ゴットサイドの宿屋。
 嵐はすでにゴットサイドを包み込み、雨が、風が、雷が、人に罰を与えんかのように迫ってきていた。
 ラグ抜きで行われた今度の行動会議はあっさりと終わる。
「聞き込みは明日の朝にした方が良かろうな。」
「そうじゃな、この天候では外に人もおるまい。」
 そう言って、皆は外を見た。
「うむ…ラグさんは大丈夫でしょうか…」
 心配そうにいうトルネコに、ルーシアが確信をもって答える。
「だいじょうぶですよ、あの方は立派な勇者ですもの。それに…ディーさんは魔物ではありませんわ。 むしろ私たちに近いものを感じました。」
「…では天空人だとおっしゃるのですか?」
 ミネアの言葉にルーシアが首をかしげる。
「いえ・・・地上におりた天空人の話は余り聞きませんわ。それもあんなに小さな子が…」
 アリーナが手をぽんと打つ。
「きっと城の生活に飽きて、こっそり降りてきたんじゃないの?」
「姫、さすがにそれは…ところでマーニャさんはどうされたんですか?」
 クリフトの言葉にミネアが曖昧な笑みを向ける。
「それが姉さん、少し体調を崩しているらしくて。たいしたことはないんですけれど …明日には治りますから、そっとしてあげて下さいね。」
 その言葉をもって、今日の会議は終了になった。


(しかし何故、マーニャ殿を怖がっていたのだろうか?)
 暗い廊下を、ライアンは歩いていた。ときたま、稲妻に照らし出され闇の部分が映し出される。
 ひとつの扉の前に立った。手にもった水をこぼさぬように、ライアンはノックをする。
「マーニャ殿、体調が優れないと聞いたが…水を持ってきた。入室を許してもらえるだろうか?」
 中からいつもどおりの声が返った。
「…ミネアが大げさに言ったのね…なんともないわよ、ちょっとだるいだけ。ありがと、でもいらないわ。」
「そうか、だが、少々聞きたい事があるのだ。入室を許可してもらえるだろうか?」
 ライアンが本当にディーに心当りがないか、聞きたかった。ディーは明らかにマーニャを「嫌っている」と指差したからだ。
(いかに子供の好かれにくかろうと、名指しで呼ばれることはめったな事ではないだろう…ならば何がしかの 因縁あってしかるべきなのだが…)
「…また明日にしてくれる?あたし…」
 そこまでマーニャが言った時、ひときわ大きい稲妻が空を彩った。
 大きな雷鳴の音に隠れて、マーニャの小さな悲鳴がしたのを、ライアンは聞き逃さなかった。
「マーニャ殿!?」
 そう言って、ライアンは扉を開け、部屋へと入る。
 そこには予想しない光景が広がっていた。
 マーニャが蒲団に包まり、部屋の隅に張り付いていたのだ。


「ま、マーニャ殿?」
 あっけに取られ、ライアンはただ呆然と見ていた。
「…なに、勝手に入ってきてるのよ。」
 とっさに蒲団から出て、マーニャはライアンに向き合う。
「いや、先ほど悲鳴が聞こえたからして…その…」
 ライアンが気まずそうに、うつむく。
「雷が、苦手なのか?」
「そ、そんなんじゃないわよ!」
 鳴り響く雷に脅えながらの台詞には、まったく説得力がなかった。
「だから、早く村へ行こうといったのだな。」
 ため息をつきながら、そっとマーニャを胸へ抱いた。

「なにすん…」
 後半は悲鳴を押し殺した為に消えた。
「心臓の音を聞け。」
 鳴り響く雷。
「生きている証を聞け。」
 ライアンの胸から響く、とくんとくんと脈打つ音。マーニャは目を閉じる。
「さすれば、恐れなど、無くなろう。」
 耳を、澄ます。ただひたすら、やすらぎの音を聞くために。
 昔、父にしてもらったように。昔、妹にしたときのように。
 マーニャは眼を閉じて、生きている音を、ただゆっくりとたどった。


 胸の中で舞姫が眠りについた。
 ライアンは苦笑をして、そっとマーニャをベットへと移す。
「私が知らぬ顔を、あといくつ残しているのか…」
 そっと頬をなで、そっと部屋を出て行く。
 胸に残ったぬくもりを、忘れないように抱きながら。


 おまけ編です。ちなみに蒼夢は、雷がだいっきらいです(笑)雷が鳴ったときは部屋のベッドで 蒲団に丸まるのが一番だね!出来れば隅っこがベスト。ちなみに虫と幽霊も嫌いだ。怖いものだらけ。
 マーニャが嫌いになったのは、過去、父が研究に言ってミネアと二人きりの時に「怖くないよー」って 抱き合って寝てたせいじゃないかな、と。怖くない怖くない、って言いながら 脅えてると、ますます怖いと思います。妹が怖くなくなった後も、それが残ってるんでしょう。もっとも 大人に見られたかったバルザックの前では、そんな様子、欠片も見せなかったでしょうけど。( だから、その事知ってるのは、多分父親とミネアだけ。)あと マーニャはプロですので、踊ってる最中に雷がなっても、表面だけは平気に踊り続けます。 すっごくよく見れば、どこか違う事に気がつくでしょうけど、そこまで探求しながら見てる人は いない。
 ちなみにアリーナは平気でしょう。クリフトは怖くないけど神の怒りと考えて必死で神への教えを習いなおすはず。 ブライは多分、過去の思い出を思い返して、ノスタルジーに浸りそう。トルネコはネネが昔怖がってたなあ、 とか思って部屋で手紙を書くでしょう。ミネアはむしろ今は心地よく感じてるかも。

 まあ、ライディンは最初怖いでしょうけど、自分のところに確実に落ちてこないとわかれば、そんなに怖く 無くなると思います。それまでは…検討を祈りましょう、マーニャさん!

 それでは・・・ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!


   
戻る 目次へ トップへ
   
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送