「だけど、どうしてトルネコさんは、旅に出られたんでしょうね?あの船でどこにいくつもりだったんでしょう? よく判らないですけど、武器の仕入れにしては、随分大掛かりじゃないですか?」
 灯台への道を進みながら、ラグは言った。結局船を出さなければ、この先どこへもいけない。 いつ回復するかわからないのを待つよりも、何か出来る事があるかもしれないならそれを実行するべきだ、 そう判断して港の男達の頼みを受けたのだ。男達は大喜びして、今度船の扱い方を教えてやる、そう言ってくれた。

「そう言えばそうね。商売するなら一箇所にとどまった方がよさそうなもんだけどね。」
「ヒルトンさんも、ずっと一箇所にとどまって、商売してたはずだしな。」
 その疑問に答えたのはミネアだった。
「世界一の武器屋になる。それがトルネコさんの夢だそうですわ。よくは知りませんが。」
「何であんたそんなこと知ってるの?」
「トルネコさんの奥様と、少し話した事がありますから。寂しそうでしたが、それ以上に誇らしく 話して下さいましたわ。」
「へえー、世界一の武器屋か…そうやって頑張るからこそ、有名になったんだろうなあ…」
 ホフマンのつぶやきに同意しながら ラグは是非、会ってみたいと思った。そのトルネコさんに。そして、聞いてみたい事があったのだ。

 灯台の前に立った。その灯台は高くそびえたち、その上の光は何故だがすこし黒く感じた。
「なにやら嫌な感じがしますわ…たしかにこの灯台の灯りは、魔物に照らされているようですわね…」
 ミネアがなにやら感じたらしい。その言葉に緊張しながら、一行は灯台の扉をくぐった。
 灯台というイメージとは裏腹に、そこはなにやら薄暗かった。そして妙に広く、寒々しかった。

「トルネコさんは、どこにいらっしゃるのでしょうか…?」
 そう言いながら、上へ昇る為の階段を探していると、暗がりの中に一つの人影を見た。
「そこにいるのは、誰です!」
 ラグは鋭い声をあげた。
「貴方達は、人間ですかー?私はここの尋ねてきた商人です。」
 少し間延びした声が、答えた。四人はその人影の元へ急いだ。
(トルネコさんだ!間違いない!)
 その人物は、戦闘に備えた格好をしていたが、あくまでも商人の 服であった。少し太っていて人のよさそうな顔をしていた。

「ああ、どうやら、本当に人間のようですね。ただの人間にしては お美しい方がいらっしゃるようですが。私は商人トルネコと申します。皆様方、 どうしてこのような場所に?」
 トルネコは、のんびりとそれでいて、よく通る声で話し掛けてきた。 ラグたちはこんな場所にいながらも、なんだか和んでしまった。
「僕はラグ、といいます。こちらはマーニャさん、ミネアさん、ホフマンさんです。 僕達は、コナンベリーの港の人たちに頼まれて、トルネコさんを助けに来たんです。 トルネコさん、お怪我はありませんか?」
「トルネコさんだっけ?あなたこそどうして、こんな場所にいるの?」
 美しい、といって機嫌を良くしたマーニャが、トルネコに問い掛けた。
「港の人たちから大体お聞きになられたでしょうが、この灯台にはなにやら魔物が住み着いていて、 それで海は荒れているのです。だから私がその原因を突き止めようと来たのですが… 以前から私を付け狙う魔物が、しつこく追ってきて…私はなさけないことに、 あせって塔から飛び降りてしまい… 足をくじいて、ここで足止めされていたところだったのです。」
 なさけなさそうにつぶやくトルネコの足を、ミネアが丁寧に見て、回復魔法をかけた。
「これで歩けるとは思いますが、しばらくは激しい運動を控えて下さいね。こういう怪我は くせになりますので。」
「ありがとうございます。助かりました。しかし…」
「トルネコさん、後の事はまかせて、コナンベリーに戻っておきなよ。」
 トルネコの言葉をさえぎって、ホフマンは言った。トルネコはホフマンに目を向けた。
その目を見て、ホフマンはあせった。何せ相手は商人の中の英雄だ。憧れの的の人間なのだ。 思っていたより人がよさそうな普通の人だったので緊張しなかったが、それでも自分の ような若輩者が言ってもいい台詞じゃなかったように思った。
「あ、あの…つまり、その…」
 口が空回りしてあせっているホフマンを、三人がフォローする。
「僕達は港の皆さんに頼まれましたから、トルネコさんを助けて、灯台をなんとかしてくれって。 港の方々が心配しているようですし、足の事もありますから、一足先に戻って 置いていただけませんか?」
「そそ、灯台のことはあたしたちにどーんと任せて頂戴。これでも腕は確かなもんよ?」
「コナンベリーの皆様は、トルネコさんのことをとても好いていらっしゃいますわ。皆さんを 早く安心させてあげて下さい。」
 口々に言う言葉をゆっくり聞き、そしてトルネコはゆっくり笑った。
「いい方々ですね。初めて会った私のことを心配してくださる。その上、魔物がはびこる 灯台を元に戻そうとしてくださる。…とてもいい若者たちですね。私は嬉しいです。 貴方達なら、信頼できそうです。」
 笑いながらトルネコはそう言った。その笑顔を見て、混乱していた ホフマンは落ち着いた。そして笑った。
この人を緊張させない、ゆったりとした態度こそが、トルネコを大きくした要因なのではないだろうか、 ホフマンはそう思った。
「ではお任せしましょう。私が足をくじいて手に入れた事は、この灯台はもともと『聖なる炎』をともし、 海を静めていたそうです。それが魔物が『邪悪な炎』に変えてしまい、それ以来海は荒れるように なったとか。この塔のどこかにその種火があるはずです。それを灯台に灯して下さい。」
 トルネコはよっこいしょ、っと言いながら立ち上がった。
「でも大丈夫ですか?足もそうですが、魔物にも付け狙われているんでしょう?」
 心配そうなラグに、トルネコは笑っておなかの肉を揺らしながら言った。
「はっはっは、いざとなったら転がっていきますよ。この私は走るよりそっちの方が 早いと、もっぱらの評判なのですから。なにせ武器屋タルネコですからなぁ」
 そういいながら、意外と素早い動きでトルネコは灯台から去っていった。
 四人はその場にしばらくとどまっていた。…固まっていたのかもしれない。 一番早く復活したのはミネアだった。
「それでは、聖なる種火を探しにいきましょうか。」

 洞窟と違い、塔は高く、そして広かった。魔物の数も半端ではないし、作りも入り組んでいた。 その中を種火を探すため、隅々まで行き、そして上へあがるのは結構な重労働だった。

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