宿屋に戻り、二人は大急ぎで世界樹の葉をすりつぶす。そして、祈る気持ちでルーンの口に 世界樹の葉を入れる。
 それをルーンは無意識に飲み込んだ。…その瞬間、顔にまで達していた呪いの「紐」がゆっくりと 薄らいで…そして完全に消えた。
「…ルーン…?」
 リィンのか細い声に答えるように、ルーンのまぶたがぴくりと動き…そしてゆっくりと目を開けた。
「…苦い…」
「お前真っ先に言うことがそれかよ!!」
「でもー、本当に苦いんだよー。お水ないー?」
 ルーンは枕元においてあった水を取り上げて、ごくごくと飲み干した。その様子を 見ながら、レオンは苦笑して聞く。
「…なんともないか?」
「…うん?」
 ルーンは身体を見渡し、両手を広げる。ベットから起き上がり、あちこち身体の具合を調べる。
「…うん、なんともないよー。…ありがとう、二人とも。」
「ほんっとうになんともないな?もう俺たちに何か隠したりしてないよな?!」
 ぽん、とレオンは肩に手を置いて聞く。
「うん、大丈夫、だと思うよ。まだ様子を見ないと判らないけど、呪い、解けたと思う。」
「そうか。」
 そう言うが早いか、レオンはルーンの頬に拳をぶつけていた。

 手加減して振るったレオンの拳は、ルーンの身体をよろめかすには十分の威力だった。
「あははー、痛いよ、レオンー」
 それでもルーンは笑ってそう言った。
「知るか。俺たちがどんな思いをしたか、思い知れ。」
「うん、ごめんねー、ありがとう、レオン。」
 そういうルーンに、レオンは手を伸ばして拳を頬に当てる。
「もうすんなよ。」
「うん。」
「次はこれだけじゃすまさねぇからな。」
「うん。」
 そう言うと、二人は微笑を交わす。ルーンはレオンの拳に拳を軽く当てた。


「リィンもごめんね?ありがとう」
 ルーンは今まで黙って二人を見ていたリィンに、そう微笑みを投げかけた。
「黙ってねーでお前もなんか言ってやれ、リィン。」
 レオンの言葉に、リィンは黙ってルーンを見続けた。…いや、ルーンが立ち上がった瞬間 から、リィンはずっとルーンを凝視していた。
「リィン?」
 ぼんやりと立ち、じっと動いているルーンをリィンは見つめている。ゆっくりと 手を伸ばし、ルーンに触れた。
「…なんとも、なくて?」
「うん、平気だよ。」
 腕に触れていた手を、肩に回す。ゆっくりと存在を確かめるように。
「……大丈夫だよ、リィン。僕はちゃんとここにいるから。」
 ゆっくりと噛み砕くようにルーンがそう言ったとたん、リィンの瞳から大粒の涙がこぼれる。それは生み出される 泡のように何度も。
「…もう、こんな想いは…嫌ですわ…」
 襟首を掴み、離さないように手元に寄せる。そして子供のようにリィンは泣いた。そんなリィンをルーンはかつてあの花園で やったように優しく背中を叩いた。
「うん、もう、大丈夫だよ?」
「…約束、して、下さいます?もう、いなくなったりしないで下さい…」
 しゃくりあげるリィンに、ルーンは優しく笑う。
「うん、約束するよ、リィン。もういなくなったりしないから。」
 ルーンはそう言って、優しく頭をなでた。リィンは涙を流してただ頷いた。

 レオンは、その二人を遠くから眺めていた。子供のように泣き喚くリィンを 見ていると、さまざまな言葉が脳裏によみがえる。
『リィンを頼む』フェオの言葉。
『リィン、守ってあげなきゃ駄目だよ。』ルーンの言葉。
『…わたくしが、強い…?……どうして、そうお思いになるの…?』リィンの言葉。
 自分のとってもリィンはいつも強く、誇り高く、自らの背中を任せられる戦士。今でも思う。その 評価は間違ってなどないと。
 けれど、人間はそれだけではない。のんびりとしたルーンが怒って見せたように。芯の強いフェオが、 ムーンブルクから逃げ出したように。リィンにも弱いところがあるのは当然で。ただ、それを見ようとしなかった。 …それがおそらく自分の弱さなのだろうとレオンは思って苦笑した。
 そしてその弱さを包み込むルーンの強さを、レオンはじっと見守っていた。


   呪い復活編終了ー。ハーゴンの過去も終了ー。一気にネタばらししてしまいましたが、皆様大丈夫でしょうか(笑) ついでに100P達成しました。いえーい。
 なんからぶらぶモードに入ってますけど、個人的にはレオンとルーンの友情がノリノリで書かせていただいた部分です。 いいなぁ、男と男の友情って…

 さて、これから一気に佳境に向かいます。どうぞよろしく…


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