初代ワタルの一番初め、緑色の龍が登場して、『勇者の玉』というのをワタルに放ちます。
その龍曰く「勇者の玉よ。真の救世主たる戦士の元へゆけ。伝説の救世主の元へ飛べ!!」
龍の正体については以前考察しましたが、さて、ではこの勇者の玉
とはなんでしょう?
さて、まずは勇者の玉の実際の行動を追ってみましょう。
最初。暗黒雲の間から、緑色の龍が登場。手には玉のような物を持っています。色は濃い赤と薄い赤が、対極図
っぽくなってます。そして
上述の台詞の言葉とともに、龍の手から逃れ(このとき、色(光?)は緑。)町に飛んで行く。
そのまま滑るように飛び、ワタルの家へ。ワタルの部屋に窓から侵入(このとき窓は閉まっている。
ちなみに光の色は白?)そして寝てるワタルの上に行くと、(このとき、色は白と赤の対極図。)そのまま
七色の光をワタルに発射し、ワタルを空中に浮かせます。そして、玉は光にとけこみ、その光はワタルの中に
入る。
勇者の玉が出てくるのは以上です。その後(蒼夢が知っている限りでは)、作品中で二度と触れられることは
ありません。(例外として、超で龍神丸の伝説をつづられた巻物には、対極図を模した円のような
物が書かれていましたが、無関係として良いと思います。)
で、この勇者の玉はなぜ出なければならなかったのか、それを考察していきたいと思います。
考察1:目印説。
創界山の危機に、迎えの龍(龍神丸)が救世主を迎えに行ったが、場所がわからない。なので「勇者を探す玉」を
放ち、勇者への目印をつける。そして次の日、ワタルを迎えに行った、という説。
考察2:勇気を出させる玉の説。
二つ目は、ただの「異世界の少年」に救世主たる勇気を与え、救世主への道を開くための「勇者にさせる玉」だったのでは
ないか、という説です。
勇者の玉があるテレビ初代と、勇者の玉が出てこないテレビ2、超、OAVシリーズ真との違いを比べてみると、第一話
に違いがあることがわかります。初代を除き、他の三つではあきらかに「ワタルが戦うことを嫌がっている」のです。弱音を
吐いていると言ってもいいでしょう。
(なお、3と小説アナザーステップ、終わりなき時の物語は除外します。理由は3は救世主として
成熟しすぎてます。アナザーステップについては「現世界に影響がある」とワタルが認識しています。終わりなき
時の物語は、幻影によって事前にワタルに対して危機が明らかにされているためです。)
具体的にその場所をと台詞を指摘しましょう。
まず、「真魔神英雄伝ワタル」。由美ちゃんと明日のデートの約束を取り付けたワタル。ワタルが寝ていると家に龍神丸登場。
「夢かな…なんか龍みたいなのが見える…」と寝ぼけた上、「ワタル、私だ。龍神丸だ」と龍神丸に
言われてなお、「龍神丸?」と疑問な声。そしてようやく「龍神丸!!でもどうして?」と気がつきます。
「魔界の者が迫ってきた。お前の力が必要だ。」と龍神丸に言われたにも関わらず「よしてよ。由美ちゃんと約束したんだよ。
明日は日曜日だしさ。ダメかな?」とごねてます。その後「約束したけど…でもヒミコたちが危ないんだ」と危機を
認識してるにも関わらず。ごねまくってます。
2。ご存知フリスビーをしているワタル。フリスビーが横にそれたことがきっかけで
ワタルは池(龍神池)に向かいます。そこで登場した龍神丸。ワタルはあきらかに龍神丸に会えたことを
喜んでいるにも関わらず、(「でもどうして?」「ドアクダーは倒したはず」などは真とほぼ同じ会話ですね)
「一緒に来てはくれぬか」という龍神丸に「え…今…お母さんに断ってきた方がいいんじゃないかな」
「由美ちゃんに待っててって言っちゃったし…」
などとごね、龍神丸に怒られてから、「わかったよ」としぶしぶOK。そして覚悟を決めて「行こう!」と決意した…はずですが。
舞台変わって創界山の聖龍伝。聖龍妃に「ドワルダーを退治して欲しいのです」と言われ、「え!?でも…ドワルダーって
強いんでしょ?ドアクダーだってあんなに苦労したんだからなー」と指をもじもじ。オババに「ドワルダーは必ず
