ぶつぶつ言うマーニャをミネアは宥めながら、ソレッタから南、大陸の最果てまで足を運んだ。
「なんか、冷えるわね…」
「なるほど、だからここに種を保管したんですな。」
「無事だと良いですね、種とアリーナさん…」
「そうですわね…。」
 その時、爆音が四人の耳をついた。四人は音がしたほう…洞窟の方を向き直る。
「洞窟が崩れたんでしょうか?」
「いけない!アリーナさんが!」
「どうしようもなくなったら、あたしがイオラかなんかするわよ!」
「姉さん、使いどころを間違えないでね!」
 そう言いながら一気に洞窟の階段を駆け下りた。すると、三人の男の後姿、そして栗色の髪をした少女が 向こうを、閉まった壁を見て立っていた。
「あれが、アリーナさんでしょうか?」
「それより、さっきの爆音はなんなのよ!」
 姉妹の声が聞こえていないのだろう、アリーナは扉に向かい、構えを取った。
「…すごい…よく出来た、それでいて熟練した構えですね…」
 ラグには武術はほとんど判らない。だが、気や隙のある無しで、多少はその人物の腕前はわかる。
「それにしても何をしようと…?」
 すると、もう一度爆音が洞窟内に響き渡った。そして。
「よし、開いたわ!じゃあ行きましょう!」
 嬉しそうな顔の可愛らしい少女アリーナと、真ん中が無残にへこみ、解放された扉が目の前にあった。
「な…なんなの…」
 あきれ返る一行を尻目に、アリーナたち四人は、洞窟を奥へと進んでいった。

「…あたし達が行かなくても…大丈夫なんじゃない?」
「恐縮ですが、私もそう思いましたわ・・・」
 姉妹の言葉に思わずラグはうなずいてしまいそうになった。
「でも、万が一の事もあるかもしれないですからな。まあ、行きましょう。」
 トルネコがのんびりと言った。ラグはそれにうなずき、洞窟に入っていった。 そして三人もそれに続いた。

「氷…ですね…」
 そこは一面の氷だった。洞窟の床といい、壁といい、全てに氷がはっているのだ。
「なるほど、だからソレッタ王はここを保存庫に選んだんでしょうなあ。これならば 状態良く保存できますな。」
 トルネコは感心しながら続ける。
「なんとか商売に活用できないものでしょうか…?」
「この氷を利用して占いを出来ないものでしょうか?…でもすぐ溶けてしまいますわね…」
 ミネアが賛同するように、独り言をつぶやく。ラグは少し苦笑しながら、それでも楽しく 洞窟を急いだ。

 すると広い部屋に出た。不思議なタイルみたいなものが色んな所に張り巡らされている。
「…なぁに?これ?」
 マーニャは恐る恐る近づく。
「マーニャさん、危ないです。」
 ラグがとっさに手を差し出す。しかし遅かった。マーニャはタイルに足を乗せてしまった。
 するとタイルが動き出し…マーニャの体が引きずられた。
「いやぁぁぁー。」
 とっさにラグの腕をつかむ。ラグはバランスを崩した。そこにミネアが体をつかみ… ミネアを体をトルネコがつかもうとし…全員がタイルの上を滑った。

「…姉さん。」
 全員のすりむいた体を治しながら、ミネアはマーニャの方を向いている。
「まあまあ、ミネアさん、これがどういったものかわかったのですからな。それでいいでしょう。」
「いいえ、トルネコさん。甘やかすとろくな事にならないのはお分かりでしょう? このままほっておくと私が苦労するのです!」
「何の騒ぎ?」
 ミネアの力説をさえぎったのは可愛らしい声だった。
 紅い目、栗色の緩やかな長い髪。一見華奢そうだが、鍛えられた引き締まった体。
「アリーナさん!」
 思わずラグは大声をあげる。アリーナはあとすざった。
「ど、どうして私の名前を知ってるの?」
「実は僕たち…。」
 そう事情を説明しようとした時、後ろにいた男がラグのほうを指差した。
「あ、おめえ、ブランカの坊主!…そっか、仲間がいるのか、良かったな。」
 戦士風の男だった。その顔には見覚えがあった。
「…ブランカの勇者さん…」
 ラグの言葉にマーニャ、ミネア、トルネコが驚いてラグを見る。後ろにいる男が、話を続ける。
「おめえがこの洞窟にいるってことは、さてはパテギアの種が目当てだな!」
 そう言うと、別の男がゆっくりと言った。
「そっちにな、どんな事情があるかしらないけどな、種はあきらめてくれや。このひ…とと、嬢ちゃんには 譲れない事情があるんだよ。…それにな。」
 そこで後ろの三人がラグに顔を寄せ、小声でしみじみつぶやく。
「…この人には、逆らわない方がいい…」
 その様子にラグはおろか、他の三人も拍子抜けをしている。
「貴方達もパテギアの種が必要なの?」
 アリーナは首を少し首をかしげて困った表情をした。だがそれは一瞬だった。決意に満ちた表情に戻る。
「でもごめんなさい。私はどうしても、どうしても譲れないの。ごめんなさい。…そろそろ行きましょう。 種以外で、できることがあったらなんでもするから…」
 そう言うと、頭を下げて、アリーナは早足で去っていった。

「…なによ、いい子じゃない。」
 マーニャは呆れた様に言う。
「本当に・・・予想していたのとは違いますわね…」
 どうして二人が呆れているのかは、ラグには判らなかった。だが、ラグも同じように思った。
「では、あの少女に報いる為にも、我々も探さなくてはなりませんなあ。…子供を泣かすのは嫌ですからな。」
 トルネコの言葉に三人が立ち上がり、そして洞窟の奥へと入っていった。


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