そして戦いはあっけなく幕を閉じた。ラグたちの目の前に縄でぐるぐる巻きとなっているバコタの 姿があった。
「神につかえし清らかなるロザリオは、貴方の手には相応しくありません。返していただきましょう。」
 クリフトはそう言うと、盗賊の首からロザリオを奪い取った。
「くそう、俺が負けるなんて…お前らただもんじゃねえな!」
「おぬしがが弱いだけだ、まったくばかばかしい。」
「動きも盗賊とは思えないくらい遅かったわよ。」
「まあ、変装の腕は立つようですな。ここにある道具はその様なものばかりです。」
 三人の言葉をバコタは無視して続ける。
「そうか、お前らが勇者だな!それなら悔いはねえ!伝説の盗賊たちは勇者と 関係を持ち、歴史の表舞台から消えるんだ!俺はやっぱり伝説の盗賊だ!」
「…完全に自己陶酔の世界ね…」
「言ってる事は間違っていないんですけれどね。」
 姉妹がしみじみという。すでにうんざりしていた。何せ戦闘中、 ずっとバコタはこの調子だったのだから。そのときだった。後ろから声が聞こえたのは。
「ご苦労だった。確かに見届けたぞ。」
「なんですか!?」
 ラグが振り向くと、そこには一人の女兵士が立っていた。
「女王様の命により、そなたらを見守っていた。真犯人逮捕、ご苦労だった。連行させていただこう。」
 その言葉にアリーナが目をみはる。
「ずっと見張ってたってどういうこと?女王様は私たちを信頼してくださらなかったの?」
「それでは失礼させていただく。後で城に来られよ。女王から賜る言葉があるからな。さ、来い!」
 そう言うと兵士はバコタを引きずりながら、洞窟を出て行った。
「アリーナ様。」
 クリフトは少し落ち込んだアリーナの背に、クリフトは言葉をかける。
「女王様にもお立場というものがあるのでしょう。きっと国の意見と個人の意見を上手く調和される為には こうするしかなかったのです。」
「…そうね。いつも個人の判断をするわけにはいかないわ。」
(そうして、私が国をつぶしたから。わかってる、国に立つということはそう言うことだと。守れなければ、 それは国をつぶす事になるのだと。)
「ですが、女王様は私たちを信じて、見守る事を命じて下さいました。見張るという表現を使わず。姫様もきっとそうなれます。 私はそう信じてます。」
「…ありがとう、クリフト。さ、皆帰りましょ」
 そう言うとアリーナは皆のほうを振り向いた。皆はマーニャの周りに既に集まっていた。
「あとはあんた達だけよ、アリーナ、クリフト。とっとと行くわよ。」
「まあ、マーニャさん、そう言わずに…」
「はいはい、じゃ、行くわよ。…リレミト」


「お疲れ様でしたな、アリーナ様、ラグ殿。」
 再び舞い戻った謁見の間で皆をブライが迎えた。
「ブライ!無事だった!」
「お体に何もなくて良かったです。」
「やな思いしなかった?ブライ?」
 仲間が集まりブライにいたわりの言葉をかける様を、女王はふっとした表情で見ていた。
「犯人を捕らえたこと、見事でした。一時とはいえ無実なあなた方を疑った事、お許しください。」
「いえ、僕も自分の手で捕らえる事が出来てよかったです。ありがとうございました、女王様。」
 すっとラグが頭を下げる。それを女王が制した。
「ブライさんとバコタに聞きました、貴方が勇者だと。」
「いえ、それは!」
 全員がブライの方をみた。
「いや、バコタがあやつは勇者だから捕まったと叫んでおってな。それで女王がわしに本当かと聞かれたので、 ラグ殿が勇者だと、わしらは信じとる、そう言ったのじゃ。」
「ブライさん…あの、女王様、僕は…。」
「いいのです、ラグさん。言わないで下さい。わたくしは気がついておりました。貴方のその兜が 天空の盾と同じオーラで包まれている事を。…あなた方はそれを取りにここにいらしたんですのね。 …誰か、天空の盾をここに!」

