緑を掻き分け、足を進める。そして。そこには白銀に光る、剣が突き刺さっていた。 「これが、天空の剣です。」 ルーシアに言われなくとも判った。ラグが装備している天空の防具に良く似ていたからだ。 「ラグさん、きっとあなたになら抜いて、装備する事が出来るでしょう。どうぞ、剣をその手に。」 ルーシアに促され、ラグは天空の剣の柄を握った。3回も味わった感覚。まるで ラグに触れられて、喜んでいるような。 「なんか、光ってない?」 ずず、っと世界樹から剣を抜く。少しずつ、剣が光りだした。そして、それは まばゆいばかりの光に変わる。 そして、一瞬、天をさす様な光に変わり…ラグは剣を抜いた。 アリーナとマーニャは眼を開ける。そして剣を持ったラグを見た。 「凄い、凄いわラグ!ついに4つの天空装備が揃ったのね!」 「ほんと、あつらえたみたいにぴったりよ!」 その横でルーシアが満足そうにうなずいた。 「ええ、やはりあなたが勇者様でしたのね。ラグさん、装備して、私に見せてくださりませんか?」 しかしラグは剣を納めて袋に入れた。 「どうかなさいましたの?」 「ルーシアさん…僕は…勇者じゃありません…」 哀しそうに言うラグに、ルーシアがくってかかる。 「いいえ、あなたは確かに勇者様です!私にはわかりますわ!」 「確かに僕は勇者として運命付けられた人間なのかもしれません。ですけれど、僕自身が勇者になりきれていないんです。」 哀しそうに言うラグに、マーニャとアリーナが口を挟む。 「ラグ、あんたは良くやってると思うわよ。」 「そうよ!そんな風に思う必要なんてないわ!」 「ありがとう、ございます。ですけれど、僕は勇者がなんなのか、一体どうすることが正しいのかが 僕にはわからないんです。」 そう言われて、マーニャとアリーナは何も言わなくなった。ロザリーの最後を見た今では、その気持ちはよく判ったから。 「ですけれど、その剣を装備しないと、天空城へはいけませんわ!」 「そうですね…とりあえず一番天空の剣を求めていた方に、僕はこの剣をお渡ししたいんです。ルーシアさん、下に僕の 仲間達がいます。行きましょう。」 ルーシアはまだ釈然としないようだったが、それでもうなずいた。 「おかえりなさい!」 階段から降りてきたラグをまっさきにミネアが迎える。 「姫様、悪さなどされなかったじゃろうな?」 「ひ、姫様!無事でなによりです!」 「なにか珍しいものがありましたか?」 そう口々に出迎える温かい仲間に、なぜか三人はほっとするものを感じた。 「おや、そちらのご婦人はどなただ?」 ライアンがルーシアを見て言う。ルーシアはぺこん、とお辞儀をして皆に挨拶をした。 「はじめまして、導かれし方々。私は天空人のルーシア。世界樹の上で途方にくれていたところをラグさんたちに 助けられましたわ。どうぞ、私を天空の城へ連れて行ってくださいませ。」 背中にふわりと揺れる翼に五人は魅せられた。 口々に自己紹介を済ませた後、ラグはトルネコの前へ歩み出た。 「トルネコさん。」 「どうかしました?」 ラグは袋の中から天空の剣を取り出し、トルネコに手渡した。 「天空の剣です。トルネコさんが探していた…約束どおりお渡しします。」 そう言って手渡された剣を、トルネコはまじまじと、感慨深く眺めた。 この剣に出会う事はトルネコの人生の目標だった。世界一の武器屋になるために、全ての 武器を見たかった。トルネコは、じっくりと鑑定した。夢がかなったことに満足しながら。 ”天空の剣の噂を聞いたのです。勇者のみが使えるという、その剣。それを探し出し、 真に正しい人に持たせなければ。私はそう思ったのです。” ”もし天空の剣を見つけて、僕が装備出来ても、僕はそれをトルネコさんにお渡しします。 …そしてもしいつか、僕が本当に勇者だと相応しい、トルネコさんがそう思うようになったら… その時は僕に、その剣を渡して下さい…。” その約束は、今もトルネコの胸に刻まれている。自分の目標だったから、自分の鑑定結果に嘘をつくつもりはなかった。 