その洞窟は薄暗く、埃っぽかった。マーニャとミネアは慣れた様子で、洞窟の 奥底へと進んでいった。
「…ミネアさん。もし良かったら外で待ってらしてもいいんですよ?」
 ラグは真っ青なミネアの顔色を気遣いながらそう言った。ミネアは首を振る。
「いいえ…私は行かなくてはなりません。そこは多分、父の研究所ですし… それに行きたいのです、私は。すいません、ラグ…」
 小さな声でぼそぼそと話すミネアに、ラグはむりやり微笑んだ。
「いえ、いいんです、ミネアさんが平気なら。でも、無理はしないで下さいね?」
「はい。」
 仕掛け床を使い、下に降りる。
「ほほ、なかなか素晴らしい仕掛けですな…これを量産化できれば…いえ、無理でしょうか、 このような高度な…」
「なるほど、なかなか古い遺跡のようじゃな。かなりの文明が存在していた事の 証明となるかもしれん。」
「ここにも神の息吹が存在したのでしょうか?」
「昔の文明…そんなものがあったんですか?今よりもっともっと凄い文明…それはどんなものなんですか?」
 珍しいからか、夢中になって話している男達を横目で見ながらマーニャはため息をついた。
 その行動がミネアを、そして自分を気遣う行動だとわかってはいた。ミネアはいつもより暗いし… 自分は妙に気が急いている。止まらないから、森についた火は全てを燃やし尽くすまで。
(それにしても・・・男って皆そうなのかしら?父さんも、オーリンも… あいつも。)
「あーあ、男って皆そうなの?小難しい事が本当に好きなのねー。」
 腕を振り回しながらアリーナが言う。マーニャはふっと笑った。
 がたん、床が地面につく。また歩き出す。時々出たモンスター破竹の勢いで倒して、またエレベータに乗る。 そしてその床が地面に着いたとたん、今まで静かにしていたミネアが走り出した。
「ミネア!?」
 ミネアはそのまま中央の島まで着いた。…そうして座り込んだ。
「ミネアさん?」
 一番早く着いたアリーナが、ミネアを見下ろす。それを見て、ミネアは立ち上がった。
「なんでもないんです…ごめんなさい…」
(私は何をしたいの?…何を確かめたいの?…判ってるのに、絶対に…)
 その思考はトルネコの声に中断された。
「マーニャさん、ミネアさん、この空の宝箱の奥に階段がありました!きっとこの下です!」
「…ったく父さんてば、ひねくれすぎてるのよ!」
「いきましょう、姉さん。」
 ミネアは階段に向かう。たった一つの希望を託して。それが裏切られる事を知っていながら。


「なんですか…?ここ…?」
 そこはぽっかりした部屋だった。周りを見渡すと何に使うのかもわからないようなものがたくさん置いてあった。
「父さん…」
「お父さん…ですわ…」
 二人には一目でわかった。ここには父の空気がする。見えるようだった。研究にうちこむ父と、オーリン、… そしてバルザックの姿が。
「父さんの研究所…こんな所にも作ってたの…」
「だから…あの方は…ここにいたんですね…」
 そう言ってミネアはふらり、と歩み始めた。マーニャも無言でそれに続く。
 この空間は二部屋続きになっていた。全員が周りを見渡す。不思議なものと、そして目的の物を探す為に。
「お二人とも、この宝箱は…?」
 クリフトが指差した先には、宝箱が置いてあった。二人に見つけられるために、そっと。
 マーニャは近寄った。そして恐る恐る宝箱を開けた。…そこには小さな鍵が入っていた。
「これが…魔法の鍵…父さんがあたし達に残してくれた…最後のものね…」
 そういって、そっと抱きしめる。何か思い出に浸っているようだった。ラグはそれを ながめ、そして自分の鍵を握り締めた。
 思いが似ている気がした。少し、判る気がした。

 マーニャは呆然としているミネアに近づいた。そしてそっと鍵を握らした。
「…これはあんたにあげるわ。父さんと…オーリンが残したものよ。多分あいつは、この事態を 考えてここにこれを置いてくれたんだもの、あんたが持ってなさい。」
 マーニャにも父の思い出はある。とても大切なものだ。だけど、これは父と…オーリンの形見。 ミネアに持たせるのが相応しいと思った。
 ミネアは何も言わなかった。そのミネアにマーニャは優しく声をかけた。
「さ、帰ろ?ここは今のあたし達のいる場所じゃないわ。ここは過去が残る場所よ…今を生きるあたし達が いちゃいけないわ。」
 マーニャがそう言うと、ミネアは泣き出した。
「…判ってたのに…もうオーリンはどこにもいないって、判ってたの!…けれど、いるような気がしていたの。 前のようにここにいて、私たちに声をかけてくれるような気が、していたのに… 姉さん、私こんな鍵、欲しくなかった・・・私は…生きているオーリンにあいたか…た…」
 気が張り詰めていたせいだろうか、それとも現実から逃れたかった為だろうか。ミネアは意識を手放した。 その場に倒れる。ただ、その閉じた瞳からは、涙が溢れ続けた。
「…ごめん…ミネア…」
 小さな声でマーニャはつぶやく。オーリンを殺したのは、自分だ。そう判っているのに、 それでもなお自分の怒り狂う炎に、自分は逆らえない。どうしても討たなくてはならないと思う。バルザックを。

