(一つ、わかった。どうして二人を信じられるか。それは他でもない、マーニャさんとミネアさんだからだ。自分と同じく 敵を求め、自分の力で頑張ってらっしゃる、あの二人だからだ。)
 どうして信じられるか、の答えなんて初めから持っていたのに。最初の偽物を倒した時の、その気持ちそのままなのに。 暗い洞窟に一人でいて、気が滅入っていたらしい。その気持ちにつられてしまったようだ。
「マーニャさんとミネアさんは大丈夫かな…」
 ふと、向こうから気配を感じた。ラグは身構えた。向こうから見慣れた姉妹の姿が見える。
(本物…?偽物?…どっちだろう…)
 ラグはまたじっと観察する事にした。髪や服はぼろぼろで、細かい傷もついているようだ。 向こうもこっちに気がついた。走り寄って来る。
「ああ、探していたわ、ラグ。なぁんていうと思った?この偽物!」
 そう言って、マーニャはラグに襲い掛かってきた。
(この人達は本物だ!)
 ラグは直感でそう思った。あの邪悪に歪んだ化け物たちと違って、この二人は本当に綺麗だったから。 顔もそうだが、雰囲気なんかが本当に綺麗だったから。
 ラグはどう話し掛けようか迷いながら、マーニャの攻撃をさっとよける。
「もう、こしゃくな奴!覚悟なさいよ!」
「姉さん、待って!この人は本物だと思うわ!」
 再び襲い掛かろうとしたマーニャを、ミネアが制す。
「本当なんでしょうね?…わかったわ」
 一瞬いぶかしげな顔をしたマーニャだが、その後にこやかな顔をしてラグに話し掛けてきた。
「ごめんごめん、ラグ。いやーあんたの偽物にさんざん襲われたもんだからさー」
「いえ、僕もそうでしたから。二人の偽物に襲われました。」
「まあ、やっぱりラグもそうだったのですね!凄く心配していたのです、お怪我はありませんか?」
「僕は大丈夫です。お二人は大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。探したわよ、ラグ。でもさ、こうやって出会うと、最初にあんたに逢った時の 事を思い出すわよね。」
 マーニャの言葉にラグは、最初にミネア、マーニャに逢ったときのことを思い出す。そうだ、 あの時も二人をとても綺麗だと思った。かもし出す雰囲気がとても綺麗だと思った。
「そうですね。」
「そうよ、あの時ミネアがカジノでスロットしてたから、あたしがラグをカジノまで連れて行ってあげたのよね? 覚えてる?」
 その言葉にラグはマーニャとミネアの顔を見た。マーニャは真面目な顔だし、ミネアも落ち着いた 表情でラグを見ていた。少なくともラグにはその様に見えた。ラグは小さく笑った。
「違いますよ、マーニャさん。逆じゃないですか。カジノにいたのはマーニャさんですよ。」
 その言葉に、マーニャの緊張は一気に解けたようだ。
「もう、姉さん失礼よ!私が信用できないの?」
「信用してるけどさー、万が一って事があるでしょ?」
「いいんですよ、僕もやっぱり疑いましたから。でも、二人が無事で本当に良かった…」

 その後三人は最深部を目指しながら、離れていた時の事を語り合った。
「そうですか、やはりラグも私たちに襲われていたのですね。」
「はい、最初はどうしたのかと思いましたけれど、よく見たら余り上手く化けてなかったので。」
「そうなの?あたし達の偽物はそっくりだったわよ?ミネアがいなきゃ全然判らなかったわ。」
「本当に。ですから私は魔物だとわかっていても攻撃をためらってしまいましたわ。…姉さんは平気みたいでしたけれど」
「でも、僕の格好をした魔物に、二人が傷つけられるのは嫌ですから。そうしてくれてよかったです。 ミネアさんの気持ちも、少し嬉しいですけれど。」