「ラグさん、この剣をラグさんに渡すわけにはいきませんね。」 「トルネコ!一体どういうつもりよ!」 「トルネコさん!どうして?あなたはそんな商人ではなかったでしょう?」 「トルネコ殿?一体どうしてじゃ?ラグ殿のためにこそ、この天空の剣はあるのではないか!」 「トルネコさん?どうして?欲しくなったの?でも、その剣はトルネコさんには装備できないでしょう?」 「トルネコさん…神様はきっとその様な事を望んでらっしゃいませんよ…!」 「トルネコ殿、たしかに夢を手放しがたいのは良くわかる…だが、それは感心できぬ…」 仲間達が口々にトルネコを非難する。ルーシアも不安げに、ラグとトルネコをみた。ラグは、 表情を変えず、ただ、優しく微笑んでいた。 それが正統な評価だと、ラグは納得していたから。だが、トルネコは言葉を続けた。 「ラグさん。あの日の約束を覚えていますか?私はあなたがその剣に相応しいと思った時、この剣を渡すと。」 「ええ、覚えていますよ。ありがとう、トルネコさん、正直にそう言ってくださって。その剣は 僕に相応しくない、そう言うことですよね。」 「ええ」 トルネコは柔和な笑顔で言う。皆が驚いた顔をした。トルネコは意地の悪い冗談を言う人間ではない。だから本気なのだ。 だが、どうしても納得できなかった。 だがトルネコは飄々と言葉を続ける。 「この剣はラグさんには相応しくない。この剣は、私が想像していたより、ずっとずっと弱く、攻撃力もないようですね。 刃も冴えていない。ラグさんの実力に似合うためには、もっともっといい武器でないと駄目です。」 「トルネコさん…」 「不思議だと思います。伝説の剣というからにはもっともっと綺麗なものだと思っていたのですが… 。ですがもしかしたらさびているのかもしれませんし、ルーシアさんと共に天空のお城に いったら謎が解けるかもしれません。そのときまで、ラグさん、この剣を私に預けていただけますか?」 「トルネコさん…ありがとう…ございます…」 ラグの声が震えた。自分の悩みに対して『大丈夫だ』そう背中を押された気がした。 「さてと、皆さん、酷い事を言ってくれましたね」 トルネコはくるりと仲間の方を向いた。全員の顔が一斉にこわばった。 「ご、ごめんなさいー」 「そんな風に言うとは思わなかったのよー」 ミネアとアリーナは真っ先に謝る。トルネコは笑いながら拗ねて見せた。 「いやいや、私はそんな風に思われていたのですねえ」 「いや、トルネコ殿が粋な計らいを見せてくださって…その」 「そうじゃ、予想もつかぬことをしたものじゃから…」 必死でフォローしようと皆が頑張る。喧嘩しているように見せながらも、その表情は笑っていた。 「良い…お仲間ですわね。」 ルーシアがラグに話し掛けてきた。 「私、人間ってもっと恐ろしくて嫌なものだと思っていましたわ。たまに地上に降りる者達がそう言ってましたし、 マスタードラゴン様も…ですけれど…とても素敵だと思いましたわ…」 「ええ、とてもいい人たちです。」 ルーシアは頷く。 「皆さんで、マスタードラゴン様に会いに行きましょう。天空城に繋がる天空への塔は、世界の中心にありますわ。」 翠と蒼に彩られた頭上。さわさわと風は気持ちよく吹いていた。 世界樹イベント終了です。…えーと悩んでたんですけれどー。天空の剣の鞘ってどこにあるんでしょう?どうやってしまったんだろう? どなたかご存知ですか?FC版なら宝箱なんですけれどねえ。 天空の剣。最初偽物だったらどうしよう、と思った経験がこのトルネコの言葉に生かされています。今のラグは この天空の剣には相応しくないほど成長した、トルネコはきっとそう言ってくれるんじゃないかな、と。でも 天空への塔へ入るときにはちゃんと装備して入らないと駄目なんでしょうけれど。 次回は天空への塔、そして天空城でのイベントだと思います。大詰めですね!気合を入れていきたいと思います!
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