 意外だった。落ち着いた、いつも落ち着いて優しく笑っていたミネアが声を荒らげ、叫び倒れていった事が。 だが、皆何も言わなかった。ただ、ラグはミネアを抱えあげた。…その体は軽かった。
「…帰りましょう、マーニャさん。」
 マーニャはリレミトを唱えた。…そしてコーミズに帰った。

「どうしたんだい、ミネアちゃんは。ああ、いいんだよ、あんたたちに宿代なんてとれねえよ。ゆっくりしていっておくれ。」
「これはこれは、ありがとうございます。」
 トルネコが宿屋の主人に礼を言った。そして横目でミネアを見る。
 ミネアは鍵を抱えたまま、意識なく泣き続けていた。
「大丈夫よ、ミネアは。その内起きるわ、ちょっと疲れただけ。…あたしの妹だもの。」
「そうですね…」
 マーニャの言葉に、ラグが答える。信じていた。ミネアはきっと戻ってきてくれると。必ず。
 それは皆も一緒だった。自分たちは何も出来ない。だから信じるのだ。ミネアを。

「ねえねえ、おじさん。なんか面白い話ない?つよーい魔物の話とか。」
 重い雰囲気を明るくしようと、アリーナが別の客に声をかける。その客は商人だった。商人は いきなり声をかけられた事に驚きながらも、可愛らしい女の子に声をかけられた事に喜び、嬉しそうにうなずいた。
「そうだねえ…こんな話はどうだい?ここから海を越えた、はるか北の話さ。」
「…ここから北ですか?」
 商人とアリーナの間にさりげなく入り込みながら、クリフトは聞き返す。そこはサントハイム大陸 のはずだった。
「ああ、そこに大きな砂漠があるんだがな、この間までバザーをやっていたんだ。」
「知っているわ!私、そこへ行ったから!今はどうなっているのかしら?」
「今はもうバザーは去ってしまったのだが、その跡地に新しく一人の男が来てな、なにか始める、 と言う噂だ。なんでも砂漠に人の住める場所を作る…とか…」
「それは面白そうですな。」
 その商人の話にトルネコはうなずく。
「新しく人が集まる場所には自然にいろいろなものが集まりますからな。」
「強い武器とか?」
「姫様…しかし情報が集まるかもしれませんな…興味がありますぞ…」
 ブライもいつのまにか商人の話に耳を傾けていたようだった。サントハイムの大陸に新しいものができようとしている。 王に仕えるものとして見逃すわけにもいかない。
「じゃあ、キングレオ城に行った後、行ってみましょうか?」
 そこにマーニャが言う。アリーナが同意する。
「ええ、是非行きましょう!キングレオ城で敵を倒したらね!」
「ええ…そうしましょう?」
 そこにミネアの声が入った。皆ミネアを見る。ミネアは上半身を起こして、こちらを見ていた。
「大丈夫?」
「大丈夫ですか?ミネアさん!」
 皆が口々に声をかける。ミネアはにこりと笑った。
「ごめんなさい、もう大丈夫ですわ…姉さんもごめんなさい。…この鍵、貰っておくわね。 …姉さんに渡して、ろくでもない使われ方したら嫌ですもの。」
「あんたね…、まあいいわ。」
 マーニャはため息をついて、そして笑った。これがこの姉妹の息だった。

「では…行きましょう…キングレオ城に…今度こそ…」
 二人の父の仇を討つ為に、辛い思い出色濃い、城へと。


 すいません、嘘つきでした!キングレオまで行きませんでした。次回はライアン出てきますから! 魔法の鍵のイベントがこれほどページを取るとは・・・ゲーム中なら一瞬なのに…
 今回の主役はミネアですね。判っているのに期待する、そういう気持ちはわからなくもないんですが…きっと辛いですね。 その辛さがちょっとでも出たらいいのですが…
 心残りはお告げ所が出せなかった事です…巫女さんなんて言ってたっけ…入れるスペースもなかったんですけれど… もっと詳細にデーターとって置けばよかった…ちょっと心残りです。
 それでは、次回、キングレオと対戦です!そして最後の一人にご対面する時、こうご期待!



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