 そしてラグの前に天空の盾が運ばれて来た。
「女王様、これは…」
「おわびです、貴方に差し上げますわ。装備してみて下さい。」
「僕は…」
「いいのです、少なくとも貴方の目は信じるに値する光を放っている。わたくしにはそれだけで十分ですわ。」
 ラグは前へ出た。そしてゆっくりと盾を持った。盾は柔らかな光を発しながらラグの手にすっと吸い付いた。
「ああ、やはり…」
「ありがとう、ございます。」
 ラグは深く頭を下げる。女王はゆっくりとラグの元へ歩んだ。
「これを差し上げますわ。それと、この城の他の宝も。貴方達の旅を心から支援させていただきます。」
 そう言って女王はラグに鍵を手渡した。
「これは…」
 ラグの手の中でその鍵の先はゆっくりと変化していく。
「これは『最後の鍵』と呼ばれるもの。全ての鍵を開けうるもの。心正しきものが現れるまで、ガーデンブルグで 保管しておりました。…ここから南、ロザリーヒルという小さな村。その村はエルフとモンスターが仲良く 住んでいるようですわ。…貴方の目的に、何か役に立つやも知れません、尋ねてみられてはいかがでしょうか?」
「女王様…」
 ラグは直感で思った
(僕が、世界の平和の為に旅をしているんじゃないことを、知っていて…そう言ってくださっているのだ)

 女王はラグに一礼し、それからアリーナのほうを向いた。
「サントハイムの王女アリーナ姫。貴方のおかげでわたくし達の国は、これからより良い方向へ歩めるような気がしますわ。」
「いいえ、女王様。私はまだまだ未熟者です。」
「この国は閉鎖した国。国を大きく事を望む殿方の治める国と違い、慎ましやかに暮らすことを望む国は、わたくし達の誇りでしたわ。 ですが、それではただ、他から逃げていただけですわね。少しずつでも、この国の方向を他の人たちと手をとりあえる 方向へ持っていきたいと思います。」
 アリーナはすそを持ち、頭を下げる。
「ガーデンブルグに新たな光明がもたらされる事を祈りますわ。」
「ですが、他と国交を持つのはしばらく待つことに致します。」
 そう言われ、アリーナは女王の顔をまじまじと見る。
「どうしてですか?女王様?」
「わたくしの恩人の国の国王が戻られて、国が正常になられた時、一番初めに挨拶に伺うその日まで、他国との 国交は取っておきますわ。」
 そう言って女王はいたずらっぽく笑った。その笑みを見てアリーナたちははじめて気がついた。女王がまだ とても年若いということに。
「サントハイムの幸運をお祈り…いえ信じております。アリーナ姫、ブライさん、クリフトさん。 またいつか、サントハイムのお城でお会いできる日を楽しみにしております。」
「ええ、こちらこそ。一刻も早い実現を望んでおります。」


「素敵な国でしたわね」
 ミネアが微笑みながら言う。
「そうね、最初ほど印象は悪くないわ。でも…」
 そういってマーニャは周りを見渡す。外まきに女性たちが一行をみつめていた。犯人と 言う汚名が回復した以上、ラグたちを見る目はひたすら熱かった。
「…そうですね、早く出ましょうか。」
「待ってください、ラグさん。ロザリオを渡してまいります。」
 手にもったロザリオを見せながら、クリフトが言う。
「すぐ戻ります。皆様はここで待ってて下さい。」
 そう言うとクリフトは廊下を歩いていった。しばらく見送ったアリーナが、ふと思い立ち、階段の裏手に周る。
「ラグ、ちょっとこの下にある宝箱、開けてくるわ。」
「あ、アリーナ。あたしも行きたい。」
「マーニャ殿!行ってはならぬ!おぬしがいなくなれば、女性はミネア殿しか残らぬのだぞ!」
 ライアンの言葉と、ラグとトルネコの懇願の目により、しぶしぶながらマーニャは宝箱探索をあきらめた。