、この創界山も征服しようとするはずじゃ」とハッパをかけられてもなお「んー…」と悩むワタル。「星界山は空の
彼方にあるんでしょ?龍神丸は飛べないし…」となおごねてみせるごねっぷり。
双方ともワタルは理由はいろいろあれど、「友人たちの危機を認識した」上で、戦うことを拒んでいます。
真ではまだ、由美ちゃんとの約束のためとも思われますが、特に2では
「ドアクダーだってあんなに苦労したんだからなー」と戦うことを恐ろしがって(面倒くさがって)います。
これが少し不思議でした。1のラストであれほど泣いて悲しんだワタル。友情を深めたワタル。「デート」「
待ってて」などの約束を守るよい子とも取れますが、友の危機ともなれば、一も二もなく飛んでいってもおかしく
ないと思われます。
さて、超。これは「記憶がない」「救世主として培ったよき心がない」という点で、初代にもっとも近い精神状態
と思われます。(また、あきらかに1に酷似させている点として、「魔界の王に仕えし龍の魂」の玉が、
暗黒から出てワタルに向かう、という「勇者の玉」を意識した映像があることを考えると、あえて同じにしたのでは
ないかと考えられます。)
さて、悪しき心を入れられてヤンキーになったワタルは、シバラク先生とヒミコにどつかれて悪しき心から解放され、
創界山に拉致されます。そして移動中に創界山の説明。「ふーん、なんだかわからないけど、大変そうだね」と
他人事。(しかしその後「挨拶しろ」と言われ素直に挨拶しているあたり、それなりにワタルの心を
持っていると推測できます。)「ワタルよ創界山の人々の心を取り戻し、アンコクダーを倒すのじゃ」といわれ、
素直に救世主の衣装を身にまとっているあたりは1に通じますが、その後ジャイアンガー復活にあたり「どうしよう、
こっちに来るよ!」と不安そう。そして「ワタルの力が伝わらないぞ」と龍神丸に言われ
「そんなこと言われたってわかんないよ!」とへっぴり腰。「これじゃやられちゃう!こんなのやだよ!」と弱音全開。
「弱音を吐くな!」の龍神丸の言葉に「だって…」と言い訳?をしようとしています。
まぁ、逆に初代の、しょっぱなからどでかいロボットに生身で「さあこい!」剣で立ち向かい、戦えと言われても
「でもいい、僕やるよ!!困ってる人がいるなら助けなくっちゃ」と言い放ち、
弱音らしき物と言えば「なにするんだよ!僕うちに帰る!!」くらい。(これも弱音と言うよりは「抵抗」ですし)
初めて乗ったロボットに対して「龍神丸は無敵の正義パワーだ!!」と言い放つ初代ワタルの方が、
どう考えてもおかしいわけですが。比較するために初代を見るには
こちらで。
さっき「初代はおかしい」と言いましたが、こうやって並べてみてみると、
明らかに初代は「異質」だと思われませんでしょうか?まぁ、裏事情を考えると
初代と超の間には9年という年月が流れており、「時代の差」とも言えるわけですが、2や真と比較しても、
初代はまったくごねもしないし、弱音も吐かない。初救世主経験としては勇敢すぎるほどです。(超
で良き心が抜かれていることを加味したとしても)
つまりそれが「勇者の玉」の効果ではないかと推測します。
神部界の「救世主」がなぜ、現世界にいるのか。裏設定や正確なところはわかりませんが、その
救世主ワタルは1であれほど泣いた
にも関わらず、真や2でごねまくり、真にいたっては「龍神丸」と名乗られても一瞬気づかれないほどです。
これは完全な仮定ですが、救世主というのは双方の世界になじむことができる、稀有な人物なのかもしれません。
神部界では救世主として生き、現世界では普通の少年として生きる。その切り替えスイッチがしっかりと動かせる
人物。だからこそ救世主として選ばれた、と考えるのは考えすぎでしょうか?そしてその切り替えスイッチの一番
最初を動かすための勇者の玉だったのではないか、と考えます。
これも結局答えの出ない考察なわけですが。こんな風に考えると楽しいのではないかな、と思った次第です。
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