 やがて三人は最深部と思われる部屋に着いた。その部屋は幾重にも石壁が張り込め、中を厳重に包んでいるようだった。
「この奥に宝があるのね!楽しみだわ。」
「姉さん…私達の目的、忘れないでね?」
「でもこれ、なんなんでしょうか…?この石壁に、なんの意味があるんでしょうか?」
「とにかく、また破っていきましょう。」
 そう言うと三人は力をあわせて壁を一枚破った。するとその先にはまた壁があった。
「何なのかしらね?これ?」
 その壁には真ん中に大きな文様と、壁の四角に小さな文様、そして壁のところどころに亀裂があった。
「これは魔法陣ですわ!じゃあ…これが古代の仕掛け…」
 確かにその文様は魔法陣に見えた。別の壁を見ていたラグがミネアに言う。
「でもこっちの傷、剣の傷ですよ?かすってるだけですけど。」
「誰かがここまで入り込んだって事かしら?なら宝はもう無いかもしれないわね。」
「けれど、もしそうならいまだ壁があるのはおかしいと思いますわ。こういう類のものは、宝を守る為にあるのですから。」
「それに偽物のこともありますしね。」
「じゃ、とりあえず進みましょう?」
 そう言ってまた壁を破り、奥へ進んだ。その先の壁は真ん中が大きく開いていて、魔法陣が完全に消えていた。
「これは…一体…」
「この傷は、多分強い一撃を加えられた跡だと思います。しかもおもいきり強く。 けれど今までのが破れていないのに、どうしてここだけ破れているのでしょう?」
「この壁って、一体なんなの?もっと奥まで進んだらわかるのかしら?」
「いっそ全部の壁を調べてみた方がいいかもしれませんね。」
 そう提案するミネアに、ラグが同意した。
「ホフマンさんのご友人の事もありますから、疑問があるなら調べて見たほうがいいかもしれませんね。」
「あたしは宝を取ってとっとと出たいけどね。いつまた偽物が現れるかと思うと落ち着かないわ。」
「大丈夫ですよ、マーニャさん。ちゃんと三人揃ってるんですから。」
 そう言いながら次の壁を破った時、その先の壁は古くひび割れていて、その上新しい傷がついていた。 そしてその傷は、ラグを驚かせた。
「この太刀傷は…これ、僕の…僕のつけた傷です!」
「なんですって!あんた、ここに来た事あるの?」
「私たちと離れている間ですか?いいえ、そんなはず無いですよね。この部屋の最初の石壁は、一人では とても壊せるものではありませんでしたわ。」
「はい、確かにここに来た事はないんです。でも間違いありません。この傷は、僕がつけた傷です。」
「どういうことなの…この魔法陣の作用なの?」
「あーわかったわよ!この際、全部調べましょ!」
 そう言うと三人は元に戻り、根気強く全ての壁を調べ始めた。

「ラグ!ミネア!ちょっときて!…このこげあと…あたしのベギラマよ、多分。…でもなんで?」
「マーニャさん、こっちにも僕の太刀傷がありました。どういうことなんでしょう?あと なんだか薄れた傷がある壁が多かったように思います。」
 二人がそう話している所へミネアがやってきた。
「文様を調べてましたわ。私はこういうことは専門外ですが、真ん中の魔法陣の文字の中に 『鏡』の文字がありましたわ。ですから予想なのですけれど… もしかしたらこの壁が、あの偽物だったのではないでしょうか?」
「そう言えば、なんか手ごたえが妙に硬かったです!」
「あたしもあの時、ベギラマを使ったわね。」
「この壁は全部、おそらくこの部屋の中央にある宝を媒体にして、時間が経てば復活するようですわ。 それが壁の四方の魔法陣ですわ。洞窟の最初の壁は多分、侵入者が一人で来られない為でしょう。 たしか真ん中の魔法陣は無かったように思いますから。そしてこの真ん中の 魔法陣は…多分侵入者の影を映し、味方に化け、攻撃してくるトラップなのではないでしょうか?」
 それにしても、とミネアが続ける。
「こんな厚い壁を直接じゃなくて、モンスターを攻撃することで壊すには、相当な迷いない意思で攻撃しなければ 真ん中の魔法陣を打ち砕く事は出来ませんわね。先ほどの壁を打ち破った人間はよほど…その相手を 信頼し、即座に偽物と気づき打ち破ったのでしょう。」
 そのミネアの台詞には説得力があった。ラグは魔物が言っていた台詞を思い出した。
「そういえば、あの魔物『我々のように古く崩れた相手だったことに感謝しろ』って言ってました。 多分さっきの壁、魔法陣にまでひび割れていて、完璧に化ける事が出来なかったんですね。」
「もしかしたらホフマンや、その友達のつけた傷に救われたのかも知れないわね。じゃ、とりあえずこんな物騒なもの、全部 壊していきましょ。」
 そう言うマーニャに従い、全ての壁を壊し、最深部にある部屋に入った。
 その部屋には台座があり、そこには美しい宝石が乗っていた。


   中途半端なところで終わってごめんなさい…予定では既に洞窟を抜けているはずだったのですが…おかしいな? ご存知だと思いますが、本来のゲームでは壁に魔法陣はありませんし、多分純粋にモンスターの仕業だと いうことになっていると思います。 私が個人的につけた設定ですので、お間違い無いようお願いします。これはどうしてモンスターが信じる 心を相手の心を利用してまで守ってたのかな?と思ってからです。だから逆に宝を守る為に モンスターを配置しました。そしてひび割れてる、割れてないの設定は「どうしてホフマンは、 戦ったらモンスターに変身するような化け物に、未だに騙されてるんだろう?」と思ったからです。 つまりラグに襲ってきたモンスターは少しひび割れてたせいで、攻撃されると化けた姿を 保っていられなかった。けど、ホフマンや、マーニャ、ミネアに襲った壁は、魔法陣の部分が健在だったのだという 事になっています。
 マーニャの質問の形態も少し変えました。真っ向から質問して、ひっかかる人もあまりいないよなーと思ったので。
 この次の話ではもう一つ、オリジナル設定が出て来る予定です。たいしたものじゃありませんが。 うまく納得させられたら拍手お願いします(笑)それでは次回もよろしくお願いいたします。

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