「ロザリオを返しに参りました。」
 部屋の扉に立ち、クリフトはシスターに語りかけた。部屋にいたシスターはクリフトの元へ駆け寄った。
「クリフト様…」
「このたびは災難でしたね。…ロザリオは神への忠誠のあかし。出来れば手放されぬ方がよろしいですよ。」
 そう言ってクリフトはにっこり笑ってシスターの首にロザリオをかけた。
「…わたくし、罪のない人間を疑ってしまいましたわね。人へ神の教えを説く資格など、ありはしませんわ…」
「人は悔い改め成長していく者です。あなたにその気持ちあらば、神はきっと許して下さいます。」
「いいえ、いいえ、違いますわ!」
 シスターは首を振った。目が潤んでいた。
「わたくし、物心ついたときからこの国にいました。ですからずっとこんな感情を知ることなく育ちました。 心清らかなまま、ずっと生涯を神につかえていけると思ってました!ですけれど!」
 そう言ってクリフトの胸元をそっとつかんだ。
 久しぶりに訪ねて来た旅人。緑の神官服。優しい微笑み。一目見て、目に焼きついた。
「わたくし、ただの女性でいたかった。ロザリオをつけない、ただの女でいたかった。だから女王様から 賜って以来初めてわたくしは、ロザリオを箪笥にしまった…その結果がこれですわ…」
 崩れ落ちるように、シスターはクリフトにしなだれかかる。
「わたくし…初めて見たときから…あなたが…」
 目を潤ませながら、女性は想いを告げようとした。だがクリフトはゆっくり女性の体を自分から離した。
「…貴方に、神の祝福がありますように。」
 ただ、静かにそう告げた。女性はうつむいた。
(これが、この方の答えなのだ。)
 そして震えた声でシスターは告げた。
「ここから東に、海の洞窟があるそうですわ。…先日、その洞窟の中から神の光が溢れたそうです。 白銀の輝きが…なにかあなた方の旅の手助けになるものがあるかもしれませんわ…。」
 それだけ言ってシスターは顔を起こす。
「あなた方の旅に、神のご加護がありますように。」


「お疲れ様。」
 部屋から程遠くない廊下で、クリフトはアリーナに出迎えられた。
「姫様…」
「みてみて、あの宝箱、私の武器だったの!さっきトルネコさんに見てもらったんだけど、炎の爪って言うんですって! 武闘家専用の武器だけど、念じれば炎を出すのよ!」
 楽しげにはしゃぐアリーナ。
 一人の女性を傷つけた。たとえ意図的でなくても。クリフトの胸は痛む。
(けれど、私には選べません、何があっても姫様以外を選ぶ事は出来ないのです)
 この姫の笑顔を守るのだ。自らが滅ぶ、そのときまで。
 つったっているクリフトに、アリーナは手を伸ばした。そして頭を撫でた。
「ひ、姫様!」
「昔、良くしてくれたわよね。私を慰める為に。…クリフトは間違ってないわ。 とても優しい人よ。…私が一番良く知ってるから…」
(見られていらっしゃったのですね…)
 そう思う反面、妙にくすぐったい、そして嬉しい気持ちがこみ上げた。
 確かに思う。この方が、自分の唯一の女神なのだと。


   人質はブライでした。ってか名乗り出ちゃったよ、このじいさん。本当は牢屋の前で喧々諤々やるつもりだったのに。 でも相変わらず出番少なくてごめん、ブライ。
 主役はアリーナですね。女王様との対決ですから。女王様は年若いって言ってますけど、 多分18歳くらい。あちらじゃ立派な成人でしょうか?でも威厳を持った女性にしては若いって事で許して下さい、はい。
 えーと、天空の鎧のありかってどこにヒント出てましたっけ?ゲーム中。見つからないんですけれど? いや、もっと先にあるかなーと思うんですけれど、とりあえずゲーム原作無視して行っちゃいます。… って行っても洞窟探索ですから…むう、難しい。
 では次作がどうなるか、というかどこからどこまでの話になるか…私にはさっぱりわかりません。 行き当たりばったりでGO!ってことでよろしくお願いします。



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