河を下り、南へ進む。しばらく進むと皆の目にも魔神像が見えてきた。 そして歩き、真下まで行く。まるで巨人のようだった。 「凄い技術ですわね…古いですのに。お父さんが見たら喜んだでしょう」 「父さんってばこういうの好きだったからねー。オーリンも喜ぶでしょうね、きっと。今度連れてきたら?」 「や、やだ姉さんてば!」 マーニャがため息をつく。アリーナは目を輝かせている。 「なにかしらなにかしら!中に入れるみたいよ!わくわくするわ!」 「ひ、姫様…なにがあるかわかりませんから…慎重になさってください…」 その高さをみて、すでに足が震えているクリフトを横目に、ブライはため息をついた。 「しかしこれは一体なんなのであろうか?」 「そうですね…ただの建物ではないでしょうし…それにこれが動くと言うのはどういうことなのでしょう?」 ライアンとトルネコは壁を見ながら話し合っている。ブライが近くのちいさな建物を見つけた。。 「あそこに建物がありますな。人がいれば詳しい事も聞けるかもしれませんぞ。」 「そうですね。行ってみましょう。」 そういってラグは扉をノックした。 「このような所へ…何用ですかな?」 中から出てきたのは神父だった。すこしくたびれた官衣を着ていたが、それでもなにか威厳のようなものが感じられた。 ラグとミネアが神父に尋ねた。 「この像は…なんですか?」 「リバーサイドの村で動いた、と聞いたのですけれど…」 「わかりません。古来の神をかたどったようですが…」 「では何故、ここにいらっしゃるのですか?」 クリフトが当然の疑問を問うた。 「あるとき夢に見たのです。この像を操りし者、魔の城へ行く。ですから村の人間がむやみに入らぬように 私がここで見張っています。…登られるのですか?」 「どうしても、行かねばならぬ、理由があるのだ。止められるか、神父殿。」 問うたライアンを神父は少しみつめ、全員を見渡した後、首を振った。 「いいえ・・・貴方達は今まで様々な経験を積んでいらした方でしょう。自らの力量もわきまえていらっしゃるはず。 お止めしません。『神はその涙を手のひらに受け止める』・・・この像の言い伝えです。みなさんくれぐれもお気をつけて。」 そう言って神父は手を振った。皆は魔神像へと歩き出した。 「人の中にいるみたいですわね…なんだか嫌な気分ですわ。」 「でもいろんなモンスターが出てきて楽しいわ」 「ひ、姫様…お気をつけくださ…」 クリフトが外を覗いて足を震わす。ライアンが見つけた階段を上がりながらつぶやく。 「しかし仰々しい作りのわりには取り立てた仕掛けもなく…ここは一体何のためにあるのだろう?」 「それに神父さんが言ってましたですね…えっとなんでしたっけ?」 「『神はその涙を手のひらに受け止める』ですよ、トルネコさん…」 「そうじゃなあ、一体その言葉にどういった意味があるのじゃろうか?」 ラグはブライの言葉を聞いてはいなかった。ただ、神父の言葉を心の中で繰り返した。 (神はその涙を手のひらに受け止める…) つかめなかった、ロザリーの涙。…一度も見れなかったシンシアの涙。似ていると言っていた 願いをかけた星… 神様ならば受け止められる…? そんな想いを抱えながらただ、歩き、戦っていた。 たどり着いた場所。そこは魔神像の頭だった。 「結構広いわねー。」 「窓がありますわ。綺麗な眺めですわね。」 「ほんとー。遠くが良く見えるー」 「ひ、姫様。危ないです――――。」 「クリフトこそ危ないわよ。そんな震えた足で。大丈夫よ、意外と近いわよ、下」 そう言いながらアリーナがクリフトを窓の側に寄せる。クリフトの悲鳴が上がった。 「しかし何もありませんな。私は頭に何かあろうだろうと思っておったのだが・・・」 「そうですな。これではせいぜいダイエットにしか役に立ちそうにありませんな。」 「しかしこの像が動いたと言うのはなぜじゃ?」 ふと思い立ち、ラグが窓から外を覗く。そして、ためらいもせず飛び降りた。 「「「ラグ!!!!」」」」 全員の声が唱和する。ラグは魔神の手のひらに立っていた。そして大声を出す。 「僕達が『涙』です!その目の窓から飛び降りて、手のひらに着地してください!」 手のひらの先に部屋があります!そう続けたラグの声を聞くや否や、アリーナが飛び出した。そして 華麗に着地する。ブライに突き落とされながらもクリフトが着地し、トルネコがブライを背負いながら柔らかく着地した。 ライアンがそれに続き、華やかに着地したマーニャと、優雅に着地したミネアを支えた。 そして全員で奥に続き、部屋の隅の階段で上にあがると… 「なんでしょう…?」 「もしかして…何かの装置でしょうか?」 トルネコがあちこち見ている。一通り見た後にこちらを向いた。 「おそらくこのレバーを引けば、この像が動くのではないかと思うのですが…」 「これ…ですか?」 ラグはレバーをゆっくりと引く。すると地響きがした。地面が揺れる。 「か、神様!お守りください!」 すでにおびえきっているクリフトが神へ祈りを捧げる。 「地面が揺れているのではない…これはやはりこの像が動いている!?」 ライアンの言うとおり、外を見るとゆっくりとその景色が変わっていた。前にあった湖を越え、 ゆっくりと停止した。 「止まったみたいですわね…」 しばらく待ってみても魔神像は動かなかった。全員がほっと息をつく。 「行きましょうか。」 ラグはそう声をかけ、階段を降りた。 |
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