さて、ローレシアの勇者王と名高いレオンクルス・アレフ・ロト・ローレシアは、かつてルプガナで手に入れた 船を、アレフガルド大陸まで滑るように動かしている最中だった。 稲妻の剣で弱いモンスターを一気に蹴散らし、嵐のような勢いで突き進む様は、伝説となって残りそうなほど、すさまじい勢い だった。 そして、大陸についた後は、それこそ破竹の勢いで突き進み、脅威のスピードでかの因縁の竜王の城へとたどり着いた。 正直なところ、レオンは深い事はなにも考えていなかった。サマルトリアからの伝書鳩に書かれた『 サマルトリア王女、竜王に窓よりさらわれたと情報あり』という文字を見た瞬間、いてもたってもいられなかった。 どんな怖く、辛い想いをしているだろうか。そう思う気持ちが捨てられなかった。それはまるで遺伝子に刻まれた かのような恐怖感。想いの深いところ気がつくことなく、ただ言葉にならない想いを原動力として、前へ、前へ。 そうして、世界記録になりそうなほどの時間に、レオンは竜王の城へとたどり着いた。 「竜王ーーーーーー!!今から行くぞーーーーーー!!邪魔するやつは、ぶっ飛ばすからな!!!!」 最初に、かつての手助けの義理を通すために、そう叫んだ。そして稲妻の剣を握り締め、一気に地下まで走った。 勢いに任せて何度も迷いながら、ようやく竜王の孫の住まう、最下層までたどり着いた。 「…おい…?」 この二年の間に、一体何があったのだろうか。大きな改装により、そのたたずまいは大きく変化していた。 ふわりと漂う花の香り。大理石でできた壁に、バラの刺繍が縫われたカーペット。明かり台までバラをあしらってある。 何十個も並ぶ扉には、それぞれ美しい花が掘り込んである。装飾品はどれも女性好みの落ち着く雰囲気だ。 ここは竜王の城などではなく、異次元の巨大な屋敷に来てしまったのではないかと錯覚するほどだった。 「幻…か?」 そっとドアノブにふれてみると、現実的な感触が帰ってくる。慎重に開けて見れば、そこは上等で上品な客間だった。 どれほど高価なものであるかは、さすがのレオンにでもはっきりと分かる。 「…どういうことなんだ?」 剣を鞘にしまいはしたものの、柄に手を添えて慎重に歩き出すレオン。なんだか現実感がない。 「…もしかして、あの竜王の孫って…女だったのか?」 なんとなく男だと思っていたが、考えて見れば女ともとれなくもないような話し方だったように思う。魔族の性別など、 声や外見からは理解できないのだから、女だったとしてもおかしくはない。 少し頭をかく。女だとしたら…あまり手荒に扱うわけにもいかないような気がして、困惑した。 結局レオンは奥へ奥へと、進む。玉座の間に、とりあえず竜王はいるのだろう。どうあれ真意を問いただし、 姫を取り戻すのだ。そう頭を切り替えた。 明るくいごこちの良さそうな廊下を歩くことしばし。改築により廊下が増えていたせいで、何度か迷いもしたが、とにかく レオンは玉座の間へとたどり着くことができた。 広々とした玉座の間。奥にすえられた玉座は、かつて竜王の孫と出会ったときと変わらないものだった。 だが、その手前に敷かれたふわふわの絨毯が敷かれている。そして、部屋の片隅のかわいらしい小さなテーブルセット が置かれているのが、玉座の間としては場違いであった。 だが、そんなものは瑣末な事だった。レオンの体を凍りつかせたのは、そのテーブルセットで向かい合ってお茶を 飲み合っている、竜王の孫とセラフィナなのだから。 実に自然に、楽しそうにお茶を飲み、お菓子をつまんでいる姿が異常だった。何せ可憐な姫の向かいには、黒い肌をした 魔族がいるのだから。 「おや、久しいな、レオン。」 竜王の孫が顔を上げてレオンに呼びかけた。 「…レ、オン様…」 セラがなにやら泣きだしそうな表情でこちらを見る。 「しかしいったいどうしたのじゃ?わしになんぞか用か?」 のんきに言う竜王に食って掛かるように、入り口から目の前まで一気に走って怒鳴る。 「何がって…お前が姫を浚ったから、取り戻しに来たんだろ!!」 「ほぅ?」 竜王はどこか意地の悪い顔になった。妙にそれが良く似合う。 「な、なんだよ…」 「まったく人聞きの悪い。わしがセラ姫をさらっただと?おじい様ではあるまいし、そのようなこと するわけなかろうに。ちゃんと了承を得て招待したのだ。ほれ、セラ姫の手紙にも書いてあったろうに。」 「手紙…?なんの事だ?」 レオンが顔をしかめると、竜王はわざと深いため息をついた。 「まったく何も知らずに一目散にやって来たのだな。それで良く王が務まるのう…」 「竜王様…レオン様は良くやっていらっしゃいますのよ?」 「セラ姫は優しいのぅ…。まぁ、そんなわけでレオン、そなたの勘違いだ。ご苦労だったな。」 目を細めて言う竜王に、むっとするレオン。引く気にはなれず、食い下がる。 「…だが、結局は窓から勝手に抜け出したんだろう?サマルトリア王は心配してるんじゃねーの?大体なんだって 姫を無断で連れ出したりしたんだ?」 「ふむ、それはな、わしが姫を慕っておるからじゃ。」 竜王が当たり前のように言った言葉は、さらりと風に消えた。 リクエストが多かった、レオンとセラのお話です。 …といっても、最初の2ページはルーンとリィンがラブラブしているだけという…あはは。 まぁ、本編じゃちょっと報われないカップルだったので、幸せに浸ってもらいたいものです。 次回は本格的に、レオンとセラのラブストーリーです。本編で語れなかったお互いの 気持ちなどをぐぐっと語らせてみたいと思います。 |
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