルフですから…」
 マ「でもラグだって天空人とのハーフなんだから、余り問題がないんじゃない?」
 ロ「私だって、ピサロ様とは種族が違いますわ。」
 ミ「そうですよ、シンシアさん。そのような事に負けてはいけませんわ」
 ア「種族とか、身分とかで心をごまかすのは良くないと思う」
今度は四人に畳み掛けるように言われ、シンシアは真っ赤になってあせってしまった。
 シ「そ、そもそも好きとはなんなんでしょう?私はラグが生まれたときから側にいて、とても愛しく感じています。最初は 『勇者』への愛でした。それがだんだん『ラグ』に対しての愛に変わった事は間違いないと思いますわ。けれどそれは家族 のような、母のような、姉のような、そんな想いなのか、その…恋人の想いなのか、と聞かれると…」
 マ「うーん、それは難しいわね…好きって言われると、こう、燃え盛るような、そんな感じかしら?誰にも渡したくない、 そんな想いかしら?」
 ミ「私なら、幸せになって欲しい。そう想うことが第一歩だと思うのです。」
 ア「だれよりも、側にいて安心する、そんな感じじゃないかな、とおもう」
 ロ「誰よりも、気高く、尊く、すばらしくいて欲しい。そして、ずっと側にいたい。そのような想いだと思うのです」
 マ「一緒にいて、幸せであれば、好きといえるかもしれないわね。それに、好き、に境界なんてないかもしれないわね。 お父さんにように始まる想いから、恋に発展する事もあるし、最初からこの人しかいない!と想う事もあるかもしれないわね」
 ミ「人が100人いれば、100通りの想いがある。ですからシンシアさん、自分の心のままに想えばいいのですわ」
 ア「それで障害があれば、それはすっ飛ばすべきなんだよ!なによりもその人が大切なら!」
 ロ「そうですわ、シンシアさんの命に代えてもラグさんを守りたいというその想い、それは十分尊いものなのですから。」
女性達が自らの内に秘めた思いを、語る。世界樹の葉が風にゆれた。
 シ「…判らないけれど…でも、そうかもしれません…。私は…」
 マ「いいんじゃない?わからなくて」
 シ「え?」
 ミ「無理して結論を今出す事も、ないと思いますよ。私たちがあおってしまって申し訳ないですけれど。」
 ア「本当に、好きなら、いつか自然にわかると想うよ。」
 マ「想いは、いつか堰を切ったように溢れるから、それまでしまっておいてもいいんじゃない?」
 ロ「そうですよ…私たちは、今、生きてるんですから。これから何時までだって、一緒にいられるんですから」
 シ「そうですね。いま、ラグやマーニャさん、ミネアさん、アリーナさん、そして導かれし方々のおかげで、魔物が 巣食ってた世界樹も、こんなに平和なんですものね。」

そうして平和の象徴世界樹で、この世でもっとも平和なお茶会は和やかに時はすぎていったのだった。